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Know HowからKnow Whoへ 〜社内SNS構築指南
第5回:社内SNSの弱点を克服する
著者:
TIS 倉貫 義人
2007/5/29
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社内SNSの価値
本連載の最終回となる今回は、TISで社内SNSを導入し運営してきた経験の振り返りと、そこから得られた発見、そして次の展開に向けてのアクションについて説明します。また、自社に導入しようと考えている方のために、改めて社内SNSの価値について解説します。
運用実績
まずTISの社内SNS運用実績を紹介します。ユーザ数の推移は以下のグラフになります(図1)。
図1:TISにおける社内SNSのユーザ数の推移
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
これまで社内SNSを運用してきて、休日や早朝などの営業時間外に行ったバージョンアップ作業で数時間ほど計画停止したことはありましたが、それ以外に営業日で利用できなくなってしまうといった障害は起きていません。もちろんパフォーマンスが著しく低下する、登録されていたデータがロストするような障害も発生していません。
このことは「Ruby on Rails」という比較的新しいフレームワークを使った事例としては、1つの実績になるのではないかと思います。
コンテンツに関しては、社内SNSのグループ機能を観察してみると、作られたコミュニティのカテゴリが、業務利用のものが40ほど、会社生活のためのものが40ほど、趣味のためのコミュニティが30ほどということで、半業務・半オフというコンセプト通りに、うまくバランスがとれているようです。
社員の利用状況に関しても、業務時間と休憩時間を意識した使われ方をしていることがわかります(図2)。
図2:利用状況の分布
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
利用者の声
社内SNSは今まで社内に存在しなかったサービスなので、利用者自身も戸惑い、そして使い方を探りながら利用されてきました。そういった利用者の声を一部紹介します。
違う部門の人と知り合いになるなど、社内の人脈が広がった
仕事・勉強に必要な技術情報を集めるのに役立った
技術力のある人や価値観の近い人との交流ができた
読んだ本や勉強したことを展開する場ができて楽しい
社内の人のつながりが強化され、問題解決なども迅速になった
少数派(マニアック)趣味を持っている人が社内にもいることが判り、貴重な連帯感を得ることができた
メールで連絡のつかなかった同期とポータルで簡単に連絡がついて、とても連携がとりやすくて感動しました
通常の仕事上の付き合いではわかりづらい、同じ部の社員の能力・指向性がわかった
社内で全く面識のない方の仕事内容や考えていることとか、そういうのが手軽に見えるようになったことが面白い
ブログを書かなくても、コメントという形で気軽に発信できるのも、天邪鬼な私にとって利用しやすい環境ですね
使っていると遊んでいるように見られるので、営業時間以外は使えない
質問や日記を自分が考えているとは別の観点で指摘してくれて新しい発見ができた
表1:社内SNS利用者の声(抜粋)
ここで紹介した利用者の生の声自身も、社内SNSのQ&A機能を利用して集めたものです。こうした利用者と運営者のコミュニケーションができることも社内SNSの良い点だといえるでしょう。
社内SNS導入の効果と反省点
社内SNSを導入したことで、以下のようなプラスの効果がでてきました。
社内の勉強会が増えた
若手技術者が中心となった勉強会があちこちで開催されるようになり、しかも、その勉強会に部門をまたがって社員が参加するという現象が生まれた。
社員同士が知り合う機会の増加
事業部をまたがって社員同士が話をする機会は少なかったのが、ブログへのコメントなどで、知り合いができるようになった。
技術的な課題が迅速に解決できる
気軽に相談できなかった、ちょっとした技術的な問題についてもQ&A機能を利用し、別部門の有識者からの回答がタイムリーに得られることで問題解決に繋がった。
全社施策への意見が集まる
社内で実施されている施策について、今までは意見を述べる場がなかったのが、ブログなどで発信することで、会社に対してフィードバックができるようになり、会社も対応するようになった。
経営層とのコミュニケーションが取れる
社長自らがブログを書くことで、それに対してコメントをしたり、コメントを返してもらったりするようになった。普段であればできない経営層とのコミュニケーションが行えることは、社員のモチベーション向上に効果を発揮している。
表2:社内SNS導入の効果
どれも定性的なものになってしまいましたが、ここにあげたような効果は着実に出ていることは事実なのです。
社内SNSの弱い点
しかしその一方で、未解決な課題も残っています。それは
社内SNSでは公式な資料などの公開には向かない
ということです。
社内SNSを導入した際の最初の狙いが「個人が抱えているノウハウなどを共有したい」というものだったので、社内の標準資料や全社的に配布される資料や理路整然と整理されたノウハウなどについては、社内SNSの機能で公開して共有するのには向いていませんでした。
一般的に、情報は「ストック」と「フロー」に分類されます。「ストック」というのは、時間を超えて蓄積され続ける情報のことです。例えば、Wikipediaの情報はストックとして考えられます。
「フロー」は時間によって次々と現れては流れていくような情報のことです。これはメールやメッセンジャー、ブログで流れる情報も一種のフローと考えることができます。社内SNSで取り扱っている情報の多くはフローです。
社内の公式資料などは、確実に「ストック」として扱うべき情報なので、その置き場所が社内SNSにはありません。TISではすでにグループウェアを導入しており、これまではそれで管理してきました。しかし全文検索機能がないことや、更新情報を複数の資料にわたって一度に見ることができないなどの課題がありました。
そこで社内SNSとは別のサービスとして社内における「ストック」の情報を配置することのできるシステムを構築することにしたのです。このプロジェクトを開始したのが、社内SNS運用を開始してちょうど1年目の2006年末のことでした。
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著者プロフィール
TIS株式会社 倉貫 義人
基盤技術センター所属。社内の技術支援をするかたわら、社内SNS構築のプロジェクトマネージャ兼メインプログラマとして従事している。一方で、eXtreme Programmingというアジャイル開発の研究・実践を行い、XP日本ユーザグループの代表もつとめている。
情報共有ソーシャルウェア/社内SNS「SKIP」
http://www.skipaas.jp/
XP日本ユーザグループ
http://www.xpjug.org/
INDEX
第5回:社内SNSの弱点を克服する
社内SNSの価値
資料を共有する仕組みを作る
知識創造のサイクルの実現