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【伝わる!モデリング】はじめようUML!

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第2回:ユースケース図を学ぼう!

著者:株式会社テクノロジックアート 照井 康真

公開日:2008/04/08(火)

ユースケース図とは

前回は、UMLに関する全般的なお話から、業務分析でアクティビティ図を使用する方法を説明しました。今回は、要求分析でユースケース図を使用する方法を説明します。

ユースケース図は、UMLの生みの親であるスリーアミーゴスの1人、ヤコブソンがOOSEという方法論から取り入れた図です。システムが、外部から求められる機能的な要求を表現します。開発工程の中では主に要求分析段階で、開発者がユーザに機能的な要求を確認するために記述されることが多い図となります。図1は、最もシンプルな表記によるユースケース図の例です。

「サブジェクト」は、書いても書かなくてもそれほど違いはありませんが、ここでは後の説明のしやすさのために記述しています。「サブジェクト」を除くと、「アクター」「ユースケース」「関連」といった、たった3種類の要素のみで記述することができます。

まずサブジェクトとは、開発対象であるシステムを表しています。アクターを外側に、ユースケースを内側に記述するように四角形を記述します。

アクターとは、システムに対するユーザの役割や、連携する外部システムなどを表しています。スティックマンと呼ばれる人型のアイコンで記述します。サブジェクトを記述する場合には、必ずサブジェクトの外側に配置します。

ユースケースとは、アクターによるシステムの利用の仕方を表しています。「システムがアクターに対して提供するサービス」や「アクターが起動するシステムの振舞い」とも言えるでしょう。ユースケースは横長の楕円で表記します。またユースケースを記述する場合には、必ずサブジェクトの内側に配置する決まりがあります。

最後に、関連とはアクターとユースケースを結びつける実線のことです。

図1:ユースケース図の例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

要求分析

要求分析は、業務を分析した結果をもとに行います。もう一度図1を見てください。このユースケース図は、前回のアクティビティ図の業務フローをもとに記述されています。

では、業務フローをもとにユースケース図を記述する手順を説明していきましょう。

まず、ユースケース図の対象であるサブジェクトを記述します(前述の通り、書かなくても大丈夫です)。次に、アクティビティ図のレーン(UML 2.Xでの要素名はパーティション)に書かれているロール名をアクターとして記述します。

アクティビティ図のロールが行うアクションのうち、システム化が可能なものをユースケース名としてユースケースを記述します。アクティビティ図のロールとアクションに従って、アクターとユースケースに関連を引きます。

またユースケースを実現するために、外部システムと連携する必要がある場合は、外部システムをアクターとして記述し、ユースケースと関連で結びつけます。

では簡単な例でみていきましょう。本記事の例では、開発対象のシステム名を「出張申請システム」と命名し、ユースケース図のサブジェクトに記載しています。前回のアクティビティ図に書かれている3つのロール「申請者」「承認者」「経理担当者」をアクターとして配置しました。

ここでは、システム化が可能なアクションを「出張申請を登録する」「出張申請を提出する」「出張申請を承認する」「出張申請を却下する」「出張申請を差し戻す」「出張申請を確認する」の6つとし、ユースケースとして配置しています。

アクティビティ図には書かれていませんが、「出張申請を登録する」ユースケースの実現性を検討する中で、外部システムの「交通費精算システム」と連携を行う必要があるという設定なので、外部システムを表すアクターとして「交通費精算システム」が登場しています。

ここで、アクターを書くときの押さえておきたいポイントを紹介しましょう。「アクター」は、サブジェクトに関係するもののみを記述することに注意してください。例えば、「交通費精算システム」アクターは、さらに「路線システム」を利用して経路探索を行うかもしれません。しかし、ここではあくまでもサブジェクトである「出張申請システム」に関係するアクターのみを記述するため、「路線システム」はアクターとして記述しません。もし、どうしても「路線システム」をアクターとして書きたい場合は、「交通費精算システム」をサブジェクトとしたユースケース図に書くのが良いでしょう。

次に、より具体的な関係を表すユースケース図についてみていきましょう。 次のページ




株式会社テクノロジックアート  照井 康真
著者プロフィール
株式会社テクノロジックアート 照井 康真
獨協大学経済学部卒業後、業務系のシステム開発を経て、株式会社テクノロジックアートに入社。現在は、UMLやオブジェクト指向技術を活かした実際の開発や、セミナー/トレーニングの講師、コンサルティング等の中で、それぞれの状況に応じたモデリングノウハウの蓄積および提供を行っている。著書に「独習UML第3版」(共著/翔泳社)、「Eclipse3 + UML2.0による実践ソフトウェア開発」(監修/秀和システム)、「UMLモデリング教科書UMLモデリングL2」(共著/翔泳社)、「ビジュアルラーニングEclipse入門」(共著/エクスメディア)、「OMG認定技術者教科書 OCUPファンダメンタル」(監修/翔泳社)がある。
http://www.tech-arts.co.jp/


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第2回:ユースケース図を学ぼう!
ユースケース図とは
  より具体的な関係を表すユースケース図
  ユースケースの操作手順