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第2回:ユーザとベンダにもたらすメリット
著者:ケアブレインズ  内田 隆平   2006/7/14
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はじめに

   前回はコマーシャルオープンソースの概要を説明し、システムインテグレータなどがその有効性を評価していることを紹介しました。今回は、コマーシャルオープンソースを提供するソフトウェアベンダやユーザ側のメリットを詳しくみてみましょう。

ソフトウェアベンダにとってのメリット

   まずはソフトウェアベンダ側にどのようなメリットがあるのかについて解説します。


営業・マーケティングコストの低減

   ユーザがソフトウェアを購入した場合、ベンダに支払った費用は何に使われているかご存知でしょうか。まずはそれを図1に示しました。

CRMベンダS社の収益構造
図1:CRMベンダS社の収益構造

   図1は業務用ソフトウェアベンダの収益構造で、収入の68%が販売管理費に使われていることがわかります。すなわちユーザが支払った費用の約7割は営業・マーケティング、あるいは管理に使われており、開発に使われる費用はわずかです。

   ユーザはベンダの営業にではなく、購入したソフトウェアの保守や機能拡張にコストを割いているはずなのに、現状は異なっているのです。では、なぜベンダの販売管理費が高くなっているのでしょうか。

   それは、これまでユーザが購入前にソフトウェアをじっくり操作して評価することが難しかったため、製品の説明はすべてソフトウェアベンダ側で行っていたことがあげられます。

   つまりソフトウェアベンダは何度もユーザを訪問して製品を説明し、あるいはデモンストレーションしながら、フィット&ギャップを提示するといった手間のかかる作業を行っていたのです。またユーザの認知度をあげるため、莫大な費用をかけて製品の広報・宣伝をしてきましたこともあげられます。このようにして営業・マーケティングコストが高騰していったのです。

   しかしコマーシャルオープンソースの場合、このような問題は解決されます。オープンソースの特徴は、いつでも好きな時にソフトウェアを無償でダウンロードできることです。多くのユーザは、興味をもったソフトウェアを好きな時にダウンロードして動作させ、実際に使いながら機能や品質を評価できます。

   視点を変えてみるとソフトウェアベンダ側は、製品の説明やデモンストレーションに時間をかける必要がなくなるため、営業フェーズが非常に短くなるのです。したがってベンダの営業・マーケティングコストが劇的に下がり、一般的にライセンス費用が低く抑えられます。

   その代わり、ユーザが自ら商品の評価をしなければなりません。いわばユーザによるセルフサービス型の評価によって低コストを実現しているといえるのです。


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株式会社ケアブレインズ 内田 隆平
著者プロフィール
株式会社ケアブレインズ  内田 隆平
株式会社ケアブレインズ取締役CTO。
東京大学農学部卒業、早稲田大学ビジネススクール技術経営学修士(MBA in Technology Management)。米国SugarCRMコア開発メンバー、SugarCRM日本語化リーダーを兼務。17,000名のSugarCRMコミュニティではトップ10コントリビューターとして表彰される。


INDEX
第2回:ユーザとベンダにもたらすメリット
はじめに
  開発コストの劇的な低減
  ユーザにとってのメリット