エンタープライズサーバOS インタビュー

2007年4月1日(日)

エンタープライズサーバOS
— x86からメインフレームまで、同じSUSE LINUXが利用できるところに、市場的な意味がありますね。
 
古井氏   これに関しては、SUSE LINUXの「YaST」という管理ツールが非常に高い評価を受けています。あらゆるプラットフォームでも共通のGUIで操作できるため、極端な話、x86サーバを扱っていた管理者が次の日、メインフレームの管理を任されてもすぐに使える環境が実現できるわけです。これにより、将来的にSUSE LINUXを採用したサーバが増えてきたときに、プラットフォームによって管理者を分ける必要はなく、教育コストも削減できるなど、多くのメリットが考えられます。
 
岡本氏   SUSE LINUXでは、コモンコードベースによって、異機種間のソフトウェアの移植が容易になっています。業務アプリケーションを異なるプラットフォームに移植した際、実際のカットオーバーまで2カ月しかかからなかった事例もあります。
 
— ノベルには、デレクトリサービスの「eDirectory」、あるいはWebサービス統合プラットフォームの「exteNd」などがありますが、そうしたソフトウェア製品とSUSE LINUXについてどのような戦略を持っていますか。
 
古井氏   ノベルは、SUSE LINUXを買収する以前から、Linuxへの転向を進めてきました。ノベルのさまざまなサービスは、すでにLinux上で動作しています。ノベルというと、「NetWare」を連想する方も多いと思いますが、NetWareのファイルシステムをLinux上で動作させるための「Open Enterprise Server」という製品をまもなく出荷します。
 
ノベルでは、現在のエンタープライズシステムでサーバからワークステーションに至るまでのすべてをLinuxでサービスできるアプリケーションを提供していく考えです。
 
— 現在のエンタープライズサーバには、アプリケーションサーバやデータベースサーバのレイヤーがあります。アプリケーションサーバについてはexteNdがありますが、データベース分野などに今後進出する予定はありますか。
 
古井氏   データベース市場を見てみると、大規模システムでは信頼性や実績からオラクルが優位です。エッジ系ではオープンソースの「MySQL」「PostgreSQL」などでしょうか。ノベルのスタンスでは、必要なところに適切なアプリケーションを適応されることにあり、オープンソース、プロプラエタリィを問いません。また、オラクルとは強力なアライアンス関係があり、Oracle Databaseもいち早くSUSE LINUX Enterprise Server 9に対応しています。

 
ノベルは、外にあるものをどんどん買収してサーバをファット化することはありません。ソフトウェアベンダーの優れた技術とオープンソースの技術をコラボレーションして、一緒にビジネスをしていこうという戦略です。データベースだけではなく、アプリケーションサーバでも、ノベルはJBossだけをやるというのではなく、IBM WebSphereなど他のアプリケーションサーバを載せて提供することも考えています。お客様の選択、需要に応じて使っていけるものを提供していきます。
 
— セキュリティに関しては、EAL 3+を取得済みですね。

 
古井氏   SUSE LINUX Enterprise Server 9では、EALとしては実用上の最高ランクである4+の取得を申請中です。 このほか、信頼性を示すものとしてCGLなどもありますが、EALやGGLというのは、確実に外部から公平に評価していただき、お客様に採用していただく上でのひとつの基準だと思っています。

 
— オープンソース、オープンスタンダードについては、どのようなお考えですか。
 
古井氏   ノベルは、オープンソースのコミュニティとの付き合いがあり、開発した技術をオープンソースに公開したり、SUSE LINUXのFTP版を提供するなどの還元を行ったりしています。たとえば、OSDLのワークショップにも、ノベルのエンジニアを派遣しています。

 
オープンスタンダードについても、特にWebサービスやRFCなどの接続性の部分については、オープンスタンダードの採用に力を入れています。
 
— Windowsなどの他のOS、あるいはLinuxの中でも他のディストリビューションをどのように見ていますか。
 
古井氏   Windowsについては、SUSE LINUXへのマイグレーションを積極的に進めていきたいと考えています。Windowsでは、たとえばクライアントコンピュータのCALが必要であるなど、必ずしも投資効果の抑制にはつながっていません。


 
エンタープライズLinux市場を考えた場合、市場全体の規模はまだまだ増え続けています。今はまだシェアを考えるよりも、市場を拡大することを考えていきたいと思っています。他のディストリビューションについては、Red Hatが先行しており、覆すのは容易でありませんが、2005年度中にはエンタープライズLinux市場で20%程度のシェアを獲得し、将来的には60%のシェアを狙っています。
 
— ありがとうございました。
 

ノベル株式会社  古井 洋司
ロータス株式会社(現IBM)およびリアルネットワークス社にて製品企画担当としてデスクトップ製品およびインターネットマルチメディアソリューション等数多くの製品を手がける。現在ノベル株式会社においてLINUX製品および資産管理ソリューションZENWorks等のプロダクトマーケティングを担当。
 

ノベル株式会社  岡本 剛和
1994年にノベル株式会社に入社。以来開発部門に所属し、MacintoshやUNIXに対応した製品を主に担当。また、近年の多様な製品戦略により、TCP/IPなどのプロトコルスタックやPKIによるセキュリティ、J2EE、XMLなど、幅広く技術を習得。SUSE LINUX買収後は、いち早く独SUSE社開発陣との交流を図ったり、製品の日本語化、無料のFTP版配布のコーディネートなども行う。現在はSUSE LINUXを普及すべく、技術面全般を担当。
 

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