エンジニアとデザイナの架け橋となるMicrosoft Expression(エンジニア視点)
Visual Studioとの連携
前述した通り、XAMLのデータをVisual Studioで扱うことにより、エンジニアはデザイナの意図した通りのデザインにロジックを実装し、アプリケーションを開発することができる。
ただ、Expressionはデザイナ向けツールとはいえ、簡単なロジックを実装する機能が搭載されている。では、Visual Studioとどこで線引きができるのであろうか。
あくまでExpressionはUIを制作するもの
Expressionはあくまでインターフェースをデザインするものであるという。Expression Interactive Designerにおいて、やろうと思えばVisual BasicやC#を利用して「裏でデータベースのデータを引っ張ってきて、条件にあうようにソートをかける」などのバックエンドのロジックも実装できる。
しかし、テキストエディタでプログラミングをするよりもVisual Studioのような統合環境を利用した方がアプリケーションの開発性が格段に高いことと同じく、あくまでExpressionはデザイン系の機能を中心としたツールであり、バックエンドを含めたロジックを実装することは、コスト・品質を考えると現実的でない。
インターフェースのデザインはExpression、ロジックの実装はVisual Studioという役割を明確にできれば、あとは開発現場のルールさえしっかりできればアプリケーション開発の進捗管理をしやすくなるのではないだろうか。
Visual StudioでXAMLを扱うCIDER
Visual StudioではXAMLファイルをインポートしたり、エクスポートする機能が提供されるという。この機能はCIDER(サイダー)というコードネームで現在開発が進められている。
また、開発ライフサイクル全般を網羅する機能セットであるVisual Studio Team Systemに、デザイナという役割や、XAMLによるデザインコードを統合して管理できるようにすることも検討しているという。
なぜマイクロソフトが新たにデザイナツールを提供するのか
XAMLというXMLを拡張させたテキストベースのフォーマットを利用しているのにも関わらず、なぜマイクロソフトが新たにExpressionというデザイナツールを提供するのであろうか。既存のデザイナツールのベンダーがXAMLに対応していくのだけに任せずに、マイクソフト自身が新たにデザイナツールを提供する理由を表4にまとめた。
- WPFの開発元として、最適なWPF対応ツールを提供できると考えているため
- Expressionとの連携が期待されるVisual Studioを提供しているため
- マイクロソフトは常にユーザビリティを意識して成長してきた会社であり、デザイナにも最適なユーザビリティを提供できると考えているため
3点目について、ここで補足したい。
マイクロソフトはWindowsやOfficeといった「クライアント」ソフトウェアのイメージが強いと感じている方も多いようだが、それはマイクロソフトが一般ユーザや開発者、管理者といったそれぞれの対象のユーザビリティを考慮した最適な「フロントエンド」を提供してきた結果であり、それと同様にExpressionではデザイナに最大限のユーザビリティを提供したいという。
ビジネス視点からのExpression
ここまでの解説から、ExpressionとVisual Studioの連携においてシステムの開発生産性および品質が向上することを理解してもらえたと思う。これはエンジニアとデザイナの負担を減らすだけでなく、マネジメント層も恩恵を享受できるということを付け加えておく。
各部門のコンセンサスをはかれるということは、プロセス自体が変わらなくても、勝手な思いこみによるロジックの実装のやり直しや無駄な打ち合わせを防ぐということでコストと時間が短縮できる。
また、従来型のシステム開発では実現できなかった「システムに付加価値を付ける」ということは、顧客のニーズを掘り下げていくという意味で大きなビジネスチャンスとなるのではないか。