人体の連続した動作を音声でキャプチャするKinectのサンプルプログラム

2012年9月21日(金)
薬師寺 国安

※前ページからの続きです。

RGBカメラ、距離カメラ、スケルトンを有効にし、各画像データを初期化する処理

DepthStream.Enableメソッドで距離カメラの表示サイズを640×480、1秒あたり30フレームで、動作を開始します。同様にColorStream.Enableメソッドで、RGBカメラを、RGBフォーマット、表示サイズ640×480、1秒あたり30フレームで、動作を開始します。プレイヤーおよびスケルトンの認識も開始します。

骨格生成を行う場合は、深度センサー(距離カメラ)を有効にする必要があります。Dim depthStream As DepthImageStream = Kinect.DepthStreamで、距離カメラの処理を行うクラスのインスタンスを取得します。Short配列変数myDepthPixelDataに距離カメラのピクセルデータのバイト長分の配列を作成します。640×480の表示サイズの場合は、myDepthPixelData=New Short(307200-1){}分の配列を確保することになります。-1しているのは配列のインデックスは0から始まるためです。

バイト配列変数myColorPixelDataにRGBカメラのピクセルデータのバイト長分の配列を作成します。

WriteableBitmapクラス型のRoom_Bitmapを下記の書式で初期化します。

New WriteableBitmap(距離カメラのフレーム幅,距離カメラのフレーム高さ, ビットマップの水平値, ビットマップの垂直値,ビットマップのピクセルフォーマット,ビットマップのビットマップパレット)

「ビットマップのピクセルフォーマット」には、PixelFormats.Bgra32を指定します。Bgra32 は、bits per pixel(BPP)が 32 の sRGB 形式です。各カラー チャネル(青、緑、赤、およびアルファ)に割り当てられるbits per pixel(BPP)は 8 です。ここに、Brg32を指定すると背景が透明化されず真っ黒になってしまいますので注意してください。

ここは、Room_Bitmap = New WriteableBitmap(640, 480, 96, 96, PixelFormats.Bgra32, Nothing)
と指定しても同じです。

同様に、Human1_bitmap、Human2_bitmapについてもWriteableBitmapの書式で初期化しておきます。
IntRect32構造体のmyScreenImageRectを下記の書式で初期化し、領域を指定します。

New IntRect32(新しいInt32Rect のインスタンスの X座標,新しいInt32Rect のインスタンスの Y座標, 四角形の幅を指定した新しい Int32Rect のインスタンスの幅, 四角形の高さを指定した新しい Int32Rect のインスタンスの高さ)

「新しいInt32Rect のインスタンスの X座標」と「新しいInt32Rect のインスタンスの Y座標」には0を指定します。「四角形の幅を指定した新しい Int32Rect のインスタンスの幅」には、Human2_bitmapオブジェクトの幅を指定し、「Int32Rect のインスタンスの高さ」には、Human2_bitmapオブジェクトの高さを指定します。

結局は、
myScreenImageRect = New Int32Rect(0, 0, 640, 480)
と指定しても同じことです。

Kinectセンサーを動作させます。

  Private Sub init_kinect()
    Try
      If Kinect Is Nothing Then
        Exit Sub
      End If
      Kinect.DepthStream.Enable(DepthImageFormat.Resolution640x480Fps30)
      Kinect.ColorStream.Enable(ColorImageFormat.RgbResolution640x480Fps30)
      Kinect.SkeletonStream.Enable()
 
      Dim depthStream = Kinect.DepthStream
      myDepthPixelData = New Short(Kinect.DepthStream.FramePixelDataLength - 1) {}
      myColorPixelData = New Byte(Kinect.ColorStream.FramePixelDataLength - 1) {}
 
      Room_Bitmap = New WriteableBitmap(depthStream.FrameWidth, depthStream.FrameHeight, 96, 96, PixelFormats.Bgra32, Nothing)
 
