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ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて
ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて

第6回:ビジネス・プロセス評価
著者:IDSシェアー・ジャパン  渡邉 一弘   2005/7/29
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改善策の検討

   そして、特定された問題の原因に対して改善策を検討する際には、特定した問題があるプロセスをeEPCモデルとしてPPMから出力し、Process Design PlatformのARIS製品であるARIS Toolsetに取り込むことができます。

   また、取り込んだeEPCモデルには、実際の処理時間や発生頻度が記述されています。そのeEPCモデルを利用して、図7に示すようにプロセス設計時のTo-Beプロセスと比較しながら、第5回で紹介した動的シミュレーションを行うことで具体的な改善策を検討することができます。

改善策の検討
図7:改善策の検討


リスクマネジメントとしてのプロセス分析・評価

   前述のプロセス分析・評価は、企業活動の最適化を自ら目指し、プロセスに潜む課題を特定し改善することを目的としています。しかしながら、プロセスの改善は企業内部からの要求ではなく、時には市場や社会からの改善要求によって実施されなければならない状況が発生します。

   現在、皆様が対応に追われている個人情報保護法対策や、品質対策・環境対策のためのISO対応などは、まさにその一環です。

   個人情報保護法対策であれば、個人情報を取り扱うプロセスはどこなのか?個人情報保護のための内部監査はどのような手順・プロセスで行うべきか?プロセスに沿った内部監査結果はどうだったのか?という検討を行う必要があります。

   ISO 9000であれば、設計情報・品質情報を取り扱うプロセスに関して、ISO 14000であれば、環境保護対策を実施すべきプロセスに関しての内部監査プロセスの検討と内部監査結果の分析・評価が必要です。

   このようにリスクマネジメントとして取り組むべき課題に対しても、プロセス設計、プロセス導入・実行、プロセス評価というBPMサイクルを継続的に実施し、内部統制を確実なものとすることが重要となってきます。

   そして、現在最も注目されており、早急に対策すべき企業における内部統制領域は、2002年に米国で成立したサーベンス・オクスリー法(Sarbanes-Oxley Act:SOx法)で謳われている企業会計や財務報告の透明性・正確性を高め、コーポレートガバナンスの在り方と監査制度を抜本的に改革する分野です。

   昨今、企業のコーポレートガバナンスの在り方が問われる様々な問題が発生し、状況によっては企業活動そのものを続けることが困難となった企業が多数報告されています。

   このSOx法は、米国に子会社を持つ日本法人も当然対象となり、対岸の火事では済まされません。

   そして、特にSOx法の第404条においては、企業は自社のバランスシートに影響を与える財務報告プロセスを文書化するよう要求しています。具体的には、会計監査に対し、財務報告を行うプロセスを可視化し、実行・導入し、実行結果の分析・評価をしなければなりません。まさに、企業のコーポレートガバナンスの在り方に対するプロセスを管理するBPMであると言えます。

   これらの内部統制というテーマに対しては、まず、内部監査対象プロセスをARIS Design Platform製品にて可視化し、監査すべきプロセスに対し監査内容・監査周期などを明示し、社内に対して公開する必要があります。また、公開するだけではなく、実際の監査結果を保存し、内部監査、外部監査時に柔軟に提示する必要があります。この課題に対しては、ARIS Controlling Platformに位置するARIS Audit Managerを利用して、プロセスに準拠した形で監査結果を格納し、適宜レポート出力するソリューションを提供しております。

   日本においては、SOx法に対する認識は向上していつつも、まだまだ実際に対策まで講じる企業は少ない状況です。しかしながら、SOx対策を講じる必要性は、想像以上に直近に迫りつつあるのではないかと筆者は感じます。

   問題は発生しないとなかなか対策を講じないものですが、こと企業のコーポレートガバナンスの在り方に対する問題は、一度たりとも発生させてはならないものだからこそ、早急な対応が必要と思われます。


継続的なビジネス・プロセス・マネジメントの実施に向けて

   第3回目から今回の第6回目にかけて、図8に示すビジネス・プロセス・マネジメント・サイクルの各領域において検討すべき内容やARIS製品の活用例について紹介してきました。

BPMサイクル
図8:BPMサイクル

   ビジネス・プロセス・マネジメントを検討し実行するためには、プロセス設計・プロセス導入/実行・プロセス評価のどの領域から始めても構いません。

   現状の業務の問題点を洗い出し改善しなければならない、新たな製品・サービスの投入が控えている、新たな仕組み・システムを検討する必要があるという状況に置かれているのであれば、プロセス設計から着手することとなります。

   将来的に業務が変更されても柔軟に対応できる環境の構築のために、プロセス指向的な新システム導入や既存システムのリプレースを行うことがほぼ決まっている状況に置かれているのであれば、プロセス導入・実行から着手することとなります。

   また、現状のプロセスを評価することで新しい改善課題を見出す必要がある状況ならば、プロセス評価から着手することとなります。

   いずれにしても大事なことは、図8に示すビジネス・プロセス・マネジメント・サイクルの各領域を検討するだけではなく、次の領域、またその次の領域へとビジネス・プロセス・マネジメントの検討領域を変化させることが重要です。そして、その検討サイクルをたった1サイクル回しただけでは、まったく意味がありません。

   この「ビジネス・プロセス・マネジメント・サイクルを継続的に実施することこそが、これからの企業の価値を高めていく活動そのものである」というメッセージこそが、筆者が本連載で一番お伝えしたいことです。

   「継続的なビジネス・プロセス・マネジメントの実施」による「経営と情報の架け橋」を架ける活動は、終わりなき活動かもしれませんが、企業内外からの要求により、今後行わなくてはならない活動になります。筆者は、一人でも多くの企業の方々に、その活動の大切さを今後とも継続的に伝えていきたいと考えております。

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IDSシェアー・ジャパン株式会社 渡邉 一弘
著者プロフィール
IDSシェアー・ジャパン株式会社  渡邉 一弘
工場でのHDD製品設計を経験後、SEとしてシステム構築を担当。日々、現場の業務とシステム機能の「ギャップ解消」に悩み、業績に直結するシステムやROIを求める経営者に対し、解決策として見出したのが「プロセス管理」というキーワード。現在は、IDSシェアー・ジャパンにてプロセス管理ツール「ARIS」のプロセスコンサルタントとして従事。


INDEX
第6回:ビジネス・プロセス評価
  ARISを活用したBPM
  何を計測するのかが決まっていなければ、計測できない
  プロセス評価
改善策の検討