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株式会社テンアートニ
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オープンソースの知的財産トラブルを回避するソリューション「protexIP」 - その1

2005/12/14
ソフトウェア開発におけるオープンソースの普及

   株式会社テンアートニは2006年12月06日に、「ソースコードのIP(知的財産権)コンプライアンス管理」に関するセミナーを開催した。

   講師は株式会社イーエルティ 市場開発部 部長 江端 俊昭氏で、「GPL/OSS、リスク管理と品質評価の手引き」と題して講演を行った。

   はじめに「近年、組み込みソフトウェアの領域において、Linuxの普及度が高まっている」と江端氏は語り、組み込みの分野からオープンソース(以下、OSS)の知的財産についての現状を述べた。

   組み込み機器に搭載されているOSとしてはITORNが25.8%と依然多いが、以前よりも比率は下がっており、Linuxは13%と2番目のシェアで増加傾向にあるという。また、Linuxが普及している理由として、コスト面とソースコードの入手性があると述べた。


江端 俊昭氏
江端 俊昭氏


品質の向上と開発の形態

   現在、組み込み機器に搭載されるソフトウェアのソースコードの行数は、10万〜50万行未満が最も多く、平均でも99万行程度である。

   江端氏は、「日本においてソフトウェアの品質向上は最も重要視されており、次に開発期間の短縮と効率アップが求められている現状がある」といい、開発のライフサイクルは年々短くなり、多機能なものを短い時間で多く作るということが事業部の課題となっている現状を強調する。

   しかし、これらの要件を満たすには社内のリソースだけでは足りなく、開発の形態も共同開発やSIerに委託するなど様々である。そして開発環境にはインターネットの環境があり、様々なOSSの情報を利用しながら開発を行っているという。

   通常、成果物の権利は会社に帰属する。しかしOSSを利用すると成果物のすべてが企業の財産ではない。つまりOSSのライセンスが存在することを忘れてはいけないと江端氏は語る。


OSSのリスクと開発現場の実情

   江端氏はOSSに対する一般的な認識として、以下のような内容をあげる。

  • 複製、改変、配布が自由にできる
  • 無償で利用できる
  • GPLはソースコードを公開しなければならない(BSD、MIT、X11などのライセンスは公開が不要)。また、GPLのライセンスは作成したソフトウェアにも適用される
  • 無保証である

表1:OSSに対する認識

   「これらの文言は言葉的に正しいが、実際にその詳細を理解できているだろうか」と江端氏は語る。「OSSの場合には、規制やチェック機構がないためそのまま導入してしまう実情があるからだ」と述べた。

   確かにOSSにはパブリックドメインなものもあるが、ライセンスのあるOSSは基本的に著作権を放棄したわけではない。著作者の利用許諾の範囲内で使用できるということである。

   例えばBSDのライセンスには、改変を加えたソースコードを公開しなければならないという文言はない。しかし、改変を加えたソースコードを見せてほしいという要求があれば、見せなければいけないのである。つまり公開しなくてもよいが、見せなくてよいというわけではない。

   江端氏はOSSのリスクとして、大きく分けて以下の3点があるという。

ソフトウェアライセンスのリスク
正しいライセンス知識を持っているか。また、その使用目的を理解しているのか。
セキュリティに関わるリスク
OSS自体のプログラムコードにバグはどれほどあるのか。また、使用するOSS自体が他のライセンスを侵害していないか。
拙速性に関わるリスク
インターネット上に無償で公開されているので使用は容易だが、無秩序な管理になりかねない。

表2:OSSのリスク