      Human1_bitmap = New WriteableBitmap(depthStream.FrameWidth, depthStream.FrameHeight, 96, 96, PixelFormats.Bgra32, Nothing)
      Human2_bitmap = New WriteableBitmap(depthStream.FrameWidth, depthStream.FrameHeight, 96, 96, PixelFormats.Bgra32, Nothing)
 
      myScreenImageRect = New Int32Rect(0, 0, CInt(Math.Ceiling(Human2_bitmap.Width)), CInt(Math.Ceiling(Human2_bitmap.Height)))
  Kinect.Start()
  Catch ex As Exception
  MessageBox.Show(ex.Message)
  Exit Sub
  End Try
  End Sub

Kinectの画像をビットマップデータに書き出す処理

RGBカメラの1ラインあたりのバイト数を表すcolorStride変数にcolorFrame.BytesPerPixel *colorFrame.Width と指定します。RGBカメラの1ピクセルあたりのバイト数を取得して、RGBカメラのフレームの幅に乗算します。RGBカメラの1ラインあたりのバイト数が取得できます。32ビットを1バイト(8ビット)で除算すると4バイトそれにcolorFrame.Widthの640を乗算します。4×640=2560となります。直接この値を指定しても問題はありません。

また、RGBカメラのピクセルあたりのバイト数を取得する、BytesPerPixelと、距離カメラのストリームフレーム幅とを乗算して(colorFrame.BytesPerPixel * depthFrame.Width)取得した距離カメラの1ラインあたりのストリームバイト数を、変数screenImageStrideに格納しておきます。これも4×640=2560となり、直接この値を指定しても問題ありません。

Byte型の配列変数bytePlayer2変数を、距離カメラのフレームの高さと、距離カメラの1ラインあたりのストリームバイト数を保持しているscreenImageStrideで乗算した値で初期化します。つまり、depthFrame.Heightの640に、screenImageStrideに設定した、colorFrame.BytesPerPixel * depthFrame.Width(4(バイト)×640)の値である2560を乗算した(640×2560)1638400-1の値で初期化されたバイト配列型のbytePlayer2オブジェクトが作成されます。

同様にbytePlayer1とbyteRoomバイト型配列変数も同じ値で初期化しておきます。

CopyPixelDataToメソッドで、距離カメラのピクセルごとのデータを取得します。同様にRGBカメラのピクセルごとのデータも取得します。CopyPixelDataToメソッドは、ピクセルデータの長さを使用して、事前に割り当てられた配列へ、ピクセルごとの深度データやRGBデータをコピーします。これで、実際のデータを取り出します。

繰り返し変数depthYで、0から距離カメラのフレームの高さ分反復処理を行います。反復処理内では以下の処理を行います。

depthPixelIndex変数に1ずつ加算される変数depthXの値と繰り返し変数depthYに距離カメラのフレーム幅(640)を乗算した値を加算して、格納しておきます。

init_kinectプロシージャ内で確保された、myDepthPixelDataのShort型の配列で、depthPixelIndex変数に対応する値と、距離カメラのフレームデータから、PlayerIndexBitmaskでビットマスクに含まれているプレイヤーIDとで論理積演算を行います。距離カメラのピクセルデータを反復処理し、プレイヤーのインデックス値を抽出します。

ビット演算 AND は、2 つのビットを比較し、両方のビットの値が 1 の場合にのみ、値 1 を結果に代入します。そうでない場合は、結果のビットに 0 をセットします。AND 演算子は、その他すべてのビット演算子と同様、オペランドとして数値のみをとります。And演算子に付いては下記のURLを参照してください。
→ And演算子(msdn)

RGBカメラのX-Y座標データを表すColorImagePointクラスのcolorPoint変数に、MapDepthToColorImagePointで、距離カメラの座標に対応する、RGBカメラの座標を取得します。深度情報を実画像に変換してくれます。書式は下記の通りです。

KinectSensor. MapDepthToColorImagePoint(距離カメラの フォーマット,距離カメラのX 座標,XとY座標の距離データ(Short型),RGBカメラのフォーマット)

変数colorPixelIndexに、RGBカメラのX座標とRGBカメラのピクセルあたりのバイト数を取得して乗算し、RGBカメラのY座標とRGBカメラの1ラインあたりのバイト数を表すcolorStrideを乗算して、これらを加算した値を格納しておきます。

プレイヤーが存在し、プレイヤーの深度データが必要な場合は、
depth = myDepthPixelData(depthPixelIndex) >> DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth
と記述して、
myDepthPixelData(depthPixelIndex) をDepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth
分、右へシフトします。

