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事例編〜Web 2.0サービスの中を見せます |
第6回:データベースの負荷分散とまとめ
著者:はてな 伊藤 直也 2006/11/1
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アプリケーションの特性を考えたデータベース設計を
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ところで、はてなブックマークではMySQLのレプリケーション機能を素直に使った負荷分散を行っているわけですが、これはソーシャルブックマークというアプリケーションの特性を考慮してのことです。
ソーシャルブックマークサービスはコンテンツとして閲覧されるページが非常に多く、発行されるSQLのクエリーの多くは参照系のクエリーになります。参照系と更新系のクエリーの割合は、だいたい80%〜90%が参照系という具合です。ソーシャルブックマークに限らず、掲示板やブログなど多くのWEB+DBアプリケーションでは参照系クエリーが多くなるかと思います。
こういった場合は、レプリケーションによる負荷分散が効果的です。レプリケーションではマスター1台に対して複数のスレーブを持たせることができ、理論的にはスレーブは何台でも追加できます。先に述べたとおり、参照系クエリーはスレーブが担当するので、参照系クエリーを分散させるにはスレーブを追加すれば良く、スレーブの追加が容易なレプリケーションシステム下では分散にはそれほど困らない、というわけです。
一方のマスターは、スレーブに比較すると台数を増やすことが難しく、データベースに保存されているデータを複数のサーバーで分割保持するなど、クラスタリングのノウハウを導入する必要があります。したがって、更新系処理が多いアプリケーションでの負荷分散は、そうでない場合に比べてはるかに難易度が高くなるでしょう。
Webアプリケーションを構築するにあたって、いきあたりばったりで進めてはいけないポイントの一つが、このデータベースのクエリーの種類による負荷分散の計画です。更新系処理が多くなりがちなアプリケーションでは、あらかじめクラスタリングしやすいようにテーブルを設計しておくなどの注意が必要になります。アプリケーションの特性上、データベースにどのようなクエリーが集中するのかを考慮してデータベース設計を行っておきましょう。
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tmpfsにMySQLのデータを展開してディスクI/O レスデータベース |
マスターとスレーブの2台にデータベースを増やしたおかげでクエリーの振り分けができました。しかし、参照系のクエリーが多いというサービスの特性もあり、このままではまだその参照系クエリーがスレーブサーバーに集中しているため、たいした分散はできていないことになります。
そこで負荷を下げるために更に手を打ちます。スレーブをもっと増やす、という手段ももちろん使いますが、はてなではその前にもう一つ特殊なテクニックを利用しています。
データベースサーバーで処理の大部分を占めるのがディスクへのアクセスです。データはディスクに保存されているため、MySQLはそこからデータを読み出します。ディスクI/Oはメモリへのアクセスなどに比べると遥かに遅いため、ディスクI/Oが頻発するとサーバーのパフォーマンスは劣化します。そこで高速なディスクを用意するのもいいのですが、保持しているデータがそれほど大きくなければ、そのデータをすべてメモリ上に展開してしまうという少々強引なテクニックを使うことができます。
Linuxでは、メモリ上の一定の空間をファイルシステムとして利用することができる、tmpfsというファイルシステムが利用できます。いわゆるRAMディスクのようなものです。
tmpfsで数GBのファイルシステムを作成し、その上にMySQLのデータを移動させます。tmpfsで作られたファイルシステムの実