次世代データセンターのロードマップ
スループット/帯域への要求が高まる
次世代データセンターを利用するアプリケーションの立場から見ると、ネットワーク技術/システム接続技術への要求は、複合的な要素からなるシステム全体のスループット(ネットワークが低遅延であることが重要)と、システム接続/通信のデータ転送速度(ネットワークが広帯域であることが重要)、以上の2つが代表的である。
システムを高スループット化するための方法はいくつかあるが、ネットワークや接続技術に求められるのは、まずは遅延時間が短いことである。例えば、データベース・システムの場合、テーブルや行のロック処理を軽減することが必要になるため、ノード間でロック情報を共有するための低遅延なネットワークが重要になる。
サーバー間接続のためのインター・コネクト技術は、現状ではIBが主流となっている。今後は、Ethernetでも100ns(ナノ秒)単位の遅延を実現できるようになる見込みがあるため、“RDMA over Ethernet”も実用化されることだろう。
次世代データセンターにおいて広帯域を要求する代表的なアプリケーションは、稼働中の仮想サーバーを物理サーバーから別の物理サーバーへと移動させるライブ・マイグレーションである。同機能の代表的な存在が、米VMware製品が備えるVMotion機能である。
仮想サーバーが物理サーバー間を移動するということは、仮想サーバーのメモリ空間をネットワーク経由で転送することになる。すべてのメモリ空間を送るわけではないにせよ、仮想サーバーには数Gバイト単位のメモリが割り当てられているため、Gigabit Ethernetを使っても10秒以上の転送時間がかかってしまう(米VMwareでは、VMotionを担うVMkernelの通信用にGigabit Ethernetの専用ネットワークを構築することを推奨している)。
このような大容量のデータ転送が頻ぱんにあるネットワークでは、輻輳(ふくそう)が発生しうる。Ethernetファブリック内における輻輳制御などの技術も開発中だが、本質的に輻輳を解消するには、より広帯域なネットワーク技術を用いるか、ファブリックを別に構築するよりほかはない。
このように、データセンター・ネットワークでは、広帯域化への要求は非常に大きい。
基盤を構成するネットワーク・インテリジェンスの高速化
Brocadeは、システムに関連するさまざまなインテリジェント(付加価値)・サービスにも注目している。例えば、ネットワーク分野ではファイアウォールやロード・バランサなどのインテリジェント・サービスを用意しており、ストレージ分野では格納データの暗号化やストレージ間データ・コピー機能などを提供している。
これらの機能は現在、サーバー機や専用機器などのハードウエア装置によって実現されているが、この一方で、CPUの高性能化/マルチコア化という背景の下、これまで物理的なアプライアンスとして提供してきた製品を仮想アプライアンスの形態で提供するベンダーも登場している。
ただし、仮想アプライアンスは無駄が多い。Brocadeのアプローチは、仮想アプライアンスではなく、高性能/低消費電力の専用ハードウエアを用いるというものである。仮想サーバーの稼働プラットフォームとなるCPUコアは、本来の用途である業務アプリケーションの仮想サーバーに割り当てるべきである。これが、データセンター全体のコストを低減させることになる。
実例を挙げると、Brocadeのロード・バランサ「ServerIron ADX 10000」では、レイヤー4のトランザクション当たりのコストは0.20ドルであり、レイヤー7のトランザクションでも競合製品の半分以下である。高スループット化のためにはコネクションを受けるエンジンを多数配置するのが重要だが、ADX 10000では10Gbps Ethernetインタフェースを複数備えるだけでなく、処理のためのプロセッサも複数実装している。
ストレージに関連する付加機能も、Brocadeではハードウエアで実現している。
例えば、「Brocade Encryption Switch」(BES)は、ストレージに格納するデータやテープに書き込むデータを暗号化/復号する装置である。暗号化時の帯域は96Gbpsと高性能であり、消費電力も350Wと低い。別の例では、「Data Migration Manager」は、ストレージ間でデータを移行するためのコピー装置である。ストレージの性能にも依存するが、1時間当たり5Tバイトをコピーできる。消費電力は250Wと低い。
次ページでは、仮想化環境の効率を高める方法の1つである、アダプタの仮想化とネットワーク・カードの付加機能について解説する。