PlayerIndexBitmaskWidthフィールドは、プレイヤーインデックスビットマスク内の、幅またはビットの数を表します。これはプレイヤーインデックスを格納する深度データの下位ビットの数を表します。つまり、3ビット(DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth分)右へシフトするとプレイヤーの深度のデータだけを取得できます。上記は、ビットシフト演算を使用しています。ビットシフトはその名の通り、ビット列をそのまま左右に移動させる演算です。

  • expression1 >> expression2
  • expression1

>> は expression1 を expression2 だけ右にシフトします
expression1 と expression2 には、それぞれ式を指定します

ビットごとの右シフト演算子 (>>)やビットごとの左シフト演算子 (>>)については、下記のURLを参照してください。

変数depthXを1ずつ加算し、ImageIndex変数にRGBカメラのピクセルあたりのバイト数を加算していきます。

ImageIndex = ImageIndex + colorFrame.BytesPerPixel は
ImageIndex = ImageIndex + 4 としても同じです。

BytesPerPixelは1ピクセルあたりのバイト数を取得しますので、1ピクセルは8ビットでフルカラーの場合は32ビットになるため、32÷8=4バイトとなり、colorFrame.BytesPerPixelは4と同じになります。

この値が、Byte型の配列変数(bytePlayer1、bytePlayer2、byteRoom)のインデックスに対応します。ImageIndexに対応する、Byte型の配列変数である距離データを画像化していきます。下位3ビットのプレイヤーIDを指し示す値です。

深度に応じて書き込み先を変更していきます。プレイヤーが存在し、深度のデータが2000(2m)より大きい場合は、プレイヤーを奥側へ描画します。深度のデータが2000(2m)より小さかった場合は、手前に描画します。プレイヤー以外は背景イメージに描画します。このサンプルでは、personImageというCanvasを基準に、personImageより後ろに、または前に表示されることになります。

  • bytePlayer1(ImageIndex + 3) = &HFF
  • bytePlayer2(ImageIndex + 3) = &HFF
  • byteRoom(ImageIndex + 3) = &HFF

上記3つのコードはAlphaを指定しているコードです。PixelFormats.Bgra32と指定していましたので、32ビット中、残りの8ビットをAlphaに使用して背景を透明化しています。

WriteableBitmap型の変数Human1_bitmapにWritePixelsメソッドで、byteからビットマップへ書き出します。ビットマップの指定した領域内のピクセルを更新します。書式は下記の通りです。このHuman1_bitmapプロパティの値を、Nameがhuman_image1という、ImageコントロールのSourceプロパティにバインドします。

WritePixels(更新するWriteableBitmapの四角形,ビットマップの更新に使用するピクセル配列,pixel内の更新領域のストライド,入力バッファのオフセット)

同様に、Human2_bitmap、Room_Bitmapに関してもWritePixelsメソッドを適用し、byteからビットマップへ書き出します。これらのプロパティをImageコントロールのSourceプロパティにバインドします。

  Private Sub RenderScreen(colorFrame As ColorImageFrame, depthFrame As DepthImageFrame)
    If Kinect Is Nothing OrElse depthFrame Is Nothing OrElse colorFrame Is Nothing Then
      Return
    End If
    Dim depth As Integer = 0
    Dim depthPixelIndex As Integer
    Dim playerIndex As Integer
    Dim colorPixelIndex As Integer
 
    Dim colorPoint As ColorImagePoint
    Dim colorStride As Integer = colorFrame.BytesPerPixel * colorFrame.Width
 
    Dim screenImageStride As Integer = Kinect.DepthStream.FrameWidth * colorFrame.BytesPerPixel
    Dim ImageIndex As Integer = 0
  
    Dim bytePlayer2 As Byte() = New Byte(depthFrame.Height * screenImageStride - 1) {}
    Dim bytePlayer1 As Byte() = New Byte(depthFrame.Height * screenImageStride - 1) {}
    Dim byteRoom As Byte() = New Byte(depthFrame.Height * screenImageStride - 1) {}
 
    depthFrame.CopyPixelDataTo(myDepthPixelData)
    colorFrame.CopyPixelDataTo(myColorPixelData)
 
