エンタープライズサーバOS インタビュー

2007年4月15日(日)


Solaris
— Solaris 10を無償で提供することになったのは、どのような経緯からでしょうか。
 
纐纈氏   たとえば、Googleのようなインターネット上でサービスを展開するサイトでは、ユーザーから利用料金を徴収することはありません。サービスの利用者に対価を求めるのではないのです。Solarisもそれと同様の考え方です。

 
— オープンソース化も検討しているようですね。

 
纐纈氏   サンはこれまでにも、数多くのテクノロジーをオープンソースのコミュニティに提供してきました。 Javaはもちろんのこと、デスクトップアプリケーションの「OpenOffice」などもオープンソースとして提供しています。Solaris 10をオープンソースにすることにより、もっと広く利用していただいて、Solarisの標準化を目指していきたいと考えています。

 
— セキュリティについては、どのように取り組んでいますか。

 
纐纈氏   Solaris 10には、データを破壊したり、システムを停止させたりするコンピュータウイルスなどの脅威に対して、ユーザーとプロセスの不正アクセスを防止するプロセ ス権限管理機能を標準で装備しています。この機能では、UNIXで最大権限を持つrootユーザーの権限を必要に応じてアクセス権限に分けることができま す。これにより、外部から侵入してきたコンピュータウイルスがrootユーザーになりすまして特権を持つことを防止します。

 
  また、サンではデータセンターのサーバでデスクトップの一切の処理を行うシンクライアントを提案 しています。クライアント端末の「Sun Ray」では、ユーザーを識別するICカードを挿入するだけで、どの場所の端末でも自分のデスクトップ環境を利用することができます。Sun Rayはコンピュータではなく、表示するディスプレイとキーボード、マウスを備えているだけなので、たとえばクライアントにUSBメモリを差して機密デー タを持ち出されたり、クライアントからコンピュータウイルスなどが侵入したりすることはありません。ネットワーク全体のセキュリティを考えたときに、これ 以上のソリューションはないでしょうね。

  なお、重要なセキュリティ問題を解決するセキュリティ修正モジュールに関しては、サブスクリプション・サービスを利用しないユーザーについても、無償で提供します。


 
— ハードウェアに関しては、最近、x86についても積極的に取り組んでいるように見えますが、どのような戦略を考えていますか。
 
纐纈氏   ハードウェアについては、われわれはSPARCのプロダクトラインがメインです。UltraSPARCをベースとしたアーキテクチャで、これから先もロードマップを持っています。プロセッサのテクノロジーは、企業にとってコアコンピタンスだと私は思うんです。

  いくつかの企業は、プロセッサの開発を中止したとたんにおかしくなっています。コアコンピタンスであるプロセッサテクノロジーは、コンピュータメー カーが絶対に捨ててはならないものだと思います。サンでは、SPARCのチップ、あるいはそれに対するテクノロジーは捨てられないものだと考えています。 そのために、将来もUltraSPARCのアーキテクチャをどんどん発展させていきます。

 
  そのSPARCは、基本的にスケーラビリティが求められる分野、たとえばマルチプロセッサなど によって高い性能が求められる領域に対しては、今後もSPARCが中心になると考えています。そうではなく、たとえばフロントエンドのエッジサーバのよう に、台数を展開しなくてはならない領域があります。そうした領域では、x86アーキテクチャのAMD Opteronベースのサーバを出していきたいと考えています。また、たとえばチェーン店のシステムのように、地理的に分散しているシステムも、 Opteronベースのサーバで展開していけるのではないかと考えています。
 
  Opteronベースのサーバの場合、SolarisとLinuxをどう棲み分けるかという問題 がありますが、パフォーマンス的にはSolarisの方がLinuxより有利です。また、これまでサンを利用してきたお客様にとっては、使い慣れていると いう意味でもSolarisの方がよいですよね。

 
— x86については、今後も継続的に提供していくのですね。

 
纐纈氏   これまで以上に、かなり力を入れて提供していきます。とりわけ、Opteronベースのプラットフォームとしては、Solarisが主流になるでしょう。サンのユーザーは、LinuxよりもSolarisを選択することが多いと思います。

 
— サンは、ハードウェアベンダーである一方でOSベンダーでもあるわけですが、OSベンダーとして他社のハードウェアはどのように見ていますか。
 
纐纈氏   OpteronやXeonなど、x86プラットフォームについては、Solarisのプラット フォームとして考えています。他社のハードウェアプラットフォームに対しては、当然、動作を検証する必要があります。これまでもx86向けの Solarisについては、ハードウェアコンパチリビティリストを出して動作を確認したハードウェアを公開していますが、今後もその延長上で行うことにな るでしょう。


 
— Solarisから見て、Windows、Linuxはどのような位置付けになりますか。
 
纐纈氏   マーケットは似ていますし、目指しているところも似ているとは思います。しかしまず、クライアン トについての考え方がまったく違います。サンでは、Sun Rayをクライアント向けに提案していますが、これは従来のPCアーキテクチャとは全く異なるものをクライアントに利用すると言う考え方であり、既存の PCをベースとしてテクノロジーを考えているベンダーにとっては、脅威のはずです。

  サーバ側については、比較的小規模のサーバではWindowsやLinuxとガチンコの戦いになってきているとは思います。ただし、サンは Solarisというオペレーティングシステムをある意味で違うカテゴリのOSだと考えているので、Solarisを理解してもらえれば、"戦いで"では なく、棲み分けていくことになると思っています。アプリケーションサーバの領域では、今後はコモディティ系のマーケットだけでなく、高い信頼性を求めるも のも出てくるでしょう。そうした明らかに目指しているものが違う部分では、棲み分けになると思います。

 
— どうもありがとうございました。
 

サン・マイクロシステムズ株式会社
纐纈 昌嗣(こうけつ まさつぐ)氏

大学院修了後、コンピュータメーカーにてミニコン、UNIX サーバのオペレーティングシステムの開発、事業提携、製品計画などに従事。1997年、サン・マイクロシステムズに入社。ソフトウェア、ストレージ、サー ビスの事業に従事。今年7月からプロダクトマーケティング全般を担当。

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