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フィットネスウェアラブルは正しいユーザーに買われていない—だがこれは変えられる

2015年10月21日(水)
ReadWrite Japan

ゲスト執筆者のケリー・マクマスターはPerformance Labの共同設立者であり、戦略担当だ。

フィットネスウェアラブルが掲げている事は、主に運動や睡眠の不足に着目する事による人々の健康の向上だ。しかし蓋を開けてみれば、メインターゲットに絞り込んでいたような不健康な人達に受け入れられているという状況ではない。

Ipsosが行った調査では、54歳以上のアメリカ人のうち、ウェアラブルの購入を12ヶ月以内に考えているのはたったの11%に過ぎず、これとは別にNPDグループが行った調査でも、54歳以上でウェアラブルを使っているのは1/4以下だった。またフィットネストラッカーを使っている人の41%は年収10万ドル以上稼いでおり、彼らの主な層は、34-54歳で健康ではあるものの、体調の事を気にし出した人達であることがわかった。

つまりメインユーザーはいわゆる3W(worried, wealthy, and well, 健康を気にしており、高収入で健康体)に分類される人達であり、不健康な人達ではないという事だ。後者はこの技術で健康状態の大きな改善が見込まれていた層である。

データとソーシャル機能だけでは不十分

健康管理を数値化するにあたって、データは我々を救うものだ。しかしわずかなエリートを除く多くの人たちは、それらデータに面食らい、何をしたらいいのか分からなくなる。

私は長年、健康面のコンサルタント業をやっているが、スポーツウォッチが出す数字の意味を知りたいが為にやってきた人は覚えきれないくらいいた。更に悪い事には、PWCが明らかにしたことによれば消費者のうち86%もの人たちがウェアラブル技術は自分たちをプライバシーやセキュリティーの危険に晒すと考えているという事だ。

健康管理における「救世主」と目されていたもう一つの要素が、ポジティブなソーシャルの圧力だ。このアプローチにより、トレーニングの結果を家族や友人とシェアする事で、ゴールを目指すモチベーションを生むことになると思っていた。目的達成をシェアすることで喜びを得、友人の進歩からインスパイアされるだろうと考えていたのだ。

この点についてもPWCのリサーチにより実情が明らかになった。米国人の中でトレーニングの成果をシェアしたいと考えている人は1/4以下でしかなく、友人とシェアしたいと考えている人は更に少ないことがわかった。南国の浜で休日を楽しく過ごす人たちがおかしなくらい写真をシェアしたがるのと同様、減量の成果や自己最高記録をシェアしたがる人たちは健康で鍛えられている人たちだ。SNSに溢れかえっているフィードは、彼らソーシャル面でのサポートを必要としない人々によるものであり、サポートを必要としている人々が発信しているものは、Candy Crushの招待である。

では多くの人の健康に役立つ為に、ウェアラブルをどう使えばいいのか?データが急速に拡大しているターゲットとなる市場に情報の専門家はおらず、ターゲットユーザーにSNSの圧力は効かないとなると、我々がとり得る手段は何なのだろうか?

よりスマートなフィットネスデバイスへ

これは常識だが、もし人がある特定の行動を取る事で報酬を得られれば、人はその行動を繰り返す。こう言ってしまえば単純な話だが、今あるフィットネスウェアラブルでこれを十分に実現できているものはない。もしそれが出来たとしても、ユーザーはトレーニングの種類による成果の違いを見極める事は出来ない。

フィットネストラッカーと万歩計を例に挙げると、ステップにはアクティブとパッシブの2種類がある。今の所、フィットネストラッカーはどちらも同じ1歩としてカウントしている。スリッパ履きでミニバーに行く一歩も、ヒルクライムの一歩も同じものとして数えられている。

更にひどい例もある。ある日、フィットネストラッカーを持って(有名なブランドのものだ。ちなみにあらゆるブランドのものをこれまでに試した)バスに乗っていたところ、目標の1万歩を一瞬で超えてしまった事がある。道は特にデコボコしたニュージーランドの田舎道だったため、トラッカーはそれをカウントしてしまったわけだ。

アクティブステップ(トレーニング目的を持った一歩)は生活習慣を変える大きなポテンシャルを秘めている。これを正しく行うためには、脈絡を持たないデータの処理の仕方ではダメだ。データは過去の履歴や診療記録、自分で決めたゴールなどのコンテキストを持って処理されなければならない。

それが減量であれ、コレステロール値や血圧を下げるためであれ、”科学的な”ウォーキングやジョギングが夢を実現するのに役立つと分かれば、人は更なるアクティブステップを実行することだろう。
ここで私が言っているのは、トレーニングに意味をもたせるという事だ。例えば:

  • 「過去二回のウォーキングはトレーニングの成果的には同じようなものだ。計画通りに減量するためには、もう少し頑張らなければいけない。というわけで今日のウォーキングはこれまでより速く歩くか、距離を伸ばすか、ヒルクライムを追加する必要がある」
  • 「キャシー、血圧が上がりすぎてるからペースを落として」

といった具合だ。

これらは現在実現可能な事だ。科学的なエクセサイズと心理面でのケア、環境や体の反応を考慮したリアルタイムのコーチングを組み合わせることで、高血圧、糖尿、肥満、心臓疾患といった問題は大きく改善することが出来る。

成功の鍵はパートナーシップだ。顧客から深く信頼される企業がセンサーの開発業者と健康問題の専門家両方とパートナーシップを結び、マシンラーニングの専門家と協力しなければならない。

事は思ったより速く現実のものとなるだろう。専門的知見と現在の技術において、ジグソーパズルのピースは揃っている。後はこれをはめ込んでいくだけだ。これが我々が思い描く、技術が牽引する健康の実現のための唯一の方法だ。

トップ画像提供:Fitbit

Kerri McMaster
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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