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セマンティックWebによる情報統合 〜Web 2.0と情報活用を支えるメタデータ
セマンティックWebによる情報統合 〜Web 2.0と情報活用を支えるメタデータ

第4回:統合技術として導入が進むセマンティックWeb
著者:野村総合研究所   田中 達雄   2006/9/8
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大手通信機器ベンダーの事例

   大手通信器ベンダーでは、製品ラインごとの売上分析をBusiness Intelligent(BI)にて行っていたが、図4、表2のような状態から、新製品を投入してその新製品の売り上げ分析がBIで可能となるまでに8週間もの時間がかかっていた。
セマンティック統合適用前
図4:セマンティック統合適用前
出典:野村総合研究所
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

  • 売り上げ分析に必要なデータをBIに受け渡すまでに複数のステップを踏んでいた
  • 各ステップに、BIに受け渡すまでに必要なデータ変換や集計のための定義やプログラムロジックが分散していた
  • 売り上げを算出する場合、複雑な製品同士の関係や顧客や地域ごとのローカルルールなども反映する必要があった

表2:セマンティック統合適用前のプロセス

   大手通信機器ベンダーでは、新商品を投入して8週間も売り上げ分析ができない状況は、製造計画・在庫管理上大問題であると判断し、この状況を改善すべくエンタープライズ・セマンティックWebの適用に踏み切る。

   具体的には、ETLやJavaプログラム、ストアドプロシージャ、Excelシートにそれぞれ定義ならびにコーディングされていたデータ変換/データ集計の情報を排除するために、それらの情報をすべてRDFとOWLに置き換え、リポジトリにて一元管理した。そして、一元管理されたRDFとOWLを推論エンジンが読み込み、データ変換/データ集計する仕組みに移行した。

   その結果、新商品投入後の変更はRDFの追加とOWLの変更だけとなり、BIで売上分析が可能になるまでの時間を8週間から1週間に短縮した。

セマンティック統合適用後
図5:セマンティック統合適用後
出典:野村総合研究所


統合化技術とセマンティックWebのまとめ

   Webの検索性を高める技術として長い間、学術的な研究分野の1つとして扱われてきたセマンティックWebだが、過去の取り組みの中から統合技術として応用できることがわかってきている。それは従来の統合技術/統合製品の問題を解決するものでもあった。

   これまではベンチャー企業の製品を使った先進的なユーザー企業での適用に留まっていたエンタープライズ・セマンティックWebも、大手ベンダーによるベンチャー企業の買収により、先進的なユーザー企業以外へも広く適用が進むと思われる。

   8月21日に米webMethodsが、米Cerebraの資産を買収したと発表した。Cerebraは筆者も訪問したことがあるエンタープライズ・セマンティックWeb製品のベンチャー企業である。このように大手ベンダーにより技術が買われ、大手ベンダー製品に組み込まれることで広く普及する下地が整いつつある。

   最初の用途は限定的なもの(WebMethodsではソフトウェア資産管理)となりそうだが、その応用範囲は広い。そろそろセマンティックWeb技術を真剣に学ぶ時期にきたのかもしれない。

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野村総合研究所 田中 達雄
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第4回:統合技術として導入が進むセマンティックWeb
  はじめに
  標準仕様に基づくデータ変換定義
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