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PMBOK第3版
PMBOK2000と比べて覚えるPMBOK第3版

第3回:補強された「人」についての監視コントロール

著者:イマジンスパーク  深沢 隆司   2006/9/25
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プロセス改善の考え方

   先のような状況の中、何かを変えられる権限を持っている立場の者が直接、実作業者達の状況を見極め、少しでも不用な仕事を減らすなどの努力を行うべきです。不用な仕事(プロセス)を減らしていくのは、その中で仕事をしている人々とは少し違う視点と権限(権限や立場の違いは視点の違いでもあります)を必要とします。

   まさにそれらプロセスの中で仕事をしている人々には、なかなか気がつけないことであったりします。そこを、実際にプロセスを実行している人々としっかり話し合いをしながら、実作業者達のエネルギーを効果的に結果(成果物)に変換できるようにしていくのが、プロジェクト・マネージャほか、マネジメントを行う者の役割であって、上手くいかなかったことを指摘することが仕事ではありません。

   後で指摘しなくても良いように、最初から上手くいくように進めていくことが、もともとのマネジメントの実現すべきことで、何かしら上手くいかなかったことがあったら、そもそもそれを発生させた原因は自分たちが承認しているプロセスの問題ではないのか、因果関係をシッカリと把握し改善を考えることが仕事です。

   プロジェクト・マネージャ他、マネジメントを行う者は、何か指揮下で働く者の落ち度を指摘したくなったら、その前に、「そもそもそれは自分たちに原因があることで、それに気がついていないという情けない状況にあるのではないか」と恐怖感を持って考えるべきだと思います。

   筆者には、かなりの確率(80%〜90%ぐらいでしょうか)で、マネジメント側が考え方を変えることで解決できる場合が多いという実感があります。最初から何事も起こらないということも実現できます。

   PMP資格試験対策で紹介するデミングの言葉に「品質コストの85%は、トップマネジメント(経営者)の直接の責任」というものがあります。私自身、何とも根拠を上手く表現はできませんが、「そうそう、ホントにそんな感じ」と、一度デミングという人と話してみたい気分になります。しかもデミングという偉い人が、わざわざ言葉にしないといけないほど、トップマネジメントに責任があることは見えにくいですし、直接的であることも見えにくいのです。

   上記の「仕事を減らす」という考え方は、PMBOKでいえば品質保証プロセスの考え方と合致します。品質保証には、以下のような記述があります。

  • 継続的プロセス改善により、不用で付加価値のないアクティビティが削減され、プロセスを効率よく効果的に実行することが可能となる(P.188)
  • 品質監査の目的は、プロジェクトで利用されている非効率で効果のない方針、プロセス、手順を識別することにある(P.189)

表1:品質保障プロセスとの共通点

   日頃よく見かけるプロジェクトでは、何かを考えた結果として、作るドキュメントやアクティビティを増やす場合や誰も意義を感じられない方針が提示される場合が多く、ある意味全く反対の経緯をたどる場合が多いという印象があります。

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イマジンスパーク 深沢 隆司
著者プロフィール
株式会社イマジンスパーク   深沢 隆司
株式会社 イマジンスパーク 代表取締役
陸上自衛隊少年工科学校第25期生。対空戦闘指揮装置の修理要員として自衛隊に勤務。退職後に一部上場企業や官庁でのシステム開発等で仕様策定、プロジェクトマネジメントに従事し、独自の手法で成功に導く。著書は『SEの教科書』他。

INDEX
第3回:補強された「人」についての監視コントロール
  「人」に関する記述が補強された
プロセス改善の考え方
  承認済み変更要求(「ステークホルダー・マネジメント」プロセス)