仮想デスクトップ高速表示技術

2011年8月2日(火)
松井 一樹
エンジニアリングクラウドを支える技術

昨今、さまざまな分野でグローバル化が進む中で、日本が継続的に成長していくために欠かせないのが、日本のものづくり復興だと言われています。日本のものづくりを支えるのは日本のICTであるという信念のもと、富士通は次世代ものづくり環境「エンジニアリングクラウド」を発表しました。

「エンジニアリングクラウド」は、安全性・信頼性、既存システムや他クラウドとの連携、グローバルレベルでの標準化・共通化等、富士通のノウハウや技術をもとにサービスとして展開するものです。今回は、このエンジニアリングクラウドでコア技術として用いられている独自技術についてご説明します。

シンクライアントシステムの実現方法は

クラウドを利用して、デスクトップ環境を仮想的に配置し、ネットワーク経由でリモート操作する仮想デスクトップは、シンクライアントシステムの一つです。

富士通研究所は、仮想デスクトップにおいて、動画や高精細な画像等の多量な画面データ転送の課題に対応し、新しい高速表示技術を開発しました。この技術は、セキュリティやコストダウンといった側面だけでなく、私たちのワークスタイルに変化と多様性をもたらす技術としても期待されています。

そもそも、なぜ、シンクライアントシステムで画面データ転送量が多くなるのでしょうか。あらためて、シンクライアントシステムの動作原理を確認します。シンクライアントシステムでは、サーバー側で実行するアプリケーションの描画結果やデスクトップ画面をフレームバッファに出力し、そのフレームバッファの画面データをクライアント側にリアルタイムに送信することで、クライアント側でサーバー側のフレームバッファと同じ画面を即座に再現することができます。

よって、シンクライアントシステムでは、デスクトップ画面の変化を素早く検出し、その画面変化をできるだけ少ないデータ量でクライアントに届けることが重要になります。その実現方法として、2つのタイプに分類しました。一つは、画面変化を描画コマンドや静止画データでクライアントに送信する「(1)画面転送方式」です。もう一つは、デスクトップ全体をテレビのように動画でクライアントに送信する「(2)動画転送方式」です。

図1:シンクライアントの実現方式(クリックで拡大)

画面転送方式では、デスクトップでの画面変化を静止画やコマンドで送ります。よって、動画やアニメーション、グラフィックスなどの画面変化が多く発生するアプリケーションを利用すると、画面変化があるたびに静止画などでクライアントに送信する必要があるため、データ転送量が非常に多くなってしまいます。その結果、ネットワーク通信帯域が十分でなければ、ユーザーの操作応答性能が悪化します。

一方、動画転送方式では、デスクトップ全体を動画で送信します。よって、動画コンテンツなどのリッチコンテンツを閲覧する場合などにスムーズに表示されますが、サーバー側でのデスクトップ全体の動画化処理の負荷が大きく、一般的にはある程度以上の性能を引き出すためには専用ハードウエアが必要となります。

株式会社富士通研究所 ヒューマンセントリックコンピューティング研究所

1992年に富士通研究所に入社。モバイルメッセージ技術やモバイルサービス基盤技術の研究開発に従事。現在は、さまざまな端末とクラウドを融合させた新しいサービス基盤の研究開発を行っている。

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