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ERPへのSOA適用による企業システム構築の新たなアプローチ
第2回:企業情報システムへのSOA適用事例とERPシステムの構築
著者:
オープンストリーム 赤穂 満
2006/12/20
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SOAへの取り組み
オープンストリームでは、一昨年よりWebサービスによる異機種間接続やデータ連携に取り組んできた。
昨今、話題になっているSOAの要素技術実証を目的として、自社の勤怠管理システムの人事や営業が管理する情報とのデータ連携をサービスの疎結合により実現している。またSOA要素技術であるESBやBPELについても商用プロダクトの性能調査などを含めた比較検討を行い、自社システム構築にESBを搭載した実証などを行っている。
第2回では、それらの事例を紹介しつつ、ERPへのSOA適用のアプローチを紹介する。
※注1:
本連載はオープンストリーム・ホワイトペーパーより抜粋し、加筆・修正を行ったものです。
事例1「自社システムへの適用」
当社のようなシステム開発を中心とする勤怠管理では、顧客との取引条件や請求業務など複数のシステムが介在している。本事例はこの「勤怠システム」に、「サービス設計手法の検証」と「SOA関連プロダクトの検証」の両方の側面からSOAプロジェクトをしたものである。SOA要素技術として、SONIC ESBやActive BPELを適用している。
結果としてこれまでの手作業による情報抽出や承認、再入力などそれらの作業に忙殺されていた大量の作業工数を削減することが実現している。詳しくは以下のURLを参照いただきたい。
勝ち組に学ぶシステム導入事例
第6回:SOAによる勤怠管理システムの構築(前編)
事例2「化学メーカーの導入事例」
化学メーカーの事例においては、調達拠点を統合し原材料と調達先を集約することで、SOAによる業務の統合化を実現している。またこの開発には、IONA ESBを適用している。
本事例では調達業務が各工場や支社に分散しており、調達先への依頼ルールなどが異なっていため、量的効果を出した購入単価の提言が困難であったことがあげられる。つまりSOAを適用するプロジェクトは通常のIT化プロジェクトと異なり、1社の開発業者で完結させることは困難であるということだ。
ビジネスを熟知しているユーザ企業と既存システムを構築してきた開発業者、およびSOAプロダクトを提供する業者に加えて、サービス粒度やサービスの切出しについて実績のある企業を交えて、ビジネスの最適化を見据えた構築をしていく必要があろう。
図1:化学メーカーへの導入事例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
SOA適用を前提としたビジネスプロセスの設計
著しく変化する企業環境に応えていくために、企業のビジネスプロセスもその変化に順応できる枠組みで設計しておく必要がある。企業の全プロセスを再設計するには、膨大な時間もコストも掛かる。以降では、プロセスの設計をする際のポイントを解説していく。
ビジネスモデルの変化
企業で起こり得るビジネスモデルの変化として代表的なものは「事業統合」と「事業分割」の2つに分けられる。この2つの現象を想定したプロセスの設計こそが、変化に強いビジネスモデルの構築に繋がるのである。ここでは情報サービス産業におけるプロセスの再編を例に解説しよう(図2)。
図2:変化に強いビジネスモデルの構築
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
情報サービス産業の場合、システム開発が主要ビジネスであり、またソフトウェアパッケージの販売やハードウェアの販売まで幅広く手掛けている。
多くの企業では、新しいビジネスが発生するたびにビジネスルールを設定する(商談の後にプロセスが決定していく)、受動的で複雑なビジネスモデルが実態である。そのためシステムも取引形態に合わせて複数存在しているケースが多く見受けられる。また情報サービス産業だけでなく、複数の商品を製造販売しているメーカーにもよくあるケースだ。
これは大きなビジネスの成立を優先するあまり、自社の根幹となるビジネスモデルやそれを支えるシステムを振り返る余裕がなかったことに起因している。
変化に強いビジネスモデルと柔軟なシステムの設計とは
では先に述べたように「変化に強いビジネスモデルと柔軟なシステム」を構築するための取り組み方について見ていこう。
例えば、システム開発事業と製品販売事業を統合する機会があった場合、図2のように両者のこれまでの現状のプロセスを描いた上で、共有できる機能と個別の機能に分けて考察していくことからはじめるとよいと考える。
この段階では検討の対象となるプロセスが非常に大きな粒度であるため、見積1つをとっても製品特性や顧客サービスの視点で検討すれば、異なる論点が多数発生すると思われる。
しかし重要なことは、その論点が顧客に直接提供するサービス自体におよぶものであるということだ。つまり企業全体のプロセスで定義した場合、見積業務としての共通化の括りの中で議論しても問題はない。
また先ほど紹介した化学メーカーでのERP導入の事例でも明らかなように、その業務自体に競争力も付加価値も見出されないと判断できるのであれば、この機会に共通のプロセスに置き換えてしまうことが有効であろう。
このような議論を繰り返しながら、変革の対象となるプロセスについて共有/個別の識別を行い、個別化と判断されたプロセスについて、さらに詳細化したプロセスを整理していくのである。この段階でシステムの共有化できる機能と差分機能が明確になってくる。
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著者プロフィール
株式会社オープンストリーム 赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。
INDEX
第2回:企業情報システムへのSOA適用事例とERPシステムの構築
はじめに
プロセスの差分をサービス化する
SOA適用によるERPシステムの構築について