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企業IT動向調査2005
ユーザ企業におけるIT動向調査2005

第3回:ネットワーク技術とERPの導入動向
著者:日本情報システム・ユーザー協会   2005/8/17
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ネットワーク技術の導入

   新しいネットワーク関連の技術やサービスの導入状況として、今回は以下4つのサービスについての調査結果を紹介する。
ネットワーク関連技術・サービス導入状況
図1:ネットワーク関連技術・サービス導入状況
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

VoIP(Voice over IP)
IPネットワーク経由で音声情報を送受信するための技術

モバイル・セントレックス
携帯電話を企業の内線電話として利用するサービス

RF-ID(Radio Frequency Identification)
無線チップにより人やモノを識別・管理するしくみ

GPS(Global Positioning System)
人工衛星を利用してどこにいるのかを正確に割り出すシステム

表1:ネットワーク関連技術・サービス用語

   VoIPについては、「全社的に導入済み」と「一部セクションで導入済み」をあわせると3割が導入済みであり、さらに3割が「検討中」と、普及が進みつつあることがうかがえる。

   昨年と比較すると、「全社的に導入済み」と「一部のセクションで導入済み」の合計が、2003年度の21.2%から2004年度は30.6%と着実に増加している。特に従業員数1000人以上の大企業では、一部のセクションでの導入を含め半数近くの企業が導入しており、通信コスト削減策としても今や検討せざるを得ないものとなっている(図2)。

ネットワーク関連技術・サービス導入状況
図2:企業規模別VoIP導入状況
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   モバイル・セントレックス/RF-IDは、注目を浴び始めた新しいサービスであるが、それぞれ7.6%(72社)、2.5%(24社)の企業が、既に何らかの形で導入している。また、ともに2割の企業が導入にあたっての検討を開始しており、来年度はこれらの導入が加速することが予測される。

   GPSは、9割の企業で「計画なし」と、まだ利用範囲が限定されている(図1)。

   RF-IDは、現在の導入企業は24社(全体の2.5%)と少ないが、導入を「計画中」が19.4%と、今後の導入意欲の高さがうかがえる(図1)。


RF-IDの導入目的と課題

   導入済・導入を計画中という企業に、RF-ID利用の目的や期待、適用分野、導入にあたっての課題について、メールで追加のヒアリングを行ったところ、62社から回答が得られた。

   利用目的や適用分野としては、バーコードの代わりとして、RF-IDの非接触型であるというメリットを活かした在庫・物流管理等での作業負担軽減・効率化(36社)、データ収集のリアルタイム化や入力間違いなど精度向上(19社)を期待する企業が多い。

   しかしながら、この技術については、導入にあたって多くの課題がまだ残されている。

   「ICタグの価格がまだ高い」が28社、「設備・開発コストが高い」が12社などのコストの高さを課題とする企業が最も多いが、その他にもタグの読取精度・スピードを課題とする企業が15社、金属への添付・読取の難しさを指摘する企業が7社、読取距離を問題にする企業が6社と技術的課題が多く挙げられている。また、屋外での利用やリサイクルを前提としているため、耐久性や洗浄などの耐水性、耐熱性も課題として挙がっている。

   また、国際的な統一の規格・基準の早期実現を望む声も大きい(10社)。

   これらの課題は、関連業界・団体の努力がされているところであり、この1、2年で技術普及を後押ししていくものと期待されるが、技術を導入する企業側にも課題がある。「システム導入による現場の混乱」を心配する声が6社から挙がっており、現場の業務への影響度が高い技術であることの表れといえる。

   1社だけでなく、サプライチェーン全体を巻き込んでこそ効果が発揮される技術であり、企業や業界、国の枠を越えて、広く情報交換をしながらの対応策が期待される。

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書籍紹介
「企業IT動向調査報告書2005」

本連載は日本情報システム・ユーザー協会より発刊されている「企業IT動向調査報告書2005」をもとに記事を掲載しています。上記調査報告書には、さらに詳しいデータや分析結果、考察が記載されています。調査資料のご購入は下記のリンクより行えます。

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日本情報システム・ユーザー協会
著者プロフィール
日本情報システム・ユーザー協会
社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
ユーザーの立場からの産業情報化の推進を目的とし、大手ユーザー企業を中心に、約250社の会員を擁し、経営とITに関する様々なテーマや、立場に応じた40以上の委員会、研究会、研究プロジェクトを実施し、毎年、各種調査・研究報告書の刊行や、提言を行っている。1962年、日本データ・プロセシング協会として創立、1992年社団法人日本情報システム・ユーザー協会として、全面的に拡充改組。
http://www.juas.or.jp/


INDEX
第3回:ネットワーク技術とERPの導入動向
ネットワーク技術の導入
  システム構築におけるソフトウェア開発の方針とERPパッケージの採用
  保守価格の高さが課題