Kinectで距離カメラの値を取得して、指定した距離で人物が背景に溶け込むサンプル

2012年8月8日(水)
薬師寺 国安

※前ページからの続きです。

背景をマスクしプレイヤーだけが表示され、距離データが表示される処理

RGBカメラの1ラインあたりのバイト数を表すmyColorStride変数に、colorFrame.BytesPerPixel *colorFrame.Width と指定します。RGBカメラの1ピクセルあたりのバイト数を取得して、RGBカメラのフレームの幅に乗算します。RGBカメラの1ラインあたりのバイト数が取得できます。
32ビットを1バイト(8ビット)で除算すると4バイトとなり、それにcolorFrame.Widthの640を乗算します。4×640=2560となります。
直接この値を指定しても問題はありません。

また、Kinectセンサーの距離カメラのストリームフレーム幅と、RGBカメラのピクセルあたりのバイト数を取得するBytesPerPixelを乗算して、取得した距離カメラの1ラインあたりのストリームバイト数を変数myScreenImageStrideに格納しておきます。
これも640×4=2560となり、直接この値を指定しても問題ありません。次に、

  • Byte型の配列変数bytePlayer変数を距離カメラのフレームの高さ
  • Kinectセンサーの距離カメラのストリームフレーム幅
  • RGBカメラのピクセルあたりのバイト数を取得するBytesPerPixel

上記3つを乗算して取得した、距離カメラ1ラインあたりのストリームバイト数を保持しているmyScreenImageStrideで乗算した値で初期化します。
つまり、depthFrame.Heightの640に、myScreenImageStrideに設定した、DepthStream.FrameWidth*colorFrame.BytePerPixel(640×4バイト)の値である2560を乗算した、(640×2560)1638400-1の値で初期化されたバイト配列型のbytePlayerオブジェクトが作成されます。

CopyPixelDataToメソッドで、距離カメラのピクセルごとのデータを取得します。同様にRGBカメラのピクセルごとのデータも取得します。これで、実際のデータを取り出します。

繰り返し変数depthFrameDataで、0から距離カメラのフレームの高さ分反復処理を行います。反復処理内では以下の処理を行います。

myDepthPixelIndex変数に1ずつ加算される変数depthDataの値と、繰り返し変数depthFrameDataに距離カメラのフレーム幅(640)を乗算した値を加算して、格納しておきます。

Short型の配列で、myDepthPixelIndex変数に対応する値と、距離カメラのフレームデータから、PlayerIndexBitmaskでビットマスクに含まれているプレイヤーIDとで論理積演算を行います。
距離カメラのピクセルデータを反復処理し、プレイヤーのインデックス値を抽出します。

ビット演算 AND は、2 つのビットを比較し、両方のビットの値が 1 の場合にのみ、値 1 を結果に代入します。そうでない場合は、結果のビットに 0 をセットします。
AND 演算子は、その他すべてのビット演算子と同様、オペランドとして数値のみを取ります。And演算子に付いては下記のURLを参照してください。
→ And 演算子(msdn)

また、myPlayerIndex = myDepthPixelData(myDepthPixelIndex) And DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskでmyPlayerIndexに入る演算結果については、図2を参照してください。

RGBカメラのX-Y座標データを表すColorImagePointクラスのmyColorPointを宣言し、MapDepthToColorImagePointで、距離カメラの座標に対応する、RGBカメラの座標を取得します。
すると、深度情報を実画像に変換してくれます。書式は下記の通りです。

KinectSensor. MapDepthToColorImagePoint(距離カメラの フォーマット,距離カメラのX 座標,XとY座標の距離データ(Short型),RGBカメラのフォーマット)

変数myColorPixelIndexに、RGBカメラのX座標とRGBカメラのピクセルあたりのバイト数を取得して乗算し、RGBカメラのY座標とRGBカメラの1ラインあたりのバイト数を表すmyColorStrideを乗算して、これらを加算した値を格納しておきます。

プレイヤーが存在し、プレイヤーの深度データが必要な場合は、以下のように記述します。
playerDepth = myDepthPixelData(myDepthPixelIndex) >> DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth
そして、myDepthPixelData(myDepthPixelIndex) をDepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth 分右へシフトします。
つまり、3ビット(DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth分)右へシフトすると、プレイヤーの深度のデータだけを取得できるということです。深度のデータが2000(2m)より小さい場合は、プレイヤーを抽出します。

上記は、ビットシフト演算を使用しています。ビットシフトはその名の通り、ビット列をそのまま左右に移動させる演算です。

  • expression1 >> expression2
  • expression1

>> は expression1 を expression2 だけ右にシフトします

expression1 と expression2 には、それぞれ式を指定します。

ビットごとの右シフト演算子 (>>)やビットごとの左シフト演算子 (>>)については、下記のURLを参照してください。
ビットごとの右シフト演算子 (>>)
ビットごとの左シフト演算子 (

myColorPixelIndexに対応する、Byte型の配列変数であるRGBカメラの画像に、青、緑、赤、Alphaを指定していきます。32ビット(4バイト)分確保された配列で、最後の余った8ビット(1バイト)をAlphaチャネルに使用しています。

bytePlayer(myImageIndex + 3) = &HFFと指定しAlphaチャネルを指定することで背景が透明化されます。
変数depthDataを1ずつ加算し、myImageIndex変数にRGBカメラのピクセルあたりのバイト数を加算していきます。

myImageIndex = myImageIndex + colorFrame.BytesPerPixel は
myImageIndex = myImageIndex + 4 としても同じです。

