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Linuxオープンソース白書2006
組み込み分野の動向を変化させるオープンソース

携帯電話、デジタル家電、カーナビ、通信基地局にも Linuxが浸透、普及したオープンソースシステムによる開発環境の統合も進む
著者:塩田 紳二   2005/10/12
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はじめに

ThinkIT会員特典20%OFF    マイクロプロセッサーの応用分野で、コンピュータ以外の製品に利用されるものを一般に「組み込み」(Embedded)と呼ぶ。ソフトウェアを使って機能を実現するような機器やサブシステムはすべて組み込みシステムである。たとえば、家電製品や携帯電話、工作機械やロボットなどである。自動車や通信用設備なども組み込み機器の一種と言える。ただし、最終製品によって、組み込み部分が全体に占める範囲は違う。なかにはほとんどコンピュータそのものと言える機器もあれば、自動車のようにコンピュータが提供する機能はごく一部といった場合もありえる。傾向としては、製品に高度な機能が要求され、全体的に組み込みソフトウェアの機能やサイズは大きくなる。この傾向は、家電など一般向け機器で顕著だという(図1)。

組み込みソフトウェアの規模の推移
図1:組み込みソフトウェアの規模の推移
出所:経済産業省組込みソフト強化推進委員会資料
(日経エレクトロニクス2000年9月11日号をベースに追加修正)


組み込み機器のプレイヤー

   一口に組み込みといっても、その製品の幅は広く、また、メーカーも多い。日本国内のメーカー、特にエレクトロニクス機器を製造するメーカーは、ほとんどが何らかの形で組み込み機器にかかわっている。まずは、オープンソースを軸に業界の構造をはっきりさせておこう。

   組み込み機器を製造するメーカー、そしてそこに利用される組み込み用プロセッサーやコントローラーを作る半導体メーカー、そして、組み込みOSなどオープンソースのソフトウェアベンダーがメインとなるプレーヤーである。組み込み機器を製造するメーカーが、直接オープンソースコミュニティと付き合ったり、自身でオープンソースソフトウェアに手を入れるといったやり方もあるが、すでに実績のあるソフトウェアベンダーを利用するメーカーは少なくない。ソフトウェアを買うというよりも、サポートやコンサルテーションまでがビジネス範囲という感じだ。

   オープンソースが組み込み機器分野に浸透するにつれて、半導体メーカー、特に組み込み機器向けプロセッサーのメーカーは、さまざまな形でオープンソースに対応する必要が出てきた。たとえば、Linuxが動作するかどうかといった点で組み込み用プロセッサーも評価されることになるからである。ここで、単に半導体メーカーがオープンソースソフトウェアを自社製品に対して移植するだけでは、オープンソースソフトウェアの開発サイクルに追いつくことが困難だし、プロセッサー固有の問題への対処が壁になることもある。となると、オープンソースコミュニティへの深いかかわりが必要になり、このあたりをオープンソースベンダーに頼る場合も出てくる。

   もうひとつのプレーヤーは、これらの3者あるいはその一部で作られるオープンソース関連の業界団体だ。実体としては、ソフトウェアベンダー、メーカー、半導体メーカーであるのだが、そのどれでもない組織として付き合うコミュニティとのかかわりができるという場合もある(図2)。

オープンソースから見た組み込み事業者の構造
図2:オープンソースから見た組み込み事業者の構造

   ただ、現状、組み込み分野で利用されているオープンソースは、LinuxなどのOS系とその上のアプリケーション(ウェブブラウザー)やGUIツールキットぐらいだと思われる。

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書籍紹介
「Linuxオープンソース白書2006
新たな産業競争力を生む、オープンソース時代の幕開け」

※本連載はインプレスより発行の書籍「Linuxオープンソース白書2006」(ThinkIT監修)から一部抜粋し、転載したものです。
Linuxオープンソース白書 2006
■本書の構成
第1部のユーザー企業利用動向では、605社の情報システム管理者に聞いた独自調査データ177点を掲載。プレゼン用に、すべてのデータをCD-ROMに収録。
第2部の事業者動向では現在から将来のLinuxオープンソースビジネスを解説。
第3部の社会動向ではオープンソースの普及に向けて、教育や法律、そして世界各国の政府から地方自治体の取り組みまでを紹介。
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INDEX
携帯電話、デジタル家電、カーナビ、通信基地局にも Linuxが浸透、普及したオープンソースシステムによる開発環境の統合も進む
はじめに
  オープンソースが使われている分野
  組み込み分野におけるオープンソースのメリット