仮想化ホスティング基盤の構築を振り返る

2011年2月2日(水)
山田 敏博

以下では、技術面以外で苦労した点を紹介します。

エンジニア

仮想化に不安を持つのは、ユーザーだけではありませんでした。いや、むしろベテランのエンジニアの方が、さらに懐疑的だったと言えるでしょう。仮想化ビジネスを行うには、技術的な課題と戦うだけでなく、反対勢力の人たちとも戦う必要があったのです。今でこそ仮想化は一般的になりましたが、やはり、未知の世界にチャレンジする際には抵抗勢力があるものと思っておいたほうがよいでしょう。

こうした中で行き着いたのが、「仮想化ビジネスをやりたい人を選定する」という考え方です。自らリスクのある新しい領域にチャレンジしたいと思う人でないと、新規事業を軌道に乗せるのは難しいです。仮想化に対して「NO」という人には、昔ながらのビジネスで頑張ってもらえればよいのです。

SIer

次に困ったのが、SIerさんです。SIerさんは可能な限りリスクが少ない構成を考えてしまうので、コストは高くなりますし、新技術を選択することがとても難しくなります。

この対策としては、情報はSIerさんからもらうけれども、基本的な設計はITコア側で行い、問題が発生した時にはITコアの自己責任として考える、ということです。性能に問題が発生した時も、SIerさんに解決を求めるのではなく、解決するための知恵出しを手伝ってもらうだけにして、決断はあくまでもITコア側で行う、という姿勢が大事だと思います。こうした進め方に理解のあるSIerさんと付き合っています。

暴れん坊サーバー

仮想化ホスティングでは、さまざまな仮想サーバーが、同じ物理ホスト・サーバーに同居します。その中に暴れん坊のサーバーがいると、同居しているほかのサーバーに迷惑をかけることになります。仮想化ホスティングでは、「暴れん坊対策をどうするか」ということも、重要な課題となります。

第3世代の時には、ホスト・サーバーのメモリーは32GBになっており、1台のホスト・サーバー上に多くの仮想サーバーが稼働していました。ユーザーがこうした環境に慣れていなかったこともあり、非常に負荷の高いサーバーが紛れこんでしまうことがありました。このような時には、性能データを数値的に提示して、適切なサイジングを提案するようにしています。

図2: GrowServer第3世代のころの分析データ

図2: GrowServer第3世代のころの分析データ
当時はメモリーが高価だったため、メモリーの最適なサイジングが重要だった。アクセス量とメモリー量のバランスがとれていないサーバーは、どこかに高負荷を与えている可能性が大きい。

今回は、仮想化ホスティング事業における苦労の歴史を振り返りました。

次回は、仮想化におけるストレージについて、ITコアの経験と考察を解説します。

株式会社ITコア 代表取締役社長

富士通のSEからリクルートのシステム部門へ転職。リクルートを退職してITコア(当時の社名はテイルバック)を創業。技術計算から勘定系システムまで、ベンダーとユーザーの立場で幅広いコンピュータ経験を持つ。2004年から他社に先駆けてVMwareを使用した仮想化ホスティング・ビジネスを行っている。名古屋出身で名古屋大学工学部を卒業。

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