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見える化と個人情報保護法から考えるCRMの実践手法

2006年3月23日(木)
匠 英一

サービスへの「顧客データ活用」の問題

次に、個人情報保護法の観点から見ていこう。企業における個人情報というと顧客データがあげられる。

顧客データはDWH(Data WareHouse)に蓄積し、それを多次元分析すれば顧客の同時購買がわかるといったことがいわれて久しい。これは週末にビールを買うサラリーマンがお むつも買うといった顧客のパターン分析のことだ。最近ではテキストマイニングでメール文章からその顧客の行動予測をするといったこともできる。

これらの分析は、いずれも顧客行動を知る上で期待されているのだが、導入しても実際の成果につながっているケースは少ない。例外として千趣会やニッ センなどの通販会社は、通販会社と顧客とのつながりが対面ではないために、データに基づいた分析に頼らざるを得なかったためと考えられる。

これまでの調査では、主に一般企業において顧客データの活用がうまくいかない理由として、次の2つがあげられる。

  1. データは蓄積されているが、個々のデータを統合する仕組みやマネジメントがない
  2. 蓄積されたデータをPDCA(Plan、Do、Check、Act)でサービス活動へと実践するサイクルを作れない
表2:顧客データが活用しきれていない要因


1はIT統合の仕組みの問題であり、2は人間側のマーケティング能力の問題だ。しかし、 両方に共通することは、顧客データを蓄積してもそれを「サービス転化」する力がなく、単に個人情報リスクの重荷となってしまうということだ。

それでなくとも、個人情報保護法の対策ということで、ファン向けWebサイトを構築したにもかかわらず、収集したログデータを3ヶ月で全部破棄する (某自動車会社)、あるいは社内でも部門が変わればデータをあえて共有しない(某食品加工会社)、といったCRMとは逆行する傾向がある。

CRMの3つのIQ能力を

これまで述べてきたことを踏まえ、CRMの実践で成功している企業には次の3つのIQがあるといえるだろう。

カスタマーIQ
顧客情報を分析し行動を予測する能力
サービスIQ
顧客の経験価値をアップするサービス革新の能力
リスクIQ
個人情報保護法などへの対応や失敗を教訓化する能力
表3:3つのIQ

表3にあげた1〜3はチェーンのごとく連携していてはじめて効果を発揮するものだ。そしてその頭文字だけを並べると「C・S・R」のIQとなることがわかる。もちろん、こじつけの語呂合わせだが、CSRは企業の社会的責任を意味する言葉でもある。

最近の調査で、第一相互銀行のように企業のCRM部門がCSRの担当も兼ねているところが増えてきている。大手銀行・保険などでは顧客数が数百万以 上といった数にものぼることから「顧客=社会」というような関係が形成されている。その意味では、CSRの実践はCRMの実践と分離するものではなく、む しろCRMをより幅広く深く展開することで実質的な効果をあげるものといえる。



CRMの実践の成功に必要な3つのIQ能力
図2:CRMの実践の成功に必要な3つのIQ能力

進化するCRMへ

これまで解説してきたようにCRMは時代性を持った経営手法であり、進化しつつある。それを固定的な満足度経営に留めている限り、CRMのITシステム化を行っても失敗は目に見えている。例えば日本型SOX法への対応などもIT業界では話題になっているが、個々の法的措置への対処では結局また個人情報保護法の二の舞となるだろう。

同じ失敗を繰り返さないためには、日本メーカの回復に見られるように、より本質的な企業の在り方としての3つのIQを統合したCRM実践を展開していくことが望まれるだろう。

デジタルハリウッド大学 デジタルコミュニケーション学部 教授

90年に(株)認知科学研究所代表取締役に就任し、以後大手PCベンダーのコンサルティングや国家認定のIT 資格試験の受託開発、サテライトオフィス企画などに従事。95年に(株)ヒューコム入社後、インターネット事業を推進。公的な役職として、ネットワーク協 議会Eビジネス委員会座長、日本インターネット協会幹事等歴任。2003年に早稲田大学客員研究員に就任。2005年にデジタルハリウッド大学 教授に就任。現在CRM協議会の運営や大手ベンダーなどのCRMコンサルティング・研修業務をヒューコム社の主席コンサルタントとして従事。

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