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IBM、サムスンが取り組む セキュリティを確保するブロックチェーン技術とは

2018年1月15日(月)
ReadWrite Japan

2006年に出版されたSFスリラーのデジャヴで、Denzel Washingtonは時空を巻き戻す技術を使い、過去に遡ってテロリストの攻撃を防ぐ政府のエージェントを演じた。これはデジャヴのクリエイティブな解釈であり、彼が演じたキャラクターは言うまでもなくテクノロジーを良いことのみに使っている。時空を曲げて過去を再現するというアイデアはSFの中だけの話だが、この作品は政府が監査や査察を行う上での倫理について重要な問いかけがなされている。今日において特に顕在化していることだ。

我々の時代のテクノロジーの進歩において、IoTは生活を最も大きく変えるものとしてその存在を確立している。IoTはいってみれば、既存のデバイスがインターネットに繋がるようになることでデータの送受信を行い、それぞれが独立して動けるようになることだ。スマートデバイスと呼ばれるものもますますポピュラーなものになって来ている。数十億のデバイスがインターネットに繋がっており、Gartnerの予想では2020年までにその数は20億以上になるという。スマートホームから自動運転車まですべてにこれは当てはまる。これまで私たちが普通だと思っていたものが、IoTが関わらなくては普通でなくなっているのだ。

残念なことに、これらデバイスと、それが生み出すデータのすべては政府にとって情報の宝庫である。Shay HershkovitzはWiredでハッキリ次のように書いている。「諜報機関にとってWebはこれまでに無くありがたいものではないかと思える節がある」私たちはインターネットを利用し、ウェブサーフィンができるという割りに合わない見返りと引き換えに、自ら企業や政府に個人情報を提供する場となっている。

IoTの場合この点は顕著である。デバイスは常に情報を発信し続け、集められたデータは思いもつかない方法で利用される。元国家情報長官のJames Clapperは議員証言の場で、「将来、情報機関はIoTを人物特定や調査、監視、居場所の追跡、人材調達、ネットワークへのアクセスやユーザーの認証情報の入手に利用することも考えられる」と述べている。

隠し事をする必要がない人にとっても、これは懸念せざるを得ない発言だ。あらゆるデータがIoTでシェアされるというのは、監視プログラムが時空を超えて過去を繰り返す程の力を得るにほとんど等しい。

だが良いことに、仮想通貨を安全なものにするだけでなく、プライバシーとセキュリティが守られた形でIoTが進化するためのソリューションを提示できる非集権的台帳システム、ブロックチェーンの開発が進んでいるところだ。

ネットワークを非集権的にするブロックチェーン

IoTのユニークかつ明確な特徴の一つに、全てのデバイスがインターネットを通じて情報をやり取りするという点がある。すぐそばに置かれたデバイス同士ですら相当な距離があるインターネットインフラを介して通信している。デバイスの通信は中央のサーバによるクラウドサービスを経由することから、そこが攻撃や監視を行いやすいポイントであることは明らかである。

ブロックチェーンは中心を持たない台帳システムであり、ネットワーク上に分散しているコンピュータ間の情報をやり取りし、全員のコンセンサスに基づくアルゴリズムで動いている。IBMは同社のビジネス製品にこれを活用している。ポイントは、ビジネスパートナー同士が中央集権的なサーバを使わずにIoTデータの供給およびアクセスが行えるところだ。

更にDeloitteによれば、IBMはSamsungと協力してEthereumブロックチェーンを使って、IoTの技術面及び安全面の向上を図るための実証実験を行ったという。その製品はVerizon Communicationの投資部門であるVerizon Venturesが行う取引を安全なものにし、非集権的な方法による安全面の向上は期待通りの結果を出したという。

ブロックチェーンが実現するトークン化された情報

ブロックチェーンは当初ビットコインの開発者が銀行などの中間者抜きで取引を成立させるために生まれたものだ。これまでのところ非常にうまくいっており、同じコンセプトはIoTにも応用可能なものである。IoTがらみのユニークなトークンが生まれれば、個人個人が自身の重要な情報を晒すことなくそのエコシステムに関わることができるようになる。さまざまな意味でトークン化された情報は利便性とプライバシーの完璧なバランスを成立させるものだ。結局のところ人々の使い方に適合しないのであれば、IoTは使わなければならない理由もない。この場合、トークンは個人情報の代わりになるものとして機能する。よってIoTで個人情報を晒すことなくやり取りすることが可能となる。皮肉な話だが個人情報を守る上でこれがポイントとなる。

ブロックチェーンは改竄できない

政府が監視を行う上で最も問題視されることは、彼らがその活動を秘匿することができるということだ。Edward Snowdenのような啓蒙者の登場や偶発的に起こる政府のデータベースのハッキングがなければ、我々はその監視活動についてまず知ることができない。ブロックチェーンは記録がアクティブに行われ、それが改竄させえることがない透明性の高いフレームワークを提供する。

ブロックチェーンの透明性はプラットフォームの信頼性の証であり、ユーザーのデータが正確で、改竄されず安全に保たれることを保証する。IoTの開発スピードに陰りは見られない、今後にもいい傾向だ。ブロックチェーンの活用でIoTは政府の一般的な監視手段になる前にユーザーのプライバシーを守ることができるようになる。

残念なことに監視プログラムはときおり映画デジャヴのようにドラマティックな役割を演じることがある。事実、IoTでこのことが軽んじられれば、すでにインターネットに見られるようにプライバシーが侵害され、悪い方のデジャヴが起こりうるだろう。

REUBEN JACKSON
[原文4]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
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