第2回:ユーザとベンダにもたらすメリット (2/3)

コマーシャルオープンソース
コマーシャルオープンソースの波

第2回:ユーザとベンダにもたらすメリット
著者:ケアブレインズ  内田 隆平   2006/7/14
前のページ  1  2   3  次のページ
開発コストの劇的な低減

   LinuxのディステュリビュータであるRed HatやNovellは、Linuxカーネルに独自の技術を加え、保守サービスを付加して提供するコマーシャルオープンソースベンダと呼べるでしょう。ここではそのLinuxの開発コミュニティを例に、開発コストが低減される仕組みを解説していきます。

   図2はLinuxカーネルを開発する主要なメンバーを解析したものです。
Linuxカーネルを開発する主要メンバー 出典:Open Source Business Conference 2005
図2:Linuxカーネルを開発する主要メンバー
出典:Open Source Business Conference 2005
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   近年Linuxサーバは年間に百数十万台も出荷されるほどユーザ数が多くなってきています。その開発コミュニティでは上位100名が全体の84%のコードを開発し、そのうちわずか12名で44%のコードを開発しています。この12名の内訳(図2の右側)の大半はRed HatやIBM、Novellなど著名なディステュリビュータやインテグレータに所属する開発者です。彼らはなぜ、ボランティアでLinuxカーネルの開発作業に従事しているのでしょうか。

   Linuxカーネルの開発コミュニティから見ると彼らは確かにボランティアですが、例えばRed Hat社側から見ると、あくまでもRed Hat Enterprise Linuxを開発している有給のエンジニアと捉えることができます。

   Red Hat社は世界中の多くのボランティア開発者を率いて、極めて低コストでRed Hat Enterprise Linuxを開発しているのです。その大半の時間を基礎部分のLinuxカーネルの開発に割いているに過ぎません。また彼らが貢献することで、開発コミュニティはより多くの開発者を惹きつけ、大きくなります。それがさらに開発コストの低減につながっていきます。

   これはIBM社も同じでしょう。同社はコマーシャルオープンソースベンダではありませんが、例えば「Linuxを活用した業務システムを構築するサービス」を有償でユーザに提供しています。この有償サービスを支えるLinuxカーネルをIBM社のハードウェアやソフトウェアなどにあうように低コストで開発しているのです。

   このようにユーザに付加価値サービスを提供するベンダが、積極的にコミュニティをリードし、より高度なソフトウェアを低コストで開発していくスタイルがコマーシャルオープンソースの典型です。


製品企画コストの低下

   旧来のソフトウェア開発は、ソフトウェアベンダが雇用した社員によってのみソフトウェアが開発されていたため、機能拡張のアイデアはすべて社員によってもたらされました。

   しかしコマーシャルオープンソースの場合はソースコードの全体あるいは大半がコミュニティに公開されているため、コミュニティメンバーによって無限のイノベーションがもたらされます。

   例えばSugarCRMの場合、全世界に2万名のコミュニティメンバーがおり、彼らが24時間365日、何かしらのアイデアをコミュニティに寄せてきます。それらは既存コードの改善だったり、画期的なアイデアだったりと様々あります。そしてそのアイデアの総量は従来の開発スタイルと比べると、とてつもなく膨大です。

   このアイデアの量と質の高さによって、製品企画にかけるコストは大幅に削減され、さらにソフトウェアの品質が保持できるのです。


高セキュリティ

   先ごろ米国オレゴン州がCRM製品を選定する際に、もっともセキュリティの高い製品としてコマーシャルオープンソースのSugarCRMを選択しました。

   以前よりソースコードがオープンであると、悪意をもったユーザによって当該ソフトウェアへ侵入するケースが増えるのではないかという懸念がありました。しかし実際はその逆であることがわかってきています。

   なぜならコミュニティメンバーが多くなると脆弱性を改善する腕達者なエンジニアも増えるからです。すなわち常に品質やセキュリティを高める方向に開発者の努力が向くため、ソフトウェアは常に高い品質レベルを維持できるのです。

前のページ  1  2   3  次のページ


株式会社ケアブレインズ 内田 隆平
著者プロフィール
株式会社ケアブレインズ  内田 隆平
株式会社ケアブレインズ取締役CTO。
東京大学農学部卒業、早稲田大学ビジネススクール技術経営学修士(MBA in Technology Management)。米国SugarCRMコア開発メンバー、SugarCRM日本語化リーダーを兼務。17,000名のSugarCRMコミュニティではトップ10コントリビューターとして表彰される。


INDEX
第2回:ユーザとベンダにもたらすメリット
 はじめに
開発コストの劇的な低減
 ユーザにとってのメリット
コマーシャルオープンソースの波
第1回コマーシャルオープンソースとは
第2回ユーザとベンダにもたらすメリット
第3回ソフトウェアの開発スタイルの今後

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored