OpenStack Days Tokyo 2015、キーノートから見える今後の行く先

2015年2月16日(月)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

プライベートクラウドのインフラ構築を可能にするOpenStack、既に多くのベンダーやユーザーがこのバンドワゴンに乗り込んできていまや混雑過剰とでも言える状況だ。そんな人気のなか、2015年2月3、4日に東京にて「OpenStack Days Tokyo 2015」が開催された。

まずは基調講演としてOpenStack FoundationのCOO、マーク・コリヤー氏の講演から紹介しよう。

まず冒頭から過去5年の歩みを紹介。最初のサミットでは25名しか参加者がおらず、実際にOpenStackを使っていたユーザーもゼロだったが、それからOpenStackは凄まじく開発者や利用者が増え、現在に至ることを解説した。

OpenStackFoundationのマーク・コリヤー氏

ここでOpenStackのミッションステートメントを提示して、参加者にその意味を強調した。つまりOpenStackのコンセプトは「巨大なスケールに拡張でき、かつシンプルに実装が可能なパブリックとプライベートの両方のクラウド環境で使えるオープンソースによるユビキタスなプラットフォームを作ること」である。スライドの中では「巨大なスケール」「シンプルな実装」「パブリックとプライベートの両方」「ユビキタス」などの単語がボールドで表示され、そのポイントが理解しやすくなっている。

OpenStackのミッションステートメント

更にコンピュートモジュールであるNovaを中心にした複数のモジュールがOpenStackを構成していることを再度確認した上で、Database-as-a-ServiceであるTroveやDNSモジュールであるDesignateなどを紹介し、実際にOpenStackのモジュールが次々に登場していることを紹介。それらのモジュールに対して如何に品質を上げていくか、迅速に開発を進めていくか、がこれからの課題だと紹介したうえで2015年の注力ポイントを掲げた。

2015 OpenStack Foundation Initiatives

ここで様々なモジュールについてはあまり深く言及せずに中心のモジュールであるNovaとそれを支えるコアのモジュールについてUpstreamリリースにおけるテストを倍増し、より信頼性を高めることを約束。その上で安定板リリースであるDownstreamについて各モジュール間のインターオペラビリティを重要視し、今後開発される様々なモジュールやアプリケーションについてその互換性については「OpenStack MatketPlace」で公開していくことを提示した。更にドキュメンテーションについては言及し、今のままでは使いづらいというフィードバックを元に再度デザインをやり直すことを説明した。そしてNFVに代表されるワーキンググループの開設についてもユーザーからのフィードバックを受けてプロジェクトに還元するための仕組みつくりを紹介した。これは既にOpenStack Foundationの中でTelecoワーキンググループとして2014年から活動が始まっている。

https://wiki.openstack.org/wiki/TelcoWorkingGroup

このプレゼンテーションからは今後益々増加する機能モジュールとそれを独自にパッケージングするベンダーの動きをFoundationとしても支援しながらも、実装が難しいというユーザーからのフィードバックを元にモジュール間やリリースにおける相互運用性を確保しながらも、マーケットプレイスや新たなドキュメントなどにおいて透明度を高めることを狙っていると思われる。

Red HatやSUSE、Canonicalなどのオープンソフト系のベンダーからVMwareやHPなどによる独自のディストリビューション、更にJuniper、A10 Networks、Big Switch Networksなどのネットワークベンダーによるモジュール、PistonやMirantisなどの新興のベンダーによるサービスまで拡がった「OpenStackエコシステム」を拡大させつつ、ユーザーにとっての利便性を損なわない配慮が見て取れるプレゼンテーションであった。

最後に半年に一度行われるOpenStack Summitについても紹介。前回のパリのサミットが大成功であったことを説明し、次は5月のバンクーバー、そして10月の東京であることを紹介した。さらにNECがバンクーバーのサミットのプレミアスポンサーとして確定したことを紹介して、次のセッションの日本電気(NEC)にエールを送った形でプレゼンテーションを終えた。

今回、NECはダイヤモンドスポンサーとしてこのイベントを支援したわけだが、バンクーバーで開かれるOpenStack Summitのプレミアスポンサーとしてもイベントをサポートすることになる。初日のOpenStack FoundationのCOOの後に講演を行っただけではなくイベント会場内の小規模なセッション会場でNEC社員によるOpenStack関連のセッションが終日設けられ、NECのOpenStackに賭ける意思が伝わってきた内容となった。セッションをリードするのはNECのソフトウェア技術統括本部技術主幹の高橋千恵子氏だ。

NECのOpenStack開発コミュニティ活動

また5名のコアコントリビュータとNECの情報子会社であるNESの九州支社におけるDevOps基盤であるe-NAVIGATORを紹介し、これまでの本社及びR&D部門以外にもOpenStackの応用が拡がっていることを解説した。

e-NAVIGATORサービス基盤(DevOps)

またNECが特に力を入れているNFVに関しても第一キャリアサービス事業部部長の新井智也氏が登壇し、NECのNFVに対する力の入れようを強調した。

NECのNFV活動事例

今回、イベント期間中にNECのOpenStackコアコントリビュータの数名と個別にインタビューする機会を得た。そのインタビューについては別途記事化を予定しているので期待して頂きたい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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