エンタープライズサーバOS インタビュー

2007年4月8日(日)

Windows Server
— 一方では、ミッションクリティカルな環境でWindowsは本当に大丈夫か、という意見も聞きます。
 
高沢氏    LinuxとWindowsを比べるとすれば、Windowsのほうがはるかに実績あります。Linuxは、カーネル2.6になってようやく一人前になりましたが、カーネル2.6にはどれだけの実績があるのでしょうか? 1993年に発売され、チューニングにチューニングを重ねて10年経って熟成されたWindowsと、ようやくエンタープライズサーバOSとしての機能が揃いましたというLinuxを比較して、どちらが安定していますかという質問は意味がないと思いますね。
 
   良い悪いと言う以前に、そこは正しく認識すべきだと思います。もっと冷静に見てください。「好き嫌い」を「良い悪い」という話にすり替えてしまうようなら間違った投資判断を自分の会社にさせることになりかねません。
 
— 続いて、ハードウェアに関してお伺いします。ハイエンドサーバを中心に64bit化が進んでいますが、Windows Serverの対応状況は?
 
高沢氏    64bit環境については、現在もItanium2に対応したバージョン(Windows Server 2003 for 64-Bit Itanium-based Systems)を提供しています。2005年上半期には、サービスパック1と同時に「Windows Server 2003 x64 Edition」を提供する予定です。これは、AMD OpteronやIntel Extended Memory 64 Technology(EM64T)機能を搭載したIntel Xeonなどの64bit拡張プロセッサ上で、64bitと32bitの両方のアプリケーションをネイティブに実行できるもの。このエディションによって、いわゆるIAサーバと言われる64bitハードウェアは完全にサポートされると考えています。    64bitサーバには、パフォーマンス、キャパシティの面で大きな恩恵があります。たとえば、Active Directoryのパフォーマンスもそうですし、Terminal Servicesの同時接続セッション数も大幅に拡大されます。x64 Editionでは、32bitアプリケーションも従来以上の高速化が見込めます。いいこと尽くめですね。
 
— 64bit化が早急に望まれている市場はあるのですか?
 
高沢氏    典型的なのは、大規模データベースを利用している領域です。たとえばデータが増加する一方のデータ・ウェアハウスのような場合、CPU負荷やメモリ要求は伸びる一方です。そういう場合でも、レスポンスを下げず、サービスレベルを下げずにキャパシティを確保するには、64bitプラットフォームが必然の選択になります。    あとは、サーバ統合の分野でも64bitは効いてくると思います。ネットワークが高速化し、遠隔地でもインターネットVPNや広域イーサネットを利用してすべてLAN環境並みとなる流れにあります。そういう環境になったとき、あちこちに部門サーバを配置する必要はありません。部門サーバの機能を持たせるにしても、物理的な配置はデータセンターに集約できます。
 

 
— ソフトウェアの面では、マイクロソフトは戦略的な製品展開をしていますね。
 
高沢氏    マイクロソフトのサーバ製品群は、Windows Server Systemとしてアピールしています。Windows Server Systemでは、コモン・エンジニアリング・クライテリアによって標準化された仕様・設計を採用しています。また、セキュリティに関するクライテリア、相互運用性、開発プラットフォームについても、汎用性を高めています。たとえば、XMLのようなオープンスタンダードの技術を取り入れ、オープンスタンダードを軸に標準化・共通化を積極的に進めています。
 
— セキュリティについての取り組みは?
 
高沢氏    Windows Serverでは、Windows Updateなどの機能を使って更新作業を確実に、タイムリーに行うことで、セキュリティレベルを継続的かつ持続的に維持し、高めています。今後はユーザーからの要望が多い、監査・監視の強化については、順次マイナーアップデートで対応していく予定です。
 
   もっと具体的なセキュリティ機能としては、たとえば無線LANが普及していますが、Windows Server 2003とWindows XPの組み合わせであれば、802.1xに準拠したセキュアなワイヤレスネットワークを標準で構築することができます。また、Windows Serverでは、一元的な認証基盤を別途セキュリティソフトウェアを組み込まなくても構築できます。これは複数のWindowsシステムを束ねられるだけでなく、異種プラットフォームやERPソフトウェアを含め、ユーザーの利便性とセキュリティレベルの強化を両立した統合的なIDマネージメントを実現できます。
 
— マイクロソフトのWebサイトには、対Linuxを意識したコンテンツがありますが、Linuxをどう見ていますか?
 
高沢氏    Linuxのディストリビュータとマイクロソフトの事業体制とはまったく異なります。サポートにしても、品質体制にしても、パートナーに対しても、顧客に対してもそうです。WindowsとLinuxとでは比較にならないので、いわゆる比較広告的なコンテンツは止めたいと考えていました。    けれども、いわゆる"風説"があって、どうやら言わないとわかってもらえないらしいということで、キャンペーンを行っています。ただし、両方を比較して、Windowsがいいということが目的ではなく、正しく冷静に判断してくださいという意味を込めています。ですから、コンテンツ中で提供している情報は第三者機関の出した客観的なデータやお客様の比較検討事例です。これらの考え方やフレームワークを参考にして、まずはお客様自身で自社なりの導入の尺度を作っていただくのが良いと思っています。誤った評価をされないことが今の最大の戦略だと考えています。
 
— 対商用UNIXについてはどう見ていますか?
 
高沢氏    端的に言えば、商用UNIXが評価されている部分は評価し、吸収できるものは吸収しようしようと考えています。基幹業務に求められる運用性には異なる視点があり、それに応えられるような拡張改造を行っています。たとえば、Windows Server 2003で拡張された機能では、コマンドラインによる管理、自動管理などが挙げられます。
 

 
   また、前述したように、物理パーティション、動的パーティションへの対応などは、数多く先達から学ぶ点があると意識しています。現時点で、いくつかの勝負では数字的に勝てますが、まだまだメインフレームやUNIXから学ぶ点も多いですね。それを学び、吸収して自社の強みに変えていきます。2005年のサービスパック1をはじめ、アップデートの中でキャッチアップできると考えています。
 
— ありがとうございました。
 

マイクロソフト株式会社  高沢 冬樹
大学卒業後、外資系大手コンピュータメーカにてシステムズエンジニアとして金融機関向けSI、ソリューションビジネスなどに従事。1994年、マイクロソフト株式会社に入社。インダストリーマーケティング、企業向けテクニカルマーケティング、E-Commerce製品マーケティングなどを経て、2001年より現職。
 

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