100Gイーサネット回線とは - 1G/10Gイーサネットとの違い -

2013年9月4日(水)
中島 英規田中 雄作

第1回では、イーサネットの現在までの歴史と、近年のトラフィック需要の増加、及びその課題について紹介しました。2回目となる今回は、100Gイーサネット回線の技術的な詳細と、100G移行に向けて必要な条件や課題などを解説します。

100Gイーサネット回線とは:1G/10Gイーサネットとの違い

100Gイーサネットとは、10Gイーサネットの10倍の速度でイーサネットフレームを送る技術です。イーサネットにおける通信の基本単位であるイーサネットフレームは10Gと100Gのいずれの場合も同じです。
10Gイーサネットでは1秒間に100億回もの光のOn/Off(点滅)でイーサネットフレームを送っていますが、100Gイーサネットでこれをさらに10倍にしようとすると、光ファイバーの中で、それまでは問題でなかった事象が不都合となってきます。ノイズの影響が10倍増え、点滅の明瞭さは100分の1に減り、さらには距離が延びるにつれて光ファイバーの真円からのわずかな誤差までも問題となります。
そこで、100Gビットイーサネットではこれらの特性が問題とならないように、並列伝送を用いて点滅回数を上げないようにしています。また、長距離伝送では、従来のような光の点滅を光信号の送受信に用いるのではなく、光の波としての位相を活用して光信号の送受信に用いるデジタルコヒーレント(補正)技術を用いることにより10G伝送を上回る性能を実現しています。

100Gイーサネットインターフェースで主流となるタイプには、100GBASE-SR10と100GBASE-LR4があります。10Gイーサネットと同様に、SRは短距離・短波長(0.85 μ帯)を、LRは長距離・長波長(1.3μ帯)を示し、SRに続く10は送受信10本ずつの並列伝送、LRに続く4は4本ずつの並列伝送を示しています。

表1:CFPモジュールの種類と特徴(クリックで拡大)

技術詳細:100Gイーサネット内容の詳細

インターフェース

機器間の接続用に標準として考案されているインターフェースの事例を上表に示します。機器間接続としては、同一フロア内での接続、同一データセンター内での接続、大規模データセンター内での接続、事業所間での接続が想定されています。

標準にはIEEE 802.3baによる国際標準と、データセンターでの接続に焦点をあてたIEEEに準拠しない独自規格である10x10MSAによる規格があります。

IEEEのSR10はラック内や、中規模程度(~50,000 sqft/460sqm)までのフロア内接続に適用可能なコストを重視したインターフェース仕様で、100Gbpsの信号列を10本の10Gbps信号列に分割し、波長多重を使用せず、短波長の面発光レーザVCSEL(ビクセル:Vertical Cavity Surface Emitting LASER、垂直共振器面発光レーザ)やマルチモードファイバーのリボンケーブル(24心)、マルチコアコネクタ(MPO)を使用してコストダウンを図っています。適用距離は100m程度です。

IEEEのLR4はより大規模なデータセンター内の接続を可能とするインターフェース仕様です。100Gbpsの信号列を4本の25Gbps信号列に分割し、1.3マイクロ帯の波長多重(CWDM)を使用することにより、送受信それぞれ1心のシングルモードファイバーで100Gイーサネット信号の転送を可能としています。
適用距離は2kmまでとなり、大概の既設シングルモードファイバー配線設備をそのまま使用可能で、運用性は10GBASE-LRと遜色ないレベルとなっています。現状25Gbpsの信号処理のチップが高額なためコスト高となっていますが、チップ供給者の増加や実現・生産技術の進歩により低コスト化が期待されるインターフェースです。

10x10MSAでは構内接続での運用性をIEEE 100GBASE-LR4のコストダウンを待たずに実現しようとするもので、SR10のVCSELの代わりにCWDMを使用したものです。上下方向各1心のファイバーと一般的なコネクタ(SCやLC)を使用して、到達距離を2km、10km、及び40kmで選択可能としています。
データセンター内で接続を考慮したときに、IEEEでSR1の適用範囲として想定する50,000sqft/460sqmのフロアでも、長方形のフロア形状であれば容易に上限距離に達してしまうこと、また、当初の需要は大規模データセンターに多いことから、今まさに需要が来ています。

これらのインターフェースは標準のパッケージ(CFP)で提供されており、マザーボード側のインターフェース(CAUI)、MDI(ファイバータイプ、コネクタ形状等の物理インターフェース規格)はIEEE 100GBASE-LR4と同一のため、将来LR4のコスト低減が実現されたときの切り替えは容易です。

並列(マルチレーン)伝送

前述のように、MACフレームは10Gイーサネットも100Gイーサネットでも同じ、さらには64B/66Bで符号変換されるところまでは同じです。その後100Gイーサネットでは点滅の回数を増やさないまたは最小限にできるよう、複数のレーンに分割して伝送する方式がとられています。

100Gイーサネットでは64B/66B符号変換されたMACフレームは、ビット毎に順番に20の並列信号列(レーン)に分割されます。ここで各レーンには、100Gイーサネットで新たに考案されたレーンマーカーが16384ビット毎に追加されます。このレーンマーカーは、送受信回路にてレーン間の遅延(スキュー)補正を厳格に行わなくても、受信再生後に論理的に遅延補正を可能とします。
さらには、送受信回路にてレーンの順番を厳格に決めなくても元通りの信号列に再生することを可能にしています。前述のように、100Gイーサネットの物理インターフェースでは25Gを4レーン、または10Gを10レーン使用するインターフェースが提案されており、4と10の最小公倍数の20が内部の並列信号列数として採用されています。

図1:マルチレーン伝送のしくみ(クリックで拡大)
KVH株式会社

KVH株式会社 システム&テクノロジー本部 ネットワークストラテジー&アーキテクチャ部 エキスパート。入社以来、レイヤ1-2を主としたネットワークサービス開発に従事。これまで、メトロWDMおよびイーサネットプラットフォーム導入と基盤ネットワーク構築、各種ネットワークサービス開発を行う。現在は、伝達レイヤの統合化および開発に取り組んでいる。

KVH株式会社

KVH株式会社 事業開発本部 スペシャリスト。2003年入社以来、金融系顧客をターゲットとした低遅延イーサネット回線、広域イーサネットのサービス開発業務、ならびに国内外のネットワーク展開プロジェクトに従事。現在は専用線、イーサネット回線、VPNサービスのプロダクトマネージャーを務める。

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