ストレージ階層化で価格性能比を高める
EMC FASTの特徴と優位性
ここまでは、ストレージ階層化の効果について一般論を解説してきた。以降では、EMCが用意している具体的なストレージ自動階層化機能であるFASTについて、その特徴と優位性を解説する。
FASTは、サーバーに割り当てている論理ボリュームやHDDの単位で性能情報を収集し、この性能情報に従ってデータの移動先を決め、データ領域を移動する。利用する性能情報の例は、以下の通りである。
- 1秒あたりの平均I/O処理数
- I/Oのリード/ライト比率
- 平均ブロック・サイズ
- 1秒あたりの平均レスポンス・タイム
システムによっては、移動するか否かを事前に承認したい場合がある。また、移動時間帯に応じて移動先を制御させたい場合もある。FASTは、こうした要件に対応するため、以下の機能を備えている。
- 分析機能
- 論理ボリューム単位で、分析対象の日時、曜日、期間を設定する
- 移動機能
- 自動モードとユーザー承認モードを選択する
- 移動させる日時や曜日を設定する
- 1日あたりの移動回数を設定する
- 1回で移動可能な論理ボリュームの数を設定する
重要な業務であればあるほど、業務に影響を与えることなくデータ領域を移動できなければならない。大規模SANストレージのSymmetrix VMAXと、VMAX向けのFAST機能を組み合わせることで、こうした要件を満たすことが可能になる。VMAXが備えるきょう体内の世代スナップショット(TimeFinder)やリモート・レプリケーション(SRDF)などを利用しながら、FASTによって階層化を自動的に実施できる。
FASTの設定は簡単である。業務サーバーに割り当てたデータ領域に対し、物理リソースの割り当て比率を容量ベースで決めるだけでよい(図4)。
図4: FASTを適用/設定する手順 |
実際にFASTを設定して利用する手順は、以下の通りである。ここでは、SSD、FC(Fibre Channel)ディスク、SATAディスクを混在させた3階層のリソース・プールを想定する。
- 優先度の高いアプリケーション向けに、FASTのポリシーを作成する。ここでは、SSD領域からの割り当て比率を25%、FC領域からの割り当て比率を50%、SATA領域からの割り当て比率を25%とする。
- 作成したFASTのポリシーを、アプリケーション1に割り当てている論理ボリュームと関連付ける。
- 設定を反映させると、FASTは、あらかじめ定義した分析期間に応じて、業務サーバーからのI/O負荷を分析する。
- FASTは、収集した性能情報に従って、ポリシー設定通りの比率で、自動的に論理ボリュームを移動する。
- 移動後の結果を評価し、サービス・レベル(応答性能やトランザクション処理量など)が目標に到達していなかった場合は、SSD領域からの割り当て比率を増やすなどの見直しを行う。
図4で示した通り、FASTのポリシーは複数サーバーで共有することが可能である。個々のサーバーごとに異なる設定を用意する必要がない。開発環境などのようにストレージの性能をあまり必要としないサーバー向けには、SSDを使わずにFCとSATAの2階層のポリシーを割り当てる、といった設定も可能である。
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