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オープンソースの新潮流
〜企業システム内でのOSS利用に新たな動き〜

2006/11/15
オープンソースの利用の拡大

   11月15日、OpenSourceSummitにて株式会社シンクイット代表取締役重松 直樹氏は「オープンソースの新潮流〜企業システム内でのOSS利用に新たな動き〜」と題する講演を行った。かつてオープンソースの利用は、OS、サーバソフトが中心であった。しかしここ1、2年の流れとしてERPやCRM、BIなどの業務系アプリケーションでの利用が活発になっている。今回の講演では、CRMを中心に今後の業務システムでのオープンソースの活用について語った。


CRMの世代変遷

   「CRMは3つの世代に分けられる」と重松氏は語る。第一世代は、Siebel Sysetemsに代表されるクライアントサーバ型である。この世代のCRMはライセンス、サポート、カスタマイズをはじめ、ITエンジニア人件費も含め導入に当たっては非常にコストがかかったのが特徴である。

   第二世代は、ホスティングサービスによりCRMを提供する形になる。これはsalesforce.comが代表的で、ライセンス費用の支払いを月単位とすることで初期導入費を下げた上、Webベースでの部分的なカスタマイズなどをユーザ側で可能にした。しかもホスティングによるサービス提供のため、ITエンジニア人件費が企業の負担にはならないことが特徴的である。ただ、移行にはコストがかかることが難点であった。

   そして第三世代がコマーシャルオープンソースソフトウェアによるCRMで、SugerCRMなどが有名だ。ここにきてライセンス費用を他の世代と比較して飛躍的に下げることに成功した。カスタマイズや移行費用などは導入する企業によって異なるため一概には安いといえないが、オープンソースを扱える人材が増えていることなどから、安く抑えることも十分可能だと重松氏はいう。しかも世界中の開発者からなるコミュニティにより、各国のローカライズなどが積極的に推進されており、日本語環境でも利用できることがメリットとしてあげられる。

   このようにCRMを世代別にまとめ、「ユーザ企業からヒアリングしたところでは、第一世代から第二世代に移行することで約2分の1のコスト削減、第二世代から第三世代に移行することでさらに約2分の1のコスト削減効果が見られるということだ」とオープンソースのメリットを語った。

シンクイット 代表取締役 重松 直樹氏
シンクイット 代表取締役 重松 直樹氏


SugerCRMの開発スタイル

   第三世代であるSugerCRMは3つのライセンスモデルがある。1つは無料で利用できる「OpenSourceSugerCRM」、残りの2つは有償のProfessionalEditin版、EnterpriseEditin版である。

   SugaerCRMの開発スタイルはこうなる。まず、コミュニティにベータ版をオープンソースでリリースする。するとコミュニティ参加者によるテスト・デバックが行われ、迅速な機能改良が行われる。ベータ版で改良された機能は商用版に適用できるようにフィードバックされた後、正式な機能として追加される。

コマーシャルオープンソース開発サイクル
図1:コマーシャルオープンソース開発サイクル
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   このようなオープンソースを活用した開発の流れを持つことにより「オープンソース版は無料でエンタープライズレベルのCRMシステムを利用でき、商用版はすばやい開発でハイクオリティな品質を持つことができる」と重松氏はそのメリットを強調する。


オープンソースを業務に使う上でのポイント

   最後にオープンソースを活用する上でのポイントをユーザの立場とSIerの立場からまとめた。

   業務系アプリケーションにオープンソースを活用する場合「何もかもオープンソースという姿勢は非常に危険」と重松氏は指摘する。以下の3つのポイントを整理して適材適所での導入が必要であると述べた。

  • 業務とITをどう絡めて活用するか要件の整理が必要
  • オープンソースを適切に扱えるエンジニアの有無が鍵
  • 全社的に導入するのではなく、まず部署単位から導入する

   SIerの立場として、オープンソースが主流となっていく中でのビジネスチャンスは、主に以下の3つにあるとした。

  • 業務系オープンソースシステムを提供するサービス(デュアルライセンス、導入サービスやASPサービス、カスタマイズサービス)
  • 包括的なフルスタックサービス(オープンソースシステムの組み合わせを検証し、フルスタックとして提供するサービス)
  • 保証サービス(オープンソースがシステムの中に含まれていないかどうかを調査し保証するサービス)

   最後に「今後ますますオープンソースの業務での活用が拡大することは確実」と講演を締めくくった。

(ThinkIT編集局 千本松 歩)