    For depthY As Integer = 0 To depthFrame.Height - 1
      Dim depthX As Integer = 0
      While depthX < depthFrame.Width
        depthPixelIndex = depthX + (depthY * depthFrame.Width)
        playerIndex = myDepthPixelData(depthPixelIndex) And DepthImageFrame.PlayerIndexBitmask
 
        colorPoint = Kinect.MapDepthToColorImagePoint(depthFrame.Format, depthX, depthY, myDepthPixelData(depthPixelIndex), colorFrame.Format)
        colorPixelIndex = (colorPoint.X * colorFrame.BytesPerPixel) + (colorPoint.Y * colorStride)
 
        If playerIndex <> 0 Then
          depth = myDepthPixelData(depthPixelIndex) >> DepthImageFrame.PlayerIndexBitmaskWidth 
          If depth > targetDepth Then
            bytePlayer1(ImageIndex) = myColorPixelData(colorPixelIndex)
            'Blue 
            bytePlayer1(ImageIndex + 1) = myColorPixelData(colorPixelIndex + 1)
            'Green
            bytePlayer1(ImageIndex + 2) = myColorPixelData(colorPixelIndex + 2)
            'Red
            'Alpha
            bytePlayer1(ImageIndex + 3) = &HFF
          Else
            bytePlayer2(ImageIndex) = myColorPixelData(colorPixelIndex)
            'Blue 
            bytePlayer2(ImageIndex + 1) = myColorPixelData(colorPixelIndex + 1)
            'Green
            bytePlayer2(ImageIndex + 2) = myColorPixelData(colorPixelIndex + 2)
            'Red
            'Alpha
            bytePlayer2(ImageIndex + 3) = &HFF
          End If
        Else
          byteRoom(ImageIndex) = myColorPixelData(colorPixelIndex)
          'Blue 
          byteRoom(ImageIndex + 1) = myColorPixelData(colorPixelIndex + 1)
          'Green
          byteRoom(ImageIndex + 2) = myColorPixelData(colorPixelIndex + 2)
          'Red
          'Alpha
          byteRoom(ImageIndex + 3) = &HFF
        End If
        depthX = depthX + 1
        ImageIndex = ImageIndex + colorFrame.BytesPerPixel
      End While
    Next
 
    Human1_bitmap.WritePixels(myScreenImageRect, bytePlayer1, screenImageStride, 0)
    Human2_bitmap.WritePixels(myScreenImageRect, bytePlayer2, screenImageStride, 0)
    Room_Bitmap.WritePixels(myScreenImageRect, byteRoom, screenImageStride, 0)
  End Sub

ウィンドウが閉じられる時の処理

Kinectセンサーが動作している場合は、動作を停止し、音声認識も停止します。最後にKinectセンサーのリソースを解放します。

  Private Sub MainWindow_Closing(sender As Object, e As System.ComponentModel.CancelEventArgs) Handles Me.Closing
    If Kinect Is Nothing = False Then
      If Kinect.IsRunning = True Then
        Kinect.Stop()
        engine.RecognizeAsyncStop()
        Kinect.Dispose()
      End If
    End If
  End Sub
End Class

以上で今回のサンプルは終了です。

  • Kinectセンサーによる音声でのモーションキャプチャのサンプル

薬師寺国安事務所

薬師寺国安事務所代表。Visual Basic プログラミングと、マイクロソフト系の技術をテーマとした、書籍や記事の執筆を行う。
1950年生まれ。事務系のサラリーマンだった40歳から趣味でプログラミングを始め、1996年より独学でActiveXに取り組む。1997年に薬師寺聖とコラボレーション・ユニット PROJECT KySS を結成。2003年よりフリーになり、PROJECT KySS の活動に本格的に参加、.NETやRIAに関する書籍や記事を多数執筆する傍ら、受託案件のプログラミングも手掛ける。Windows Phoneアプリ開発を経て、現在はWindows ストア アプリを多数公開中

Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。Microsoft MVP for Development Platforms - Windows Phone Development(Oct 2012-Sep 2013)。Microsoft MVP for Development Platforms - Client Development(Oct 2013-Sep 2014)。Microsoft MVP for Development Platforms-Windows Platform Development (Oct 2014-Sep 2015)。

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