ERPの概要と導入のポイント
ERP製品の規模を何で分類するか
通常、ERP製品は大企業向け、中堅企業向け、中小企業向けという3種類の規模別に分類されます。表1は有名なERP製品を規模別に分類した例です。ここでは顧客の売上規模を分類の目安にしており、上側の境目を500億円、下側の境目を50億円にしています。
この基準値はまちまちで、上側境界を1000億円以上、もしくは下側境界を100円億未満とする場合もあります。一般にSMB(Small and Medium Business)と呼ばれているエリアは中小企業市場を指しますが、ここに一部中堅企業も含めて300億円以下を対象とするような分類もあります。
対象企業 | 顧客売上規模 | 主な製品 |
---|---|---|
大企業 | 500億円〜 | mySAP,Oracle EBS,COMPANY,People |
中堅企業 | 50〜500億円 | GLOVIA-C,GRANDIT,ProActive, SuperStream,OBIC7 |
中小企業 | 〜50億円 | SMILEα,勘定奉行,PCA |
表1では主な製品を便宜上分類してますが、境界の中間に位置付けられるような製品も存在します。また、中堅企業向けに分類したからといって大企業で使えないということはまったくありません。
中堅企業向きERPと称されているものが大企業で使われていることや中堅企業で中小企業向きERPを使っているところも少なくありません。一般に下 位市場に位置付けられていた製品は上へ上へと対象企業規模を拡大する傾向にあり、ボーダレスの競争になってきています。
素朴な疑問ですが、これら製品は何を根拠に分類しているのでしょう。もちろん、大企業向きと謳うだけの「マルチカンパニー/マルチカレンシー/マル チランゲージに対応している」「部門単位でBS・PLを管理できる」「情報活用機能が充実している」「パフォーマンスに優れている」などの機能が大きな企 業では必要とされています。しかし、最近ではこれらの機能は中堅企業向けERPにも備わってきており、必ずしも機能だけで分類しているわけではなさそうで す。
大企業が中堅企業向けとされる製品を使えないかというと、必ずしもそういえないのが最近の状勢です。そのため中堅企業向けとされているERPでも、 大企業と商談する時は「大企業向け」と称して使い分けることもあるようです。ユーザがERPを導入する際は、このようなボーダレス時代になったことを意識 して賢い選択をした方がよいと思います。
ERPの導入
それでは、実際にERPを導入する際のポイントをここで紹介します。
段階的導入と一括導入
ERPの導入形態には、「段階的導入」と「一括導入」があります。段階的導入とは、今年は「会計」を導入し、来年に「給与・人事」、その後で「販 売・調達」というように、自社に必要な業務から導入するものです。通常のERPはこのような部分導入や段階的導入が可能なパッケージ構造となっている。
一方、企業の持つ業務すべてを一度に導入する(俗にビッグバンと呼ばれています)ケースも少なくありません。段階的な導入の過程段階では、ERPを 導入するメリットをすべて享受することができないので、まとめて導入して最初から100%の導入効果を目指すというものなのです。
ERP導入を特別視しない
ERPの導入というと、大がかりなプロジェクトと捉えられている傾向があります。しかしERPという言葉に業務が劇的に改善されるという特別な幻想を描いてはなりませんし、逆になんだか大層なものだという畏怖を抱く必要もありません。
ERPは従来の業務システムとは違うと主張する向きもありますが、そんなことはありません。ERPも基本的に個々の業務システムから構成されてお り、それがコーポレート単位での効率化という観点でまとめられているだけなのです。業務システムとして使いにくいものは、例えどんなにコンセプトが立派そ うに見えても使いづらいものなのですです。
ERPだからといって、コンサルタントやベンダーのいうことをすべて鵜呑みにするのでなく、自分の目と耳で判断することが大切なのです。自社の業務を知るのは自分たちであり、その重要な点を自分たちがきちんと伝える必要があることを忘れないようにしてください。