TOPITニュース> SaaS World Conference & Demo 2007 閉幕記念講演レポート「ネット企業の企業価値評価—ITシステムの価値評価は変わった!」

ITニュース

SaaS World Conference & Demo 2007 閉幕記念講演レポート「ネット企業の企業価値評価—ITシステムの価値評価は変わった!」

イベント記念講演SaaS

2007/3/30 14:00

「SaaS」というだけでは売れない時代

東京コンファレンスセンター・品川にて3月28日〜29日の2日間開催されたSaaS World Conference & Demo 2007から、東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授/工学博士 松島 克守氏による閉幕記念講演の内容をお伝えする。

東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授/工学博士 松島 克守氏

東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授/工学博士 松島 克守氏

松島氏はまず「IT産業は日本の基幹産業です。しかしITといっても技術革新によって、その主役はメインフレームからPC/AT互換機、ネットワークと移り変わってきています。ネットワークがIT産業の中心となってからも技術革新があり、今現在の基盤技術はWeb 2.0となっています」とITビジネスの現状を語った。

現在のインターネット利用人口がもっとも多いのは10〜20代だが、支出面から見ると50代がピークになっているという。もしこの10〜20代の層が50代になり、インターネット利用率はそのままで、今の50代と同じ支出をすると考えた場合、その市場は非常に大きいものとなる。今ビジネスモデルを急速に移行できなければ、利用率の高い層が移行する時代にはついていけないという。

ネット企業には様々な種類があり、物を売る「eコマース」と情報を売る「インターメディアリー」に大別できる。インターメディアリーはさらに「媒体型」と「広告型」に分類されており、業界として大きな伸びをみせており、今後の主流になると考えられるとのことだ。

松島氏は「ネット企業はリーチ(利用者数)とリッチネス(平均利用時間)の両方を把握できるメディアですが、従来の新聞や雑誌といったメディアはリーチだけしかみえません。実際に、リーチしかみえない既存メディアの価値はここ10年で下落傾向にあります」と、伸びを見せるネット企業の優位性を述べた。

既存メディアは1回の広告費用が高いために顧客は大企業が中心で、中小企業の多くは現在ほとんど広告をだしていないという。これらの中小企業が比較的広告費用が安価なネット広告に対して1年間に20万円支払ったと仮定した場合、ネット広告市場の規模は大企業の1兆7,525億に中小企業の9,379億円を加え、総額2兆7,000億円となる。今後はこの市場をメディアが奪い合う状況になると分析し、ここでもビジネスモデルの変革が必要だという。

松島氏はSaaSについて「ネット時代のビジネスとは、顧客にとって価値があるかどうかが重要です。しかし、このような論理でSaaSは売るべきではありません。それは、安くなるからです」と述べる。

「このようなビジネスを考えた場合、考えなくてはいけないのは最終顧客です。SaaSが目指す最終顧客がいる場所は、Web 2.0を活用し、情報はタダで得られて当然と考えている層です。さらにWeb 2.0のマッシュアップに親しんでいるため、有償の何でもそろったSaaSではなく、各社の無償モジュールを組み合わせることを選択するユーザが多くなるでしょう」と指摘する。

松島氏は「この半年はまだSaaS製品は少なく、利用者の選択の幅がないため、ベンダーが勉強できる時期です。この期間のうちに自分たちのビジネスモデルを考える必要があるでしょう。『SaaS』というだけでは売れない時代はすぐにやってきます。Web 2.0の世界で遊ぶユーザが求められる新たな価値を見出すべきでしょう」と締めくくった。

問い合わせ先

SaaS World Conference & Demo 2007

URL:http://www.idg.co.jp/expo/saas/

(ThinkIT編集局  神保 暢雄)