仮想化技術のメリットとデメリット

2011年2月1日(火)
宮原 徹(みやはら とおる)

仮想化技術を活用して、古くなったサーバーを統合したり、新しいサーバー環境を構築したりすることは、ごく当たり前になってきた。しかし、仮想化環境の設計、構築についてのノウハウは、広く広まっているとは言えないのが実情だろう。本連載では、仮想化専門コンサルタントが実務で培った設計、構築のノウハウを、これから仮想化に取り組むエンジニアにも分かりやすく解説していく。

第1回の今回は、仮想化技術のメリットとデメリットについて解説する。

なぜメリットとデメリットを検討するのか

仮想化技術が広がり始めたばかりのころは「仮想化技術には、一体どのようなメリットとデメリットがあるのか」ということを、よく質問された。そのころに比べると現在では、仮想化技術のメリットとデメリットが知られるようになってきたと言える。しかし、注意しなければならないのは、メリットやデメリットというのは相対的なものであり、対象となるシステムによってはデメリットが大きくなることもあるということだ。

仮想化環境の設計構築にあたっては、メリットとデメリットを判断するための「物差し」を持って、あらかじめしっかりと損得を勘定しておく必要がある。

仮想化技術のための物差し

仮想化技術の得失を判断するための物差しは、大きく分けて2つに分類される。1つが「コスト」、もう1つが「機能」である。

コストの物差しは、さらに以下の3つに分けることができる。

導入コスト
システムを導入する際に直接支出されるコスト。ハードウエアのコストとソフトウエアのコスト、構築作業のコストの3つから成る。
ランニング・コスト
システムを動作させる際に直接支出されるコスト。電気代や設置する場所代などから成る。
管理コスト
システムを動作させる際に直接、または間接的に支出されるコスト。主に管理者などの人件費やサポート保守の費用から成る。

機能の物差しも、以下の3つに分けることができる。

拡張性
システムが成長し、リソースなどが不足した時に、どの程度拡張ができるか。また、拡張の際のコストや手間について検討する。
耐障害性
システムに障害が発生した際に、どの程度のダウンタイムが発生するか。また、復旧にどの程度のコストがかかるかについて検討する。
性能
要求される性能を満たすことができるかどうか。また、要求性能を満たす場合には、どれだけのコストをかけなければいけないのかを検討する。

機能の物差しについても、多分にコストがかかわってくる。この点については「そもそもの機能要求を満たせるか否か」「その要求を満足させる場合のコストはいくらか」の2点に分けて考えなければならない。

著者
宮原 徹(みやはら とおる)
日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長兼CEO

日本オラクルでLinux版Oracleのマーケティングに従事後、2001年に(株)びぎねっとを設立し、Linuxをはじめとするオープンソースの普及活動を積極的に行い、IPA「2008年度 OSS貢献者賞」を受賞。2006年に日本仮想化技術(株)を設立し、仮想化技術に関する情報発信とコンサルティングを行う。現在は主にエンタープライズ分野におけるプライベートクラウド構築や自動化、CI/CDなどの活用について調査・研究を行っている。

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