イベントレポート「Japan Linux Conference 2007」
日本Linux協会イベント論文
2007/9/18 17:00
日頃の研究結果を発表
日本Linux協会は9月13日と14日の2日間、産総研 臨海副都心センター 別館において「Japan Linux Conference 2007」を開催した。その中から、1日目に行われた論文発表の模様をお伝えする。
まず日本Linux協会 理事の鵜飼 文敏氏が開会の挨拶を行い「Japan Linux Conferenceは今年で11回目を迎えます。これまではLinux Worldの中で行っていましたが、今年からは単独開催となり、より一層力を入れていきます」と語った。
日本Linux協会 理事 鵜飼 文敏氏
初日1人目の論文発表は、広島工業大学 情報学部 情報工学科 講師の田村 慶信氏が「オープンソースソフトウェアに対する最適バージョンアップ時期推定のためのソフトウェアツール」というテーマで行った。
広島工業大学 情報学部 情報工学科 講師 田村 慶信氏
この発表では、オープンソースソフトウェアの開発サイクルの中で、信頼性の評価と最適なバージョンアップ時期を推定する必要性とその方策について述べている。開発中に寄せられるフォールト報告とその修正の状況をニューラルネットワークに学習させ、システム全体の信頼性評価を行えるようにする試みである。
田村氏はこの機能をソフトウェアツールとして提供し、実際にFedora CoreやFireFoxのリリース事例を基に考察を行っている。発表後の質疑応答では「ぜひこのツールをオープンソースソフトウェアとして公開し、自身に適用してテストほしい」といった意見が寄せられた。
続く2つ目に行われたのは、日本データコムの村田 裕之氏による「SELinuxのポリシ作成時間を短縮する一考察」だ。
日本データコム 村田 裕之氏
村田氏は「セキュアOSが様々なOSに標準搭載されるように身近な技術となった」と述べ、その中でも著名なものの1つである「SELinux」を取り上げた。SELinuxは設定の難しさや設定ミスによるシステム動作の不具合などによって、ビジネス用途では敬遠される傾向があるという。主な理由として以下の3つをあげた。
- 動作保障のための試験工数の肥大化
- 独自概念の習得に要する時間
- 設定内容の理解が困難
この解決策として、SELinuxでは基本的に作業を遮断しておき、必要な部分を開放していく手法に対し、全体の作業を許可した状態から不必要なものを遮断していくという逆のアプローチを提唱する。
さらにプロトタイプを作成し、アプリケーション間のアクセス許可の調整を実現したとのことだ。質疑応答では、プロトタイプにより作成したポリシの正確性をどのように担保するかといった課題が示された。
*本文中の写真キャプションの中で「日本データコム 村田 浩之氏」を「日本データコム 村田 裕之氏」に訂正します。(2007/09/21)
(ThinkIT編集局 神保 暢雄)