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要求開発
要求をシステム開発に正しく反映させるには

第2回:プロジェクトを成功させる秘訣
著者:ウルシステムズ  河野 正幸   2006/4/17
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チーム力を引き出す

   3つ目はチーム力を最大限に引き出すファシリテーション能力です。正解のない中で様々な関係者が集まって「何を作るか」を検討する要求開発では、関係者の利害が対立することがよくあります。

   例えば、生産部門と営業部門と経理部門が顔をあわせて検討すると、片方を立てれば片方が満足しないという事態になってしまうことがあります。そんな状況の中で最終的に「何を作るのか」についての合意を形成しなければならないわけですから、要求開発チームには関係者の利害の対立をWin-Winアプローチで解消できるファシリテーション能力が不可欠です。

   このようなコンフリクト(対立)マネジメントだけではなく、チームで実施する様々なミーティングを円滑に進めていくための、プロセスデザイン、プロセスマネジメントの能力もチーム力を最大限に引き出していくために必要なファシリテーション能力の一部です。


ダブルループのPDCAをしっかりと回す

   要求開発の本質的とは「お客様の業務の問題解決」だといえます。お客様の業務の根本的な原因を見極め、それに対する解決策を発明してはじめて、「何を作るのか」という要求が明らかになるからです。

   ですから、問題を解決するために必要な能力として前述した3つのコア能力が重要になるのです。そしてもう1つ、問題解決のために実施できる重要なことがあります。それは「PDCAサイクルをきちんと回す」ということです。

   PDCAとは読者もよくご存知のとおり「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(チェック)」「Action(対策)」のことですが、これはどちらかというとプロジェクトを前に進めていくためのサイクルだといえるでしょう。つまり計画達成のPDCAサイクルです。

   筆者は問題解決を進めていく上では、この計画達成のPDCAサイクルを意識するだけでは不十分だと感じています。これは筆者自身もよく失敗していたことですが、要求開発のためのビジネスモデリングを計画どおりにPDCAを回しながら実施しても、本当にお客様の問題解決を実施できているかというと、そうではないことも多いのです。

   モデルさえ作れば自動的に問題が発見され解決できるかというと決してそうではありません。モデルを検討する人たちが問題を発見するという明確な意識を持って取り組まなければ、問題解決にはつながらないのです。

   そういった意味で、要求開発を進めていく上ではもう1つの別のPDCAサイクルを意識することが非常に重要だと筆者は考えています。もう1つのPDCAとは「Problem finding(問題発見)」「Display(可視化)」「Clear(問題解決)」「Acknowledge(確認)」のPDCAです。

   つまり問題を発見して、それを見えるようにして、解決して、最後に確認するというサイクルです。これを計画達成のPDCAサイクルの「Do」の段階で意識的に実施するのです。

   モデリングなどの計画された作業を実施すること自体が目的になってしまい、顧客の問題解決という本来の目的を見失ってしまうプロジェクトは意外と多いものです。そうならないためにも、ダブルループのPDCAをきちんと回すことを、ぜひ意識的に実践してください。

要求開発チームの3つのコア能力
図2:要求開発チームの3つのコア能力
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   次回は、要求開発を実践する現場力を獲得するための4つのポイントの2番目にあたる「プロジェクトの初動を乗り切る」についてご紹介したいと思います。

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ウルシステムズ  河野 正幸
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  河野 正幸
山口大学経済学部経済学科卒業後、SIerにて製造業向けシステム開発プロジェクトマネジャーとして従事。2002年8月から現職。得意な分野として、オブジェクト指向分析/設計、開発方法論、プロジェクトマネジメント、製造業の業務などがある。

INDEX
第2回:プロジェクトを成功させる秘訣
  はじめに
  現場力を獲得するための4つのポイント
方法論に魂を入れる