I/O仮想化技術の詳細

2010年7月12日(月)
尾方 一成

I/O仮想化とほかの仮想化技術との違い

仮想I/Oは、サーバーのI/Oニーズに合わせて設計されています。サーバー仮想化やストレージ仮想化と競合することはなく、これらの仮想化を補完する位置づけにあります。仮想化されたサーバー・リソースやストレージ・リソースを自由自在に接続する役目を果たします。

I/O仮想化は、サーバー仮想化ではありません
仮想I/Oは、アプリケーションやOS、サーバー仮想化ソフト(ハイパーバイザ)に対して、I/O接続(ネットワークとストレージへの接続)機能を提供するものであり、サーバーを仮想化するものではありません。
I/O仮想化は、ストレージ仮想化ではありません
仮想I/Oは、従来のHBA(Host Bus Adapter)とまったく同じ方法で、ストレージをサーバーに接続します。複数のディスクやストレージを束ねて仮想化するものではありません。

サーバー仮想化は、1台の物理サーバーを、複数の仮想サーバーから共有可能にする技術です。これと同様に、I/O仮想化は、物理I/Oカード、すなわちネットワーク接続用のNIC(Network Interface Card)やFC(Fibre Channel)ストレージ接続用のHBA(Host Bus Adapter)を、複数の仮想NICや仮想HBAから共有できるようにする技術です。

図1: I/O(ネットワーク接続、ストレージ接続)を仮想化する需要が高まる

I/O仮想化へのさまざまなアプローチ

"I/O仮想化"という技術は、まだそれほど認知されているわけではありません。特徴やニーズも、あまり知られてはいません。しかし、I/O仮想化は、ハードウエアに近い基盤技術として長い歴史を持っており、現在でも、ブレード・サーバーなどの最新プラットフォームに採用される形で、普及しつつあります。

現在のI/O仮想化技術は、ざっくりと4つに分類できます(図2)。ブレード・サーバー型、I/OをInfiniBandを介して集約する専用装置型、PCI Expressを延長して集約する専用装置型、1枚のアダプタ・カードにFCと次世代イーサネットを統合するFCoE、です。このうちの多くは、各サーバー・ベンダーのブレード・サーバー製品を補完する周辺製品として提供されています。

図2: I/O仮想化の手段はさまざま

XSIGOがInfiniBandを採用した理由

InfiniBand(IB)は、統合I/Oファブリック用の相互接続技術(スイッチ型のI/Oバス・アーキテクチャ)として、1999年に設計、標準化されました。主に、負荷分散クラスタリングにおけるサーバー間インターコネクトやストレージ接続などに用いられています。

昨今では、サーバー機の高性能化によって集約度が高まったサーバー仮想化環境のI/Oボトルネックを解決する手段として、InfiniBandでI/Oを統合するというシステム・アーキテクチャが注目を集めています。

InfiniBandの主な特徴は、以下の通りです。これらが、米Xsigo Systems(以下、XSIGO)がI/Oの統合にInfiniBandを選択した理由です。

InfiniBandの特徴

(a)広帯域、低遅延
InfiniBandは広帯域です。2010年現在、10Gビット/秒(bps)、20Gbps、40Gbpsの3つの帯域から選べます。2011年には、80Gbpsと100Gbpsの製品が登場する見込みです。さらに、InfiniBandは低遅延です。エンド・ポイントで1μs(マイクロ秒)以下、スイッチ・ホップで150ns(ナノ秒)以下です。さらに、安価です。InfiniBand用のアダプタ・カードやスイッチの価格は、Ethernet(イーサネット)のものと比べて数分の1です。
(b)フロー制御を備えた信頼性が高い伝送技術
InfiniBandは、フロー制御を備えた信頼性が高いリンク層とトランスポート層を提供します。チャネル・アーキテクチャの伝送方式を採用し、伝送機能をハードウエアに実装しています。データ伝送の処理負荷をオフロードできるため、ホストCPUは、必要なデータをメモリーに書き込んだら、あとは別のタスクに移行できます。フロー制御を必要とするFibre Channelの統合に適しています。
(c)高い可用性と拡張性
InfiniBandは、ループ・フリーのファブリックを容易に構築可能です。サブネット管理から各ノード間の帯域、ルーティング管理まで、すべて自動で制御します。さらに、数千ノードまでの拡張性があります(大規模クラスタ環境で実証されています)。スーパー・コンピュータの性能ランキング「TOP500」の100位にランク・インしているクラスタのうち、約7割がサーバー間接続にInfiniBandを採用しています。

InfiniBandは、I/Oファブリックに求められるこれらの要件を満たしており、今日では各サーバー・ベンダーから、ネットワーク・オプションの1つとして標準提供されています。データ・アクセス頻度が高いストレージ製品のクラスタ接続に使われたり、証券取引などの基幹アプリケーションで利用されたりと、多くの大規模環境で信頼性が実証されています。

図3: I/Oを統合するユニファイド・ファブリックの技術要件
シーゴシステムズ・ジャパン株式会社 代表取締役

国内システムインテグレータでの基幹システム開発エンジニアの経験を経て、その後米国通信機器ベンダーで営業・マーケティングを担当。2007年にシーゴシステムズ・ジャパンに入社し、現在に至る。Mr. I/O(Issei Ogata)として、「I/O仮想化」の普及に奔走する毎日。www.xsigo.co.jp/

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