TOPThinkIT News> キーとなる数字は3万、100万、1億、∞ - 野村総合研究所が2011年までのIT市場予測
ThinkIT News
野村総合研究所
野村総合研究所

キーとなる数字は3万、100万、1億、∞ - 野村総合研究所が2011年までのIT市場予測

2006/12/21
「2011年までのIT市場動向」について発表

   野村総合研究所は12月21日、報道関係者を対象とした「NRIメディアフォーラム」を開催した。今回のテーマは「2011年までのIT市場動向」だ。


ブロードバンドの世帯普及率が約60%に

   まず、野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部 副主任コンサルタント 阿波村 聡氏が、ブロードバンド関連市場動向について説明した。

野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部 副主任コンサルタント 阿波村 聡氏
野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部 副主任コンサルタント 阿波村 聡氏

   阿波村氏によると、ブロードバンド市場は光ファイバー化が緩やかに進み、2011年度末には加入世帯数は1,790万世帯、市場規模は7,806億円に達するという。「光ファイバーにケーブルテレビインターネット、ADSLを加えたこれら家庭向けブロードバンドは2011年度末で3,089万世帯に普及し、世帯普及率は約60%に達する」と予測する。

   この60%の普及はブロードバンド市場に何をもたらすのだろうか。今年7月松下電器、SCN、ソニー、シャープ、東芝、日立の6社によって、デジタルテレビ向けのポータルサービス事業などを行う「テレビポータルサービス株式会社」が設立されたのは記憶に新しい。また無料のVODサービスの利用者も増加している。このような状況を踏まえ、阿波村氏は今後「通信と放送の融合に関連した製品、機器の普及が進むだろう」と予測する。

通信と放送の融合に関連する主要製品・サービスの普及予測
通信と放送の融合に関連する主要製品・サービスの普及予測

   また、NGN(次世代ネットワーク)については「通信品質やセキュリティ、機能の検討や開発が進んでおり、今後いよいよ開発段階から普及段階に入る」と述べる。普及を前に「どのようなサービスを提供していくのかを、ユーザ視点にたって考えていかなければならない。通信事業者、ハードウェアベンダー、サービス事業者などが連携して双方の利益を享受できるビジネスモデルを考えていく必要がある」と述べた。


ネットビジネス成長の主軸は携帯電話へ

   次に同研究所 情報・通信コンサルティング二部 主任コンサルタント 小林 慎和氏が壇上に登り、「情報大航海時代におけるIT市場動向」について説明した。

野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部 主任コンサルタント 小林 慎和氏
野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部 主任コンサルタント 小林 慎和氏


携帯電話利用者1億人時代の到来

   小林氏は「携帯電話は2010年には利用者数が1億人を超える」と予測する。多機能、高速通信が売りの携帯電話第3世代以降で1億人時代を迎え、従来より叫ばれていた「ユビキタス社会が実現される」と語る。

   そのような中で「携帯電話市場もロングテールビジネスを迎える」と小林氏。これまで携帯電話の通信サービスといえば公式ポータルやショッピングサイトなどが主流であった。しかし今後は「ニュースサイトやblog、SNS、検索サービスまでメディアのフルラインナップ化が進む」と予測する。

携帯電話会社はメディアのフルラインナップ化を目指す
携帯電話会社はメディアのフルラインナップ化を目指す


blogがもたらすインパクト

   blog・SNS市場については、「2011年にblogサイト数は1,813万サイト、SNS登録者数は5,110万(累計)を超える」という。これは「mixiに代表される招待制のSNSだけでなくマイスペースなど登録制のSNSが増加することの影響が大きい」と小林氏は分析する。

   ブロガーの爆発的な増加は「メディアの伝達構造の変革」を起こすという。下の図のピラミッドは現在のメディアの伝達構造、右の数字が2011年度の予測人数だ。

情報大航海時代の伝達構造
情報大航海時代の伝達構造

   2007年から2011年の5年間で、ブロガーは1,000万人から1,800万人に、blog読者は5,000万人から8,000万人に増加する。一方インターネット上の情報を利用しないアナログユーザは、5,150万人から1,500万人に減少するとみる。このような中で特に影響力が強いblogは「100万サイト規模になる」と小林氏。

   新聞の1日の情報量1000万文字に対して、blogによって発信される情報量は100倍の10億文字だという。まさに我々はほぼ∞(無限大)に情報が広がる大海原を生きなければならなくなったというわけである。

   また、2011年度末にblog・SNS市場規模は合計で1,706億円に達する見込みだ。これについては「インターネット広告が市場拡大を牽引するが、その他にもサービス利用料、EC紹介への還付金、社内ブログなど法人向けソリューションなども拡大する」と小林氏は予測する。

blog・SNS市場予測
blog・SNS市場予測

   さらに今後はblogやSNSからのECサイトへの誘導も促進され「ECの市場規模としては2011年に6兆4,000億円を超える」という。


携帯電話が情報大航海時代の船

   これらの状況を踏まえ小林氏は「情報大航海時代は消費者が主導権を握っていく」とみる。ますます消費者が発信する情報が意味を持ち、また情報の増産が続いていくのである。しかし残念なことに我々に用意された平均的な寿命は約80年、日数で換算すると「3万日」しかない。情報量に比べ限りのある一生の中で情報の取捨選択をしていかないといけないのだ。

   ∞の情報から信頼性や品質の高い情報に触れるためには「blogやSNSといった個人メディアで公開される信頼できる知人の言葉こそが頼りとなる」と小林氏は述べる。これらの情報を引き出す道具としては、高性能、高品質の通信機能、高精細のディスプレイを備える携帯電話が最も優れており「携帯電話が情報大航海時代の船になる」と小林氏は締めくくった。

問い合わせ先
野村総合研究所
TEL:03-5533-3210
http://www.nri.co.jp/

(ThinkIT編集局  千本松 歩)