クライアント型SOAが実現するBtoBクライアント
BtoBクライアントの手法と利点
ここで問題提起をします。
外部サーバと社内サーバとの業務連携を実現するために、なぜサーバ連携をしなくてはならないのでしょうか。
確かに理想を掲げて同じ業界内で統一されたデータフォーマットと業務プロセスで運営できれば、それは美しく素晴らしいでしょう。しかし先ほども述べ た通り同じ業界であっても、同じ商材を生業にしている競合同士および発注先であっても、データフォーマットおよび業務プロセスは微妙に違っています。その 違いが他社との差別化となり、運営され続けていることを考えればそんなに簡単に実現できるとは思いません。
業界全体として標準化を進めている方はすでに感じているかと思いますが、標準化を進めていても会社ごとに存在する「方言的な差異」が必ず存在し、それをなかなか払拭できないことが多いはずです。
そして標準化することとその方言の翻訳作業自体に膨大な時間がかかり、それが仮に実現できたとしても数年以上かかるなどの理由で結局時代遅れになってしまうことが多いように思います。
サーバ間接続のBtoBではなくBtoBクライアントのような社内外のサーバ処理を統合クライアントで実現できれば、そのような状況は避けられると考えております。
図4に記載されている通り、現存のWebEDIシステムのクライアントに社内サーバとの接続機能を統合(逆も真です)するだけで、WebEDIシステムの弱点だった人海戦術的な処理作業負担が軽減されます。
しかもこの形であればサーバ間接続を行わないため、業界標準的なプロトコルやプロセスを定義することなく実現できるのです。また業界標準の商取引手 順の実現時に必ず起こる業界ビックバン的な導入を行う必要もなく、BtoBクライアントを実現できる企業から順次展開することができます。
つまりBtoBクライアントの手法であれば、実現コスト・時間を大幅に短縮できるだけでなく、その実現性も容易であることが簡単に想像できます。も う1つ加えれば、業界標準プロトコルおよびプロセスの定義策定時に必ずでてくる「企業単位の方言」(この方言はその企業の競争力の差別化要素でもあるので す)をそのまま活かして実現できます。
一言でまとめるならば、「BtoBクライアントの手法であれば短期間かつ低コストで、業界BtoBシステムを参加企業の強みを活かしたまま順次実現できる最適解である」と考えています。
BtoBクライアントの実現ケース
ここまでお読みになった方々は「その実現ケースはあるのか」とお思いになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしそう思う方がいらっしゃれ ば、ぜひ本連載をさかのぼってもう一度お読みください。下記の連載では当社がすでに実現しているBtoBクライアントの実例が記載されております。
そもそもBtoBにおいて目指すべき状態とは企業間の電子商取引をスムーズに行うことであり、これはシステムを連携する方法をサーバtoサーバに限定したり、密結合をすることが目的ではないはずです。ぜひ今後のシステム構築の参考にしてください。
最後に
本連載ではクラ・ソア(クライアント型SOA)を理解していただくことを目的に執筆を進めましたが、一方でソリューションプロバイダ側の自社売上向上のための談合的な動きにもフォーカスを当ててきました。
どんなに時代が進化しても人間がシステムを作る世界が続く限り、なかなか自分が身を置いている側に不利なことはしたくないと思うのが人間であると思 います。世の中の主流のソリューションにはそれなりのメリットがあるとは思いますが、適所によってそれ以上のメリットを生み出すソリューションも存在しま す。
今までクライアントソリューションは社内サーバとセットで考えられるか、または小規模向けのスタンドアロンのシステムとしか考えられてきませんでし た。しかし現在ではネットワークがセキュリティとともに進化し、クライアントとサーバの疎結合的なソリューションが十分効果を発揮できる環境になってきた と思います。
近年、リッチクライアントソリューションベンダー各社がクラ・ソアと同じような内容の戦略を発表しています。今後は当社以外の事例もかなりでてくるのではないでしょうか。
皆様にはぜひこの新しい切り口であるクラ・ソアを各社の発表する内容と共に注目していただき、皆様のタイミングでより良いソリューションとしてご検討・ご採用いただければ幸いです。