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はじめに
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オープンソースソフトウェア(以下、OSS)の導入が急速に広がっている。小規模で限定的な導入から、より大規模、ミッションクリティカルな導入へと進んでいる。OSSが持つ様々な利点が広く理解されるようになったからと考えられるが、一方で導入にまつわる漠然とした不安感も存在する。
OSS適用システムが大規模化・複雑化するにつれ、信頼性・性能等、システム設計・構築に必要なデータが不足していることも明らかになってきた。また、障害解析ツールについてもその利用ノウハウの蓄積が十分ではなく、原因究明に時間がかかるなどの問題点も指摘されている。
そこで日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループでは、その問題解決のために様々な評価およびツールの開発等を行った。OS層の評価では、サイジングに役立つツールの整備とツール利用方法の確立を行うことを目的としてOSの限界値の評価を実施し、標準的な分析手法を確立した。ここでは2004年度の成果に基づいて解説を行う。
詳細に関しては、「OS層の評価」報告書(以下、報告書)を参照されたい。
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OSの性能評価方法について
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OSの限界値付近での動作評価を行い、各種ツールを利用し、性能上の問題点を発見する方法の手順化を行った。具体的には、I/Oを高負荷状態にするベンチマーク(IOzone)とプロファイリング(OProfile)およびカーネルトレース(改良版LKST)を実施し、このプロファイリングの結果から、性能限界を決めるカーネル内部コンポーネントを特定する方法を手順化した。この手順を利用すれば、誰でも簡単に性能上の問題点を発見することができるようになった。
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※注:
改良版LKSTは、本「OSS性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」プロジェクトの成果による。改良版LKSTに関しては連載「OSS適用システムの障害解析ツール」の第3回「Linuxカーネルの性能評価機能(LKST)とは」などに詳しく記載されている。
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性能・信頼性評価結果と分析・考察の概要
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今回行ったベンチマークの構成を図1に示す。
図1:ベンチマーク構成
今回、ファイルサイズ(-sオプション)、並列数(-tオプション)、子プロセスまたはスレッド(-Tオプション)、iozoneコマンド数を変化させた11種類のI/Oパターン(表1)の測定を実施した。
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パターンID |
オプション -s |
オプション -t |
オプション -T |
iozoneコマンド数 |
1 |
8G |
1 |
× |
1 |
2 |
8G |
1 |
○ |
1 |
3 |
4G |
2 |
× |
1 |
4 |
4G |
2 |
○ |
1 |
5 |
4G |
1 |
× |
2 |
6 |
2731M |
3 |
× |
1 |
7 |
2731M |
3 |
○ |
1 |
8 |
2731M |
1 |
× |
3 |
9 |
2G |
4 |
× |
1 |
10 |
2G |
4 |
○ |
1 |
11 |
2G |
1 |
× |
4 |
表1:IOzone実行パターン
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資料紹介
「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書
本記事は、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループによって公開されている「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書を基に記事を掲載しています。報告書には、本記事で紹介した評価手法の詳細な手順、評価結果、考察が記載されています。
Javaアプリケーション層の評価、DB層の評価、OS層の評価の各報告書や付録、障害解析ツール開発に関する各報告書などが、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループのホームページにて公開されています。
■「OS層の評価」報告書(PDF形式/529KB)
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/Contents/DevInfraWG/osbench.pdf
■日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループホームページ
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/DevInfraWG.html
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著者プロフィール
ミラクル・リナックス株式会社 吉岡 弘隆
2000年6月ミラクル・リナックス(株)設立、それ以前は日本オラクルにてOracleデータベースのサポートを担当していた。オープンソースとの出会いは、1998年米国Oracle出向時にNetscapeのソースコード公開がきっかけ。
ミラクル・リナックス株式会社 取締役
日本OSS推進フォーラム ステアリングコミッティ委員
OSDL Japan アドバイザリボードメンバー
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