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アンチウイルスソリューション
1億円の企業ダメージを回避するウイルス対策ソリューション

第5回:ウイルス対策技術とその必要性
著者:トレンドマイクロ  黒木 直樹   2005/12/2
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ファイアウォール機能の応用

   「一般的にウイルスは何らかの方法で実行される」と既述したが、実行するのがユーザであるとは限らない。それは昨今大きな脅威となっている「OSの脆弱性」を狙うウイルス、すなわちネットワークウイルス(ワーム)である。

   このネットワークウイルスに対しての有効な機能として、パーソナルファイアウォール機能がある。最近はこのパーソナルファイアウォール機能に独自技術を搭載している製品がある。その技術がジェネリックストリーム検索と呼ばれるものである。


ジェネリックストリーム検索

   ウイルスパターンファイルと同様に、ウイルス対策ベンダーによってはネットワークウイルスパターンファイルが提供されている。ジェネリックストリーム検索では、ファイアウォール自体でネットワークウイルスのスキャンエンジンを持っており、脆弱性を狙ったネットワーク攻撃を検知すると通信を遮断する。またIDSでは監視しきれなかったパケットの中身を再構築して、攻撃を検知することが可能である。

   従来のパーソナルファイアウォール機能では、単にポートをブロックし、パケットの出入りを防止するだけであった。しかしこのジェネリックストリーム検索では、能動的にポートを制御できる。また、この機能をアプライアンス機器として組み込んだ製品も存在する。

   このようなアプライアンス機器のメリットとして、複数のネットワークセグメントに配置できてコスト的に有利であることと、配置によっては非常に多くのパケットを処理する必要があるため、高い性能があることがあげられる。

   またこれら技術にはもう1つメリットがある。一般的に、新しいウイルスが発見されると、そのウイルスを模倣した亜種と呼ばれるウイルスが非常に多く作成され、そしてばらまかれる。これら亜種に関しては通常、それに対応したウイルスパターンファイルが必要である。

   しかしネットワークウイルスの場合、そのウイルスが攻撃する脆弱性はオリジナルのウイルスと同じものを亜種も利用するケースが多い。主な違いは、ウイルス感染後の動作である。特定の脆弱性を攻撃する部分をエクスプロイトコードと呼ぶが、ネットワークウイルスは亜種であっても同一のエクスプロイトコードを含んでいるし、新種ウイルスでもエクスプロイトは使い回される傾向にある。

   ジェネリックストリーム検索では、このエクスプロイトコードを判別する。ウイルス登場以前のエクスプロイトコードが出回ったタイミングで、エクスプロイトコードを検出するネットワークウイルスパターンファイルを適用すれば、その後の同じエクスプロイトコードを転用したウイルスの攻撃にも対応できる。ネットワークウイルスの攻撃に利用可能な脆弱性の種類は限られており、現在のように亜種が乱発する環境では、エクスプロイトコードの判別による検出がより効果的なものとなっている。

ジェネリックストリーム検索によるウイルスの検出
図3:ジェネリックストリーム検索によるウイルスの検出
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示します)

   今回説明したように、ウイルス対策と一言でいっても、脅威に応じて様々なレイヤーに対応した製品が必要であり、それぞれ使用している技術も異なる。企業として、どのような製品やソリューションが必要かを吟味した上で選択して欲しい。本連載がその際の助けになれば幸いである。

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トレンドマイクロ株式会社 黒木 直樹
著者プロフィール
トレンドマイクロ株式会社  黒木 直樹
トレンドマイクロ株式会社 上級セキュリティエキスパート
1996年トレンドマイクロ株式会社入社。
ウイルス対策ソフト「ServerProtect」をはじめとする法人向け製品のプロダクトマーケティングを経て、製品開発部の部長代行に就任(2000年)。個人・法人向け全製品の開発においてリーダーを務め、同社のビジネスを支える主力製品へと成長させる。アウトソーシングサービス事業の立ち上げた後(2001年)、2002年にコンサルティングSEグループ兼インテグレーショングループ部長に就任。営業支援のシステムエンジニア、テクニカルコンサルタントを率い、情報セキュリティ全般にわたりプロジェクトを推進する。


INDEX
第5回:ウイルス対策技術とその必要性
  クライアント/サーバレイヤーのウイルス対策
  ゲートウェイでのウイルス対策
  グループウェアでのウイルス対策
ファイアウォール機能の応用