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Enterprise OS
改めて知っておきたいRed Hat Enterprise Linux 4 - サーバ編

第1回:ブレードサーバとLinux
著者:日本ヒューレットパッカード  古賀 政純   2006/5/18
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デプロイメントツールを使ったRHEL4のインストールと管理

   先に述べた通りブレードサーバへのLinuxのインストールには、デプロイメントソフトウェアを導入するのが一般的です。逆にデプロイメントソフトウェアがないと、ブレードサーバの利便性は大幅に損なわれるといっても過言ではありません。デプロイメントツールの主な役割を表2にあげます。
  • 大量のブレードサーバの管理の煩雑さを低減
  • ブレードサーバのハードウェア設定情報を保管・デプロイ
  • ブレードサーバのファームウェアアップデート
  • Linuxの無人インストール
  • コマンドラインの一斉操作
  • 電源管理
  • ドライバの一斉配布
  • パッチ管理
  • ブレードサーバのディスクイメージの取得とデプロイ

表2:デプロイメントツールの主な役割


HP Rapid Deployment Pack Linux Editionを使ったRHEL4のインストールと管理

   RHEL4を大量のブレードサーバにインストールするためのデプロイメントソフトウェアであるRapid Deployment Pack Linux Edition(RDPLE)は、HPが提供するマネージメントソリューションソフトウェアの1つです。

   RDPLEはAltiris社が開発したデプロイメントエンジンを核とし、そのまわりにProLiantサーバのハードウェア設定などを施すためのジョブや管理モジュールが追加された形で提供されています。

   RDPLEはRHEL4上で動作することが可能で、一般にRDPLEサーバ、管理サーバなどと呼ばれます(以降ではRDPLEサーバと呼びます)。

   RDPLEサーバはRHEL4が稼動するProLiantサーバで動作します。RDPLEはOSやソフトウェアなどのデプロイメントを行いますが、逆にブレードサーバにインストールされているOSのイメージデータを取得することも可能です。

   このイメージデータはRDPLEサーバやNFSファイルサーバなどに保管することが一般的です。RDPLEによるRHEL4のインストールはKickstart(注1)を利用します。RDPLEでは一般に「スクリプトインストール」と呼ばれています。

※注1:
Kickstartについては後ほど解説します。

   RDPLEはWebインターフェースを備えており、管理者はRDPLEサーバのRHEL4上のWebブラウザだけでなく、RDPLEサーバにLAN接続されたリモートのPCなどからアクセスして管理することが可能です。RDPLEのWebコンソール画面を図3に示します。

RHEL4上で動作するRDPLEのWebコンソール画面
図3:RHEL4上で動作するRDPLEのWebコンソール画面
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


RDPLEのメリット

   RDPLEには様々なブレードサーバ管理のための機能が搭載されていますが、その機能とメリットについて考えてみます。

   ブレードサーバを管理する上で管理者が最も頭を悩ませるのは、ブレードサーバへのOSのインストールやファームウェアのアップデートの煩雑さです。管理対象となるブレードサーバが何百台もある場合に、OSのインストールやファームウェアのアップデートを1台ずつ行うのは非現実的です。

   RDPLEはそのような管理者の悩みを少しでも軽減できるように設計されています。RDPLEが提供する主な機能としては、OSインストール、イメージの取得と配布、ハードウェア情報の取得と配布、ソフトウェアの配布、コマンド発行、iLO接続(注2)などがあげられます。

※注2:
iLO(Integrated Lights-Out)とは、HP ProLiantサーバ、Integrityサーバ、HP9000サーバのエントリモデルに搭載されているサーバの遠隔管理を行うためのコントローラのこと。

   表3に、RDPLEが提供する代表的な機能と利点をまとめました。

RDPLEの機能 メリット
OSのスクリプトインストール ブレードサーバの台数が増加した場合のインストール工数の低減
OSのイメージ取得とイメージ配布(ベアメタルインストール) 1台のブレードサーバでカスタマイズされたOS情報を他のサーバに大量にコピーし、カスタマイズ工数を低減
カスタマイズされたOSイメージを複数保管することで、システム更新前後の状態を把握
ハードウェア情報の取得と配布 ブレードサーバのハードウェア設定(BIOS設定やファームウェアのバージョンアップなど)を一斉に行い、ハードウェアメンテナンスの工数を大幅に低減
ソフトウェアの配布、コマンド発行、OS設定変更 パッチ、設定更新情報などを大量に配布し、ソフトウェアメンテナンスの工数を低減
管理者独自の管理コマンドや業務用コマンドを複数台のブレードに発行し、コマンドラインベースの管理工数を低減
ブレードサーバへのiLO接続 ブレードサーバの電源ON/OFFやBIOS設定、OS設定を遠隔地から行うことが可能となり、管理工数を大幅に低減

表3:RDPLEが提供する機能と利点

   RDPLEはRHEL4で構成可能ですが、RDPLE自体はPostgreSQLサーバを内蔵しています。またDHCPサーバとNFSサーバを利用しますが、1台でRDPLE、DHCP、NFSサーバを兼用させることも可能ですし、既存のNFSサーバやDHCPサーバを利用することも可能です。

   DHCPサーバにはRDPLE側でブレードサーバがPXEブートを行うための設定が含まれている必要がありますが、RDPLEとDHCPサーバを1台で兼用する場合はDHCPサーバの設定は自動的に行われます。RDPLEを1台だけで構成すると、DHCP、TFTP(注3)、NFSの設定が自動的に行われますので、導入が非常に簡単になります。

※注3:
TFTP(Trivial File Transfer Protocol)とは、ユーザ名やパスワードなどの認証を必要としないファイル転送プロトコルのこと。

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日本ヒューレット・パッカード株式会社 古賀 政純
著者プロフィール
日本ヒューレット・パッカード株式会社
古賀 政純

2000年よりUNIXベースのHAクラスタシステム及び、科学技術計算システムのプリセールスに従事。並列計算プログラミング講習会などを実施。その後、大手製造業及び官公庁系の大規模Linuxクラスタの導入、システムインテグレーションを経験。現在は、大規模エンタープライズ環境向けのLinuxブレードサーバ及びHP Serviceguard for Linux(HAクラスタソフトウェア)のプリセールスサポート、システム検証を担当している。毎日、Linuxサーバと寝食を共に(?)しています。


INDEX
第1回:ブレードサーバとLinux
  ブレードサーバの導入が加速する理由
デプロイメントツールを使ったRHEL4のインストールと管理
  RDPLEサーバの構築に必須のRHEL4のサービス