仮想マシンとOS仮想化とは似て非なるもの

2007年3月2日(金)
土居 昌博

ハードウェア仮想化の限界とは?

   仮想マシンを利用したハードウェア仮想化の根本的な目的はリソースの統合です。このため、仮想マシンベースのサーバ仮想化におけるリソース統合の最終目標は、同じサーバ上に多くの異なるOSを稼動させることです。

   仮想マシンベースの仮想化技術を利用すれば、Windowsの隣にLinuxを、さらにその隣にSolarisを稼動させることが可能であり、さら に古いOSなどもサポートできます。しかしながら、このハードウェア仮想化の柔軟性には多大なオーバーヘッドと非効率性がともないます。

   多くの企業や組織においてハードウェア仮想化を導入した際に、導入後にサーバ上で稼動させている仮想マシンベースのOSがすべて同一であることが明 らかになるケースがあります。これには様々な理由がありますが、その1つに、ほとんどの組織のシステムがサーバ管理者のOSスキルに基づいて構築され、 サーバ統合の必要性を感じるだけの台数を管理しているという点があります。

   ITを利用する企業や組織において、異なるOSを1つのサーバに統合するという目的を失った瞬間、ハードウェア仮想化の柔軟性は、そこから生じるオーバーヘッドによって正当性が失われてしまいます。

   またハードウェア仮想化には、下記のような内在的なオーバーヘッドと非効率性に関する限界があります。


  • 1つのアプリケーションを動かすために複数のOS(ゲストOS⇔ハイパーバイザ/ホストOS)を横断しなければならない。より多くのプロセスパワーを消費することになり、レスポンスの低下やオーバーヘッドの増大を招く
     
  • それぞれのOSがメモリスペースを占有することにより、リソースの非効率性が生じる。メモリ使用効率を最適化するステップを取っているベンダーもあるが、非効率性の問題は常に残る
     
  • 重複したOSはハードディスクスペースを浪費するとともに、ライセンスおよび管理に関しても個別に行う必要がある
     
  • ハードウェアのエミュレーションをうまく行うために、市場におけるすべてのハードウェアのサポートと互換性を確保することが困難となる。このため、処理の遅延やプロセスにおける高いオーバーヘッドの原因となる可能性がある
表1:ハードウェア仮想化の限界点

仮想マシンでは解決できない問題とは

   企業およびIT組織は、新しいアプリケーションごと、もしくは部門ごとに、リソース使用率が10〜15%程度の新規のサーバを大量に導入してきまし た。これにより、サーバの無秩序な増殖(スプロール)現象の問題を抱えています。このサーバスプロール現象は、管理コストをはじめ、ITコストを増大させ る原因となっています。

   多くのIT部門はサーバのスプロール現象を解決するためにVMWareやXenなどのハードウェア仮想化ソリューションに注目してきました。確か に、ハードウェアおよびインフラストラクチャのコストに関する問題には、ハードウェア仮想化によるサーバ統合が役立つと考えられます。

   しかし、ハードウェア仮想化は新たな問題となるOSスプロール現象や仮想マシン(VM)スプロール現象を生みだしています。ハードウェアを仮想化し たサーバには仮想マシンごとのOSとホストOS(もしくはハイパーバイザ)が存在します。さらに、仮想マシン(=新たなOSインスタンス)を導入すること が非常に簡単なため、管理者がより詳細にカスタマイズしたOS環境を次々に導入することになります。

   この結果として管理者は、OSやIIS、ASP.NET、SQL Server、ミドルウェアなど、多くのコピーからなる数100の異なるVMイメージを個別に管理しなければならなくなります。

仮想マシンのモデル
図2:仮想マシンのモデル
Amelion, Inc. 代表

米大手IT企業であるEDSでEコマースコンサルタントの経験を経て、米Osmonics(現GE P&WT)の日本における事業の立ち上げとマーケティングに携わる。2003年よりAmelion,Inc.を立ち上げ独立。 Amelion, Incでは、国内外のハイテク企業の広報をはじめ、特に海外企業の日本参入におけるマーケティング戦略から事業開発の包括的なサービスを提供。クライアン トのひとつであるSWsoftとオープンソースプロジェクトであるOpenVZの日本における広報は2006年より担当。

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