BytesPerPixelは1ピクセルあたりのバイト数を取得しますので、1ピクセルは8ビットでフルカラーの場合は32ビットになるため、32÷8=4バイトとなり、colorFrame.BytesPerPixelは4と同じになります。

この値が、Byte型の配列変数のインデックスに対応します。下位3ビットのプレイヤーIDを指し示す値です。

WriteableBitmap型の変数PersonにWritePixelsメソッドで、ビットマップの指定した領域内に更新したデータを格納します。書式は下記の通りです。

WritePixels(更新するWriteableBitmapの四角形,ビットマップの更新に使用するピクセル配列,pixel内の更新領域のストライド,入力バッファのオフセット)

この値を戻り値としているPersonプロパティの値を、ImageコントロールのSourceプロパティにバインドします。

TextBlock内に深度データ(playerDepthの値)を表示します。

Private Sub AppearPLayer(colorFrame As ColorImageFrame, depthFrame As DepthImageFrame)
    If kinect Is Nothing = True OrElse depthFrame Is Nothing = True OrElse colorFrame Is Nothing = True Then
      Return
    End If
 
    Dim playerDepth As Integer = 0
 
    Dim myDepthPixelIndex As Integer = 0
    Dim myPlayerIndex As Integer = 0
    Dim myColorPixelIndex As Integer = 0
 
    Dim myColorStride As Integer = colorFrame.BytesPerPixel * colorFrame.Width
    Dim myScreenImageStride As Integer = kinect.DepthStream.FrameWidth * colorFrame.BytesPerPixel
 
    Dim myImageIndex As Integer = 0
  
    Dim bytePlayer As Byte() = New Byte(depthFrame.Height * myScreenImageStride - 1) {}
    depthFrame.CopyPixelDataTo(myDepthPixelData)
    colorFrame.CopyPixelDataTo(myColorPixelData)
 
    For depthFrameData As Integer = 0 To depthFrame.Height - 1
      Dim depthData As Integer = 0
      While depthData < depthFrame.Width
        myDepthPixelIndex = depthData + (depthFrameData * depthFrame.Width)
        myPlayerIndex = myDepthPixelData(myDepthPixelIndex) And DepthImageFrame.PlayerIndexBitmask
        Dim myColorPoint As ColorImagePoint = kinect.MapDepthToColorImagePoint(depthFrame.Format, depthData, depthFrameData, myDepthPixelData(myDepthPixelIndex), colorFrame.Format)
  
        myColorPixelIndex = (myColorPoint.X * colorFrame.BytesPerPixel) + (myColorPoint.Y * myColorStride)
        If myPlayerIndex <> 0 Then
          playerDepth = myDepthPixelData(myDepthPixelIndex) >> DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth
          If playerDepth < maxDepthValue Then
            bytePlayer(myImageIndex) = myColorPixelData(myColorPixelIndex)
            bytePlayer(myImageIndex + 1) = myColorPixelData(myColorPixelIndex + 1)
            bytePlayer(myImageIndex + 2) = myColorPixelData(myColorPixelIndex + 2)
            bytePlayer(myImageIndex + 3) = &HFF
          End If
        End If
        depthData = depthData + 1
        myImageIndex = myImageIndex + colorFrame.BytesPerPixel
      End While
    Next
 
    Person.WritePixels(myImageRect, bytePlayer, myScreenImageStride, 0)
    TextBlock1.Text = String.Format("深度={0}", playerDepth)
  End Sub

ウィンドウが閉じられた時の処理

Kinectセンサーが動作している場合は、Kinectの動作を停止し、リソースを開放します。

  Private Sub MainWindow_Closing(sender As Object, e As System.ComponentModel.CancelEventArgs) Handles Me.Closing
    If kinect Is Nothing = False Then
      If kinect.IsRunning = True Then
        kinect.Stop()
        kinect.Dispose()
      End If
    End If
  End Sub
End Class
図2:myPlayerIndexに格納されるAnd演算結果の例(クリックで拡大)

いかがでしたか。距離に応じて、自分の姿が消えたり現れたり出来れば今回のサンプルは成功です。

それでは、次回もお楽しみに。

  • Kinectで距離カメラの値を取得して、距離に応じて姿を隠すサンプル

薬師寺国安事務所

薬師寺国安事務所代表。Visual Basic プログラミングと、マイクロソフト系の技術をテーマとした、書籍や記事の執筆を行う。
1950年生まれ。事務系のサラリーマンだった40歳から趣味でプログラミングを始め、1996年より独学でActiveXに取り組む。1997年に薬師寺聖とコラボレーション・ユニット PROJECT KySS を結成。2003年よりフリーになり、PROJECT KySS の活動に本格的に参加、.NETやRIAに関する書籍や記事を多数執筆する傍ら、受託案件のプログラミングも手掛ける。Windows Phoneアプリ開発を経て、現在はWindows ストア アプリを多数公開中

Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。Microsoft MVP for Development Platforms - Windows Phone Development(Oct 2012-Sep 2013)。Microsoft MVP for Development Platforms - Client Development(Oct 2013-Sep 2014)。Microsoft MVP for Development Platforms-Windows Platform Development (Oct 2014-Sep 2015)。

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