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BCM
事例から学ぶBCMの本質

第1回:BCMとは何か

著者:みずほ情報総研  多田 浩之   2007/1/12
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BCPとBCMとは

   最近、企業経営の中で、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)という言葉がよくでてくるようになってきました。

   BCPとは自然災害やテロなどの不測の事態において、企業の事業継続をはかるための方針や手続きを示した計画(文書)のことです。BCMとはそのような自然災害や不測の事態による様々なリスクに対して迅速かつ効果的に対処し、事業活動の継続性を確保するための戦略的な運営管理手法のことです。

   具体的にいえば、BCMはBCPを策定するとともに、BCPの実行に必要な準備・資源の導入などについて、PDCA(Plan、Do、Check、Act)のサイクルで見直し、管理する仕組みを意味します。

   実際、そのような不測の事態においては、より実践的な形でBCMが整備されていないと、BCPが単なる紙上の計画に終わってしまうかもしれません。ではどのように対応していけばよいのでしょうか。

   これは筆者の見解ですが、BCMの考え方について価値ある多くの教訓を与えてくれたのは、2005年の夏に米国で起こったハリケーン・カトリーナ災害であると考えています。

   本連載では、最初にBCPの背景について解説し、その後にハリケーン・カトリーナ災害の教訓を踏まえたBCMの本質とあり方について解説していきます。

世界的に多発している自然災害

   最近、国内外で大規模な自然災害が多発しています。ここ数年だけでも、国内では2004年7月の新潟・福島豪雨と福井豪雨、2004年10月の新潟県中越大震災、海外では2004年12月のスマトラ沖地震、2005年8月のハリケーン・カトリーナ災害などに代表される、広域かつ壊滅的な自然災害が数多く発生しています。

   また現在の日本国内では、首都大規模地震、東海・南海・東南海地震などの大規模震災の発生が懸念されており、地域を中心とした防災・減災への取り組みの強化が求められています。この一環として、企業に対しても震災を中心とする大規模災害時において、企業としてのコアコンピタンスを存続させ、事業を継続できるようにするための備えとして、BCPを準備することが求められるようになってきています。


BCPの認識と広まり

   欧米の企業では、早くから不測の事態に対する備え(コンティンジェンシープラン)、災害時復旧計画などの枠組みでBCPの策定が行われきました。

   BCPが国際的にも広く注目されるようになってきたのは、9・11同時テロ事件以降であるといえます。この事件では、ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が突入し、数多くの企業が被災しましたが、被害にあった企業の多くがバックアップセンターを備えていたため、事業継続に成功したことが大きな話題になりました。

   国内では、この事件を契機としてBCPに関する検討が進められ、2005年8月に中央防災会議から「事業継続ガイドライン」が公表され、2006年2月には中小企業庁から中小企業の経営者が過度な負担なく自社BCPを自力で策定運用できるようにするための、「中小企業BCP策定運用指針」が公表されました。現在、BCPの策定は企業の社会的責任(CSR)として位置づけられています。

事業継続ガイドライン
http://www.bousai.go.jp/MinkanToShijyou/guideline01.pdf
中小企業BCP策定運用指針
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/

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みずほ情報総研株式会社 多田 浩之
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社
多田 浩之

情報・コミュニケーション部 シニアマネジャー
1984年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学研究科修了、富士総合研究所(現みずほ情報総研)に入社。専門は非常時通信、危機管理および産業インフラリスク解析。現在、ICTを活用した産学連携安全安心プラットフォーム共同研究に携わる。中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」下の小委員会・分科会委員、内閣府「消費者教育ポータルサイト研究会」委員などを歴任。


INDEX
第1回:BCMとは何か
BCPとBCMとは
  BCPのルーツとは
  ハリケーン・カトリーナ災害とは