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ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて
ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて

第5回:ビジネス・プロセス実行
著者:IDSシェアー・ジャパン  渡邉 一弘   2005/7/25
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エンタープライズ・サービスの重要性

   システム間連携を実現するために業務単位でシステム機能をまとめ、入出力項目を明確にしたものをWebサービスと定義しました。しかし、そのWebサービスの粒度は、システムを知らないビジネス・ユーザが意識して利用できる粒度としては、小さすぎることが懸念されています。

   この懸念を解消するために、SAP社とIDSシェアー社は、ESA(Enterprise Service Architecture)にて、Enterprise Serviceの重要性を提唱しています。

   エンタープライズ・サービスは、複数もしくは単一のWebサービスを利用する一連のシステム・プロセスをサービスとして定義されます。このエンタープライズ・サービスの粒度であれば、ビジネス・ユーザが、業務を意識してサービスを利用することができると想定されています。

   エンタープライズ・サービスは、複数のWebサービスを利用するプロセスとして規定されたBPELを通じて実装され、Webサービスをまとめた大きな機能の塊と捉えることができます。このエンタープライズ・サービスは、ビジネスとITの間に必要不可欠なシステム機能であり、まさに「経営と情報の架け橋」を実現するために必要不可欠であると考えられます。


ソフトウェアの部品化・再利用

   これまで、ソフトウェアの部品化・再利用が盛んに叫ばれてきたのですが、なかなか実現できてない現状に皆様苦労されているかと思います。筆者は、この現状の原因としては、部品の粒度が小さすぎる点と、部品の使い方を示したビジネス・プロセス及びシステム・プロセスが資産化されてない点をあげたいと思います。

   OOAなどのアプローチで部品化されたシステム機能をWebサービスとして技術的に再利用できたとしても、これでは前述のとおり、ビジネス・ユーザが意識して利用するには、使えるレベルではないと思います。

   更に、これらの小さな部品をどのような順番で組み上げればよいのか分からないのであれば、部品化した意味は全くなく、部品の再利用は、進まないと思われます。

   例えば、パソコンを組立てる際にHDD内部の磁気ヘッドなど末端の部品を意識しながら作業するPCユーザが、どのくらいいるでしょうか。著者の経験では、秋葉原でHDDのラベルを見て、HDDの仕様を細かく見る人間は、他社動向調査のためにHDDを購入しようとしている製品設計者・製造者ぐらいだと思います。

   また、パソコンを組立てる際に、それぞれのHDDなどの部品の仕様書や、パソコン組立て手順書を手元に置かずにPCを組立てることは、一般ユーザにとって容易でしょうか。

   システムという最終製品を組立てることも、PCを組立てることも、車を組立てることも基本的には同じと考えられます。

   最終製品の組立作業時は、組立てを行う人間が認識できる中間部品(例えば、PCで言えば、HDD、メモリ、CPU、マザーボードであり、車で言えばエンジン、ドア、フレーム、シャフトなど)まで末端部品が組み上げられておく必要があります。

   従って、システムを作り上げるためには、Webサービスの粒度の部品では小さすぎ、エンタープライズ・サービスの粒度の中間部品が必要です。

   そして、それら中間部品としてのエンタープライズ・サービスをどのような順番で組立てるか?つまりは、どのような順序でエンタープライズ・サービスを使用するのか?という何らかの設計書が必要です。

   その設計書こそ、ビジネス・プロセスであり、システム開発には必要不可欠な存在なのです。

   このような意味で、プロセス導入フェーズで利用するP2Aという技術や、ビジネス・プロセスからエンタープライズ・サービスやWebサービスを抽出するプロセス指向システム開発アプローチは、ソフトウェア部品の再利用を促進するために非常に重要であると考えられます。

   今後は、システム開発期間・コストの低減を目指し、プロセスの資産化、ソフトウェア部品の再利用が可能な環境構築に向け、プロセス指向的な活動がますます盛んになると考えられます。

   ITシステムに関わっている著者は、この活動を通じて、顧客企業が、企業活動の全体最適に向け、ビジネス・プロセスを通じたITシステムへの適切な投資を行い、適切なROIを得ることができる環境が、早急に構築されなければならないと感じます。

   そして、ビジネス・プロセスを取り扱うこの活動が、高度なスキルを活用してシステム開発の現場で日々頑張っているSEやプロマネの方々が、ビジネス・プロセスとITシステムを通じて顧客へ大きな価値を提供し、そこに喜びが感じられ、日々の苦労が大いに報われるようになるための一助となればと切に思います。

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IDSシェアー・ジャパン株式会社 渡邉 一弘
著者プロフィール
IDSシェアー・ジャパン株式会社  渡邉 一弘
工場でのHDD製品設計を経験後、SEとしてシステム構築を担当。日々、現場の業務とシステム機能の「ギャップ解消」に悩み、業績に直結するシステムやROIを求める経営者に対し、解決策として見出したのが「プロセス管理」というキーワード。現在は、IDSシェアー・ジャパンにてプロセス管理ツール「ARIS」のプロセスコンサルタントとして従事。


INDEX
第5回:ビジネス・プロセス実行
  ARISを活用したBPM
  業務を分類する
  SOA的なアプローチにおけるARISの活用
エンタープライズ・サービスの重要性