ビジネスUXを効果的に導入するための4つのステップとは?

2013年6月6日(木)
崔 仁熙(チェ インヒ)

段階別の主要なアクティビティ

今回のコラムでは、全体プロセスにおける26個のアクティビティの中で特に主要なアクティビティを中心に簡単に説明します。

STEP.1:Understanding -理解

この段階は、WBS→Risk Assessment→クライアントの教育→ドメイン/プロセスの理解→UXの要件整理→システム環境の理解→画面分析書→As-Is UTの8段階に分けられています。各段階を以下で説明します。

(1)WBS(Work Breakdown Structure, 作業分類体系)

WBSとは、プロジェクトのプランを策定する根幹であり、全体のプロジェクト骨子になります。PMI(Project Management Institute:米国プロジェクトマネジメント協会)でも、WBSを"プロジェクトの要素である成果物中心の分類体系でプロジェクトの全体の範囲を設定して定めるもの"と定義しています。
WBSはすべてのプロジェクト参加者がプロジェクトの範囲と全体像を理解するために使用される共通の基準として定義されています。

図2:WBS(Work Breakdown Structure)(クリックで拡大)

(2)Risk Assessment(プロジェクトリスクの事前評価)

Risk Assessmentは、本格的なプロジェクトを立ち上げるために、プロジェクト進行プロセスにおいて予想されるリスクを収集、整理したテンプレートに、各項目別に重要度とスコアを追記した、プロジェクト全体を評価するリスクマネジメントのためのプロセスです。
テンプレートのリスク要因は、大別して「クライアントの構造」、「クライアントのUX」、「プロジェクト遂行の力量」、「顧客との契約内容」、「要件変更リスク」などがあります。

(3)クライアントの教育

この段階ではRisk Assessmentドキュメントによる把握したプロジェクト、クライアントの状況をもとに、クライアントに合う教育を決定します。Risk Assessmentによってクライアントが直面している内部的な状況を理解できた場合、これをもとにUXに関する概念と事例をクライアントに理解させます。クライアントへの教育を通じてこのプロジェクトが進行する方向にクライアントを説得する過程も含まれることもあります。
教育方法は、クライアントの状況(現状)をもとに最適なUX基礎教育とUXプロジェクトの成功事例と失敗事例、他企業への訪問など、多様な形で進めることができます。この時、どのような教育を選択するかは、UX Decision-Treeをもとに決定することになります。

図3:クライアントにUXの重要性を理解してもらう

(4)UXの要件整理(クライアントが求めているのが何なのか、何が問題なのかを把握)

プロジェクト序盤に確認するクライアントの要件は、整理されていないケースが多いです。経営者の要望や、現場担当者の業務改善やシステム機能の追加など様々な要求事項が出てきます。一般的には、クライアントが提供するRFP(提案依頼書)に書かれているはずですが、多くの中堅クライアントでは社内協議により要件を導き出しており、UXの観点で整理されていないことが多いのです。
実際のプロジェクトでは、クライアントが真に要求する要件を正確な分析と判断で整理する必要があります。できればRFPを作成する段階で、UXの専門家を招いて、クライアントが要求するものは何かを確認することが最良だと考えています。

STEP.2 : Research -調査

この段階はリサーチプラン→インタビュー/モニタリング→ログ分析→EJM→リサーチ結果書の5段階に大別されています。

(1)インタビュー/モニタリング

この段階ではユーザーのニーズを反映したUXコンセプトを導き出すことを行います。ここでは以下の事項に注意してほしいです。

インタビュアーが守るべきこと

- インタビュー対象者がインタビュアーの質問を理解し、これを考える時間を十分に与えなければならないと考えています(休憩のない質問、インタビュアーの主張が含まれた言動などは特に避けるべきです)。

- 偏った質問をしてはいけません。偏った質問は、インタビュー対象者の答えに大きな 影響を与えるため、場合によってはクライアントの真意とは違う回答を導き出してしまう場合もあります。例えば、「ログイン画面が気に入りましたか?」という質問は不適切であり、「ログイン画面をどう思いますか?」といったような客観的な質問が合っています。

- ユーザーが使い慣れた用語を用い、一つの質問を一つの問いに限定し簡単で分かりやすい文章の質問をすることが大事です。

-意味が明確な言葉を採用し、多様な解釈を避け、専門用語、俗語、略語を使用してはいけません。それは正確な理解を妨げることになります。

- インタビュー対象者の答えを偏るように誘導したり、対象者の意見ではないことを選択するように強要してはいけません。

図4:ユーザーのニーズを導き出すためのインタビュー

(2)EJM(Emotional Journey Map)

ここではUXの感情をマッピングし、ユーザーの感情の変化やタッチポイント、インタラクションなどから問題点を見つけ出します。そのために以下の2点を実施します。

1. サービスの全体的なユーザー体験を把握します。単にサービスを利用する時のプロセスではなく、利用前/利用中/利用後の体験についても取り上げ、サービスの全体的なユーザー体験を知ることができるようにする。

2. どのような体験から、ユーザーの気持ちが悪くなるのか、また良くなるのかを把握する。肯定的な感情と否定的な感情をすべて整理することで、ユーザーの感情の変化を見ることができるようになります。

著者
崔 仁熙(チェ インヒ)
株式会社トゥービーソフトジャパン UXデザイナー

 

1980年08年30日、韓国生まれ。子供の頃から絵を描くのが得意で、大学でビジュアルデザインを専攻。01年からUIデザイナーとしてモバイルのコンテンツ、ゲームのキャラクターやGUI、フラッシュアニメなどを製作。07年には日本で早稲田外語専門学校を卒業。日本のモバイル系の会社に勤め、08年からトゥービーソフト(韓国)に入社して企業向けのUIを専門的にデザインしている。10年、アカデミーJUNGLEでUXバイブル課程を修了。ビジネスUI・UXを専門分野にして活動。
13年から日本法人に転職。昨年からトゥービーソフトとソウル学校UXラボの共同研究により、企業向けのUX方法論(TUM)が製作され、それをベースに日本のITシステムに合う方法論(プロセス)と活用し易いUIコンテンツを研究している。

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