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検疫ネットワーク動向
ウイルス感染・機密情報漏洩の脅威から社内ネットワークを守る検疫ネットワーク動向

第1回:検疫ネットワークの市場概況
著者:富士キメラ総研   中原 隆治  2006/3/30
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現状の課題

   検索ネットワークの現状の課題としては以下の4つがあげられる。
検疫ネットワークシステムにおける現状の課題
図2:検疫ネットワークシステムにおける現状の課題

   まず「コスト」についての課題を説明する。これは検疫ネットワークシステムに限らず、すべてのセキュリティ製品にあてはまることであるが、費用対効果を求めるユーザが多い。まだ一度もセキュリティ被害に遭っていないためか、被害に遭った際の損失を真剣に検討しているユーザが少ない。導入規模や既存環境にもよるが、数100万円レベルのコストがかかる。

   次に「システムの複雑さ」があげられる。「検査」「隔離」「治療」の3要素で構成される複雑なシステムであるため、導入の敷居が高い(ユーザ側だけではなく、提供側にとっても敷居が高くなっている)。システムや既存環境にもよるが、導入には数ヶ月〜1年以上の労力と期間を要する。

   3つ目の課題として「情報漏洩対策」がある。検疫ネットワークシステムはセキュリティポリシーの強制を行うシステムであるが、セキュリティポリシーを持っていない企業が多い。また、情報漏洩対策が進行中(検討中)となっている企業も多い。

   検疫ネットワークシステムはセキュリティポリシー構築や情報漏洩対策の後に波及効果としての導入が期待されるため、現状ではまだ検疫ネットワークシステム導入にまで至らないケースが多い(ただし、どのシステムもユーザからの引き合いは多い)。


独自方式の問題点

   最後に、「独自方式」の問題点を説明する。現時点ではデファクトスタンダードとなるシステムはなく、すべてが「独自方式」であるため、どのシステムを採用すればよいのか選択を迫られる。まだ大半のユーザは様子をうかがっている段階と見られる。

   また、現状では「検査」と「隔離」の組み合わせが限定されているケースが多い。検疫ネットワークの標準化としてTrusted Computing Groupの「Trusted Network Connect(TNC)」があげられるが、現状ではサプリカントが限定されるなどまだ課題はあるが、マルチベンダーが可能になるシステムとして期待されている。

   2005年度の市場規模は50万クライアント/台、約70億円の市場規模が見込まれている。現在までの導入ユーザの傾向からかんがみれば、営業部門など部署ごとに導入のしやすさは異なるが、導入条件はなく、すべてのユーザに有効なシステムであるといえる。

   引き続き先行ユーザの導入やセキュリティポリシーの構築、情報漏洩対策などが普及していけば更なる市場拡大が見込まれる。

   一方、競合システムとしてシンクライアントがあげられる。未だにデスクワークでの採用が多いが、ワイヤレスブロードバンドなどによりリモートアクセスへの採用も進んでいくものと見られる。

   シンクライアントはセキュリティ対策だけでなく、HDDレスによる故障の少なさ/耐久性向上、消費電力、ソフトウェアメンテナンスの容易さなど運用管理面でも大きなメリットがあるが、アプリケーション検証作業が必要など課題もある。そのため、棲み分けは可能と考えられる。

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株式会社 富士キメラ総研
情報処理・加工システムが高度化する中で、富士経済グループはフィールドリサーチ中心の市場調査会社として41年の実績をもち、情報の質やリアルタイムなデータの収集・調査力では、他社に絶対負けないと自負しており、ITインテリジェンスが高度化する中で、On the information edge(最先端情報で優位に立つ)を目指した実態調査とコンサルティングをご提供したいと考えております。
http://www.fcr.co.jp/
株式会社富士キメラ総研 研究開発本部 第三研究開発部門 中原 隆治
著者プロフィール
株式会社富士キメラ総研  研究開発本部
第三研究開発部門
中原 隆治

ブロードバンド/モバイル/ワイヤレス/セキュリティなど主に情報通信分野全般のマーケティングリサーチを担当。直近の発刊レポートでは「検疫・認証/VPNネットワークソリューションの展望」「2006 ワイヤレスブロードバンド市場の現状と将来展望」などの調査編集に従事。


INDEX
第1回:検疫ネットワークの市場概況
  はじめに
  「検査」「隔離」「治療」の機能を提供しているシステム
現状の課題