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IT投資効果分析
ビジネスモデルの変革を伴うIT投資効果分析の考え方

第1回:IT投資の動向と可視化について

著者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/5/2
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IT投資と投資効果算定を考える

   1990年代後半から企業では積極的なIT投資が行われ、企業内での業務プロセスは効率化が進み、生産性の飛躍的向上がもたらされた点は否めない。しかしながら、今日のようなグローバル規模でビジネスの再編が繰り広げられている熾烈な競争市場において、ITに求められてきた役割は「業務の支援」レベルだったといえる。これでは、これからの日本企業は勝ち抜くこと、あるいは存続が難しいのが現実ではないだろうか。

   かつての日本企業の強みは高品質な製品づくりとTQC(Total Quality Control:総合的品質管理)活動による生産現場の「Kaizen」にあった。しかしホワイトカラーの生産性やプロセスの効率化は欧米企業に遅れを取る結果となり、日本企業の克服すべきボトルネックの1つとして、改めて浮かび上がってきた経営課題でもある。

   そのような企業のITシステムを取り巻く流れの中でBPM(Business Process Manager)という言葉がクローズアップされるようになった。最新のITソリューションを活用することで、企業はビジネスパートナーとのコラボレーションによる新しいビジネスモデルの展開ができるようになり、企業価値を創造するための手法として注目を集めているようである。

   そこで本連載ではBPM構築におけるROI(Return On Investment:投資対効果)や中長期的なIT投資と投資効果算定の考え方について解説していく。

BPMの導入評価

   BPMの導入がもたらすコアな部分の期待効果を把握する際に、「コスト/ベネフィット」の観点から捉えたROI評価だけでは困難が伴う。その場合、システム導入の事前評価だけでなく、導入後における評価も継続的に実施する必要がある。

   例えば「ベネフィット」は下記のように分けることができる。

  1. コスト削減効果
  2. コスト回避効果
  3. 収益拡大機会

表1:ベネフィットの分類

   このうち「3.収益拡大機会」をどのようにして把握し、「ビジネスバリュー」の部分を+αとして捉えるかが重要となってくる。そこで従来の短期的なIT投資と異なり、ビジネスモデル変革に応じた中長期的なIT投資の評価について考察してみよう。

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


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