「AIの未来は自動化にある」と語るDataRobotのCEO

2017年12月12日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
人工知能のベンチャーであるDatRobotが同社初のカンファレンスを開催。CEOやデータサイエンティスト、顧客などが登壇し、さまざまなセッションを行った。

人工知能のベンチャーであるDataRobotが、同社初のカンファレンス「DataRobot AI Experience Tokyo 2017」を2017年11月9日に都内にて開催。CEOやデータサイエンティスト、同社の顧客などが登壇し、人工知能の未来やDataRobotのユースケースなどについてセッションを行った。この記事ではDataRobotのCEOによるプレゼンテーション、同社チーフデータサイエンティストであるシバタアキラ氏のプレゼンテーションなどを紹介する。

最初に登壇したのは、DataRobotのCEOであるJeremy Achin氏だ。

DataRobotのCEO、Jeremy Achin氏

DataRobotのCEO、Jeremy Achin氏

Achin氏は、まず電気自動車メーカーテスラのイーロン・マスク氏のコメント「企業が人工知能を活用するかしないかで、その企業の将来が決まる」を紹介し、「ビジネスの中に人工知能を組み込むことが、すべての企業にとって必要である」と語った。

イーロン・マスク氏のコメントを紹介

イーロン・マスク氏のコメントを紹介

そして昨今の人工知能ブームについて「人工知能」「機械学習」「深層学習」「データサイエンス」などの用語の使われ方が間違っていると指摘した。つまり大きく人工知能の枠の中に機械学習と深層学習があるという説明よりも、機械学習と深層学習についてはタスクによって使い分けるべきであるという説明を紹介した。以下に示したスライドでは、ルールベースのシステムも解説されており、過去の人工知能ブームの時にもてはやされたルールベースのエキスパートシステムもまだ利用分野がある、ということをほのめかしていたのかもしれない。

従来の人工知能の説明

従来の人工知能の説明

人工知能は「知能が必要なタスクをこなせるシステム」というAchin氏の定義

人工知能は「知能が必要なタスクをこなせるシステム」というAchin氏の定義

そしてオライリーのAI Conferenceでも絶大な人気であったトップデータサイエンティストで、Stanfordで人工知能に関わり、GoogleやBaiduでも人工知能のプロジェクトをリードしたアンドリュー・エン氏のコメントを紹介。ここではAchin氏が尊敬するエン氏のコメントを借りて、現状の人工知能に関する見解を述べたということだろう。

特に興味深かったのは「現時点で人工知能によって得られる価値の95%は深層学習ではない教師ありの機械学習」であるという部分と、最後の「コグニティブ・コンピューティングはIBMによるマーケティングであり、この言葉を使う人は信頼できない」という部分だ。

コグニティブ・コンピューティングはIBMの宣伝文句であるとバッサリ

コグニティブ・コンピューティングはIBMの宣伝文句であるとバッサリ

特にIBMのコグニティブ・コンピューティングについてはAI Conferenceでもほぼスルーされていたように、人工知能の専門家界隈ではIBMのマーケティングとしか見られていないということが浮き彫りになった一幕であった。

またここ数年で持ち上げられるようになったデータサイエンティストについても、ビジネスの知識、コードを書く能力、統計に関する知識と理解が求められることから「実際にデータサイエンティストという肩書が付いていても使えない人材が多い」ことを指摘。以下のスライドでは青い字で書かれた部分、すなわち「コードを書く能力」が現在のデータサイエンティストには圧倒的に不足していると強調した。

データサイエンティストに求められる能力とは?

データサイエンティストに求められる能力とは?

そこから、将来に渡るデータサイエンティストの不足という事態を解消するために、DataRobotを作ったと解説した。Achin氏が強調したデータサイエンティストがコードを書く部分を、DataRobotが自動化するというのが同社のミッションであるというわけだ。

DataRobotを作った理由

DataRobotを作った理由

そしてこれからの人工知能を実現するためにどのような競争相手がいるのか? に関しては、Amazon、Google、Microsoft、Facebook、Appleなどを挙げ、どの企業も人工知能は副業であり、エンタープライズ向けの人工知能を実現できるのはDataRobotだけだと語った。

各社とも人工知能は副業であると言及

各社とも人工知能は副業であると言及

最後にAchin氏は、ソフトバンクの孫正義氏に向けたオープンレターを紹介した。これは「DataRobotには大きな計画がある、そのためには助けが必要」というスライドに続いて語られた内容だ。ソフトバンクのように巨大であるにも関わらず、ベンチャーのように迅速な意思決定ができる企業に対し、DataRobotが大いなる尊敬の念を抱いているということを見せた瞬間であった。

DataRobotの大きな計画とは

DataRobotの大きな計画とは

孫正義氏に向けたラブレターか?

孫正義氏に向けたラブレターか?

Achin氏のプレゼンテーションに続いて、Accentureの工藤卓哉氏によるプレゼンテーション、さらにDataRobotのユーザーである大阪ガスの河本薫氏による事例紹介、そしてチーフデータサイエンティストであるシバタアキラ氏によるDataRobotの紹介とデモが行われた。

大阪ガスでは専門家の知見とデータサイエンスを併用している

大阪ガスでは専門家の知見とデータサイエンスを併用している

大阪ガスの事例は故障診断、異常検知、故障予知、異常監視などに人工知能を活用しているというものだった。ここでは故障診断と故障予知に、DataRobotを利用しているという。Achin氏のプレゼンテーションで「ルールベースシステムもまだ使いようがある」というような内容があったのは、大阪ガスに対する配慮だったのかもしれない。

最後に登場したシバタアキラ氏は、実際にデモンストレーションを行いながらDataRobotの概要を紹介した。特にKaggle(投稿されたデータに対する最適モデルを競い合うサイト)で上位に入るような世界トップのデータサイエンティストが日々開発する新しいモデルが、Workerという形ですぐに試せることを強調し、「人工知能の民主化」を掲げるDataRobotの最も得意とする場面を解説した。

DataRobotのコンソール

DataRobotのコンソール

また最新バージョンである4.0の概要についても紹介された。ここでも常に開発が進み、進化していることが強調されている。

バージョン4.0の機能を紹介するシバタ氏

バージョン4.0の機能を紹介するシバタ氏

DataRobotは、世界中の人工知能の専門家が作る様々なモデルを簡単な操作で実行できる部分が特徴であり、いわゆる「モデル」の性能を競い合っている他社とは違うことを強調したプレゼンテーションであった。GUIからの実行だけではなく、既存システムに組み込むことができるコードも生成できる辺りが最大の差別化だろう。

ちなみに2017年3月には、日本法人にもインタビューを行っている。以下の記事を参考にされたい。

参考:「AIの民主化」を掲げるDataRobot、日本での活動を本格化

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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