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OSCJ.net、コミュニティ活性化への礎

2005/11/25
コミュニティ活性化の3つの原則

   2005年11月24日にOSCJ.netは「第一回 OSSプロジェクト公開会議」を開催した。

   基調講演にはThe Apache Software Foundation(ASF)の共同創設者で、現在はMozilla Foundationの中心人物であるBrian Behlendorf氏を招き、OSSプロジェクトの推進にあたりコミュニティのあり方について講演を行った。

   Brian氏はASFが成功した理由について、「オープンにするというアプローチによって、分野を問わず多くの方から意見がもらえたことが大きい」と語る。

Brian Behlendorf氏
Brian Behlendorf氏

   またコミュニティが健全であることも成功した理由としてあげた。コミュニティが健全であれば、コミュニティは活性化し、結果としてハイクオリティなものができるという。

   Brian氏は健全なコミュニティの原則として表1の3つをあげる。

謙虚に相手の意見を聞くこと(Be humble)
例えばApache Avalonプロジェクトでは、中心になるデベロッパー同士のコミュニケーションが上手くいかず、サーバをシャットダウンするという残念な出来事があった。

透明性(Be transparent)
例えばコミュニティの中心人物であるデベロッパーが、ソフトウェアの方向性などについて討議する場合、同じオフィスにいたとしてもその討議をオンライン上で行うことで、情報を公開する。

エンドユーザを意識する(Think of the user community)
例えばMozilla Foundationでは、ノンテクニカルなユーザに対してフォーカスを当てている。プラグインの使い方や構築の仕方などに熱心に答えることで、ユーザとのコミュニケーションをはかっている。そうすることで、コミュニティが活性化していくという。

表1:コミュニティの3つの原則

   Brian氏はコミュニティの成功例としてLinuxをあげた。Linus氏は情報を公開することで誰にでもわかるようにしており、またコミッターの意見に上手に対応している。飛行機の例をあげ、「彼は管制官でコミッターは飛行機だ。彼はうまく飛行機を誘導している」と語る。

   しかしコミュニティ特有の問題もある。

法的問題
現在ASFではデベロッパーと契約書を結ぶことにしている。成果物はASFに帰属することを、デベロッパーの会社に承認してもらうことで、未然に防ぐ努力をしている。

正社員がいないという問題
例えばインフラについてだが、現在サーバがダウンした場合はボランティアによって解決している状態であるため、時間的な制約ができてしまう。

政府に対して提出する書類の問題
非営利団体として政府の認可を得るために、定期的に書類を提出する必要があり、その書類を作成する人員をどうするのか。

スピードの問題
コミュニティに参加している人によって、コミュニティに貢献できる時間の制約があり、開発やパッチの制作のスピードに差がでてしまう。

表2:コミュニティの問題点

   ASFは寄付で成り立っており、実際に多くの団体がソフトウェアやお金を寄付したいと申し出ている。しかしBrian氏は「ASFにとって最も価値のあるものは、コミュニティに参加しているデベロッパーの時間である」と語る。

   よく、ASFの方式はほかのコミュニティでもいかせるのかと聞かれるが、コミュニティにとって重要なことはコミュニティに参加しているユーザがオーナーシップを感じることだという。ソフトウェアは自分たちが制作していて、その方向性も自分たちで決定していくという意識がコミュニティの活性化へつながる。また、コミュニティ参加者の情熱も必要だという。

   Brian氏が新たに立ち上げたプロジェクトとしてSubversionがある。SubversionはCVSにかわるバージョン管理システムだ。Brian氏は「CVSをボルクスワーゲンに例えるなら、Subversionはモダンカーだ」と紹介した。

質疑応答に壇上から降りて答えるBrian氏
質疑応答に壇上から降りて答えるBrian氏

   質疑応答の法律と税金問題に対してBrian氏は「幸いなところASFは訴訟のケースはない」と語る。実際に過去のプロジェクトにおいて、ソフトウェアの一部に企業のテクノロジーが入っていた例をあげ、「Apacheに寄付してほしいと願い出たが、承認をいただけなかったので、そのプロジェクトをあきらめた」と述べ、訴訟につながる問題を回避している。現在、法律の問題に関してはボランティアの弁護士に相談している。

   また税金に関しては、アメリカの場合、非営利団体で収入の大半が個人の寄付であれば、税金は0円であり特に大きな問題ではない。

   最後に、ピザとビールを食べるまではここにいるので、皆さん一緒に語りましょうと述べ会場は賑やかな雰囲気に包まれた。