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株式会社 日立製作所
株式会社 日立製作所

「SOAの究極の目的はシステムをつくらないこと」 - HITACHI Open Middleware World 2005 Autumn開催

2005/11/29
21世紀型企業

   株式会社日立製作所は11月25日に「これからのビジネス革新を支える企業情報システムとは」と銘打った「HITACHI Open Middleware World 2005 Autumn」を開催した。日立製作所 代表執行役 執行役副社長 情報通信グループ グループ長 兼CEO 古川 一夫氏の開会の挨拶のあと、株式会社UFJ総合研究所理事長 多摩大学 学長 中谷 巌氏によって基調講演が行われた。

中谷 巌氏
中谷 巌氏

   基調講演で中谷氏は「21世紀型企業はどこが違うのか」というテーマの下、デル・ダイレクトやアスクルの成功例を紹介した。

   デル・ダイレクトについて中谷氏は「情報システムをモジュール化して徹底利用した」ことをあげた。これによってデル・ダイレクトの販売形態では在庫を抱えるリスクがなくなり、保管されていた在庫は「情報」として代替されたという。またすべて前金なのでキャッシュフローが安全という点もあげた。

   こうしたことからカスタマイゼーション(顧客主導)が可能となり、徹底したカスタマーサービスを行えるようになったという。

   一方のアスクルの例では、顧客とサプライヤーとの間で情報共有を行い、ロジスティック革命を起こした件をあげた。

   受注後の出庫まで15分という驚異的なビジネスモデルを実現させ、商品の斬新さではなく、戦略的情報システムの先進性で勝ち組になったと称えた。

   この2社のように、今までにないビジネスモデルで成功している企業こそが21世紀でも生き残っていける企業なのではないだろうか。

   また、中谷氏は神学的な考察として日欧米のブランド力の違いを説明した。「アメリカはヨーロッパと違って文化に縛られないので、インターネット産業が育みやすい」「日本はよいものは何でも受け入れ、よいものだけを取捨選択してきた。その感覚がきめ細やかなモノづくりを可能としている」と語り、精神面が企業に大きく影響を与えていることが伺える。


SOAの究極はつくらない開発

   株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部 Java/XMLソリューションセンタ シニアコンサルタント 工学博士 大場 みち子氏はSOAサービスについて「SOAの究極の目的はシステムをつくらないこと」と話を切り出した。

大場 みち子氏
大場 みち子氏

   現在、各種サービスは規制緩和により異業種も参入しやすくなり、IT技術の発達により各企業の特徴が差別化しにくくなっている。変化するビジネスで勝ち抜くにはナンバーワンにならなくてはならないという。

   そのような激変するビジネス環境について大場氏は、「企業は変化への即応、価値の創造が必須である。そのため、現場の意見を経営側にあげて現場にフィードバックするという、経営のPDCAサイクルを実現する必要がある」と解決策を示す。

ビジネスを取り巻く環境
図1:ビジネスを取り巻く環境
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)

   さらに大場氏は「このような外的変化(お客様からの要求)を迅速に経営へといかせるITインフラを実現するのがSOA」とし、続いてSOAの概要について説明した。その中でSOA適用のメリットやSOAを支える主な標準技術、EAIからSOAへのシステム連携技術の変遷について紹介した。

ITインフラへの要求を解決するSOA技術
図2:ITインフラへの要求を解決するSOA技術
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)

   システムの連携対象が「構築されているシステム」から「日々の業務としてのビジネス」に変化しており、EAIのように各社の独自技術を利用するのではなく、標準技術を利用することがSOAには必要であるという。

   システムの機能やスケーラビリティ確保が目的であるEAIを多くの企業が導入し、環境が整備されつつある。その資産をどういかすかが現在のビジネスを勝ち抜くキーワードではないのだろうか。

SOAでのサービスとは

   大場氏はSOAでのサービスを次のように定義した。

  • ある目的を実現する単位で、1つまたは複数のサービスからなる
  • 目的によってさまざまな粒度をもつ
  • サービスを組み立てる膠(にかわ)
  • 既存システムもサービスとして再利用可能
  • ビジネスプロセスを包含できる

表:SOAでのサービスの定義

   その上で大場氏は、「サービスを新たにつくるには、より再利用性の高いサービスと自由度の高いサービスをつくることが必要であり、そのためにもコンポーネント化したアプローチが有効」と述べた。

   サービスをビジネスプロセスに組み込むことでシステム開発の柔軟性を高め、パラメータによってビジネスプロセスの振る舞いの定義することで、システム開発のスピードを確保できる。

   以上のことを踏まえ、SOAのサービスは1から開発しなおすのではなく過去の資産が活用できるため、再利用性の高いシステムが実現できると大場氏はまとめた。