負けないERP提案のコツ
紙芝居とテレビでは全然違う
筆者が子供の頃、大阪の祖母の家の近くに天下茶屋公園というところがあり、時々紙芝居をやっていたのですが、今を思えばプレゼンやデモの理想的な感覚はあの感じではないかと思います。50円玉を握りしめて公園まで友達と一緒に走るのですが、紙芝居をしてくれるおじさんの間合いの取り方が絶妙でした。 どうしても続きが聞きたくて、駄菓子を買ったり次はいつきてくれるのかを聞いたり一生懸命だった記憶があります。
紙芝居一枚一枚話をする都度にたっぷりと間合いを取って、じらすやり方は聞き手にとって集中力を高めてくれます。今更ながら客観的に考えると、紙芝居の良し悪しは紙芝居の絵にあるのではなく、おじさんの話術にあったのだと思います。これこそプレゼンやデモの極意ではないかと私は思うのです。
正直、私は紙芝居世代というよりはテレビ世代なのでアニメーションの圧倒的な表現力や美しさは紙芝居の比ではないと思うのですが、テレビはやはり一方通行のメディアですからどこか緊張感に欠けるところがあります。
最近のプレゼンはPowerPointが標準ですし、デモもオンラインのかっこいい画面を見せるわけですが、実はこれがプレゼンの本質を削いでしまっているのかもしれません。
サプライズとウケが必要
プレゼンとデモを今よりもよくするコツですが、サプライズとウケ狙いが有効です。
サプライズとウケとは、お客様が予想もしなかったちょっとしたエッセンスです。よくやる手段としては、お客様に説明する資料やデモの内容をすべてお客様の実際の組織や製品名で仕込んでおくことです。
業界のトレンドをいちはやく察知して、お客様がやりたいと考えていると思われるシナリオを想定して具体的に見せるのです。これだけでは、まだまだ足りないという場合には、現行システムではどうしても実現できないところを、「いとも簡単にデモで作って見せる」(実は仕込みは結構大変)ということをしてみたり、「お客様の競合メーカをM&Aで子会社化したのを想定してみました」という設定でウケを狙って洒落っ気をだしたりします。
こうしたちょっとして気遣いや準備が、お客様の心に響く楔になると思います。「ウケを狙う」「笑いを獲る」「突っ込むきっかけを作る」こうした仕掛けはプレゼンやデモを通じて、お客様をこちら側に引き込む手段として大変有効なのです。
ERPパッケージの商談だからとおいって、はじめからおわりまで機能説明や技術紹介などに終始しているだけでは、テレビと一緒で時間が来ればそれでおしまいです。「心に響くプレゼンとデモ」は、やはりお客様とベンダーに通じ合う何かを作り、お客様に具体的なアクションを促すものであるべきだと思います。
「ソリューション提案をするべき」という回答をする前に、お客様にとって聞きやすい環境づくり雰囲気づくりからはじめてみてはいかがでしょうか。
最後にプレゼンのスキルシートを作成してみましたので、是非とも活用してみてください。
- 聞き手が誰で、何に興味を持っているかをイメージしている
- プレゼンが終わったときに、聞き手にどのような行動を促すかゴールを決めている
- ターゲットとする聞き手に関する下準備を充分に行っている
- プレゼン開始時に聞き手を引き付けるための掴みを工夫している
- プレゼン開始時に内容の全体イメージと時間配分を説明している
- プレゼン中に聞き手の反応を確認できる
- プレゼン中に聞き手の理解度や関心度に合わせてプレゼン内容を柔軟に変えられる
- プレゼンの内容を暗記している(原稿なしでもプレゼンできる)
- キーメッセージが明確である
- ストーリー立てを考えて、これにそった論理ピラミッドを構築している
- 論理展開する場合にはチャートにデータを提示して明確な根拠を示している
- One Chart、One Massageの原則を理解してチャートの説明ができる
- 勝負チャートを1、2枚入れている
- メッセージを覚えてもらうためにビジュアルにも手間隙をかけている
- プレゼンはエンターテインメントであると理解している
- プレゼンテーションは聞き手との双方向コミュニケーションであると理解している
- プレゼン後のQ&Aを想定し、回答を必ず準備している
- プレゼン後に自分で勝ち負けの予想がつく
紙芝居とテレビはまったく別のメディアですがプレゼンやデモを行うたびに、人に何かを伝える手段として優れているのはやっぱり紙芝居だろうと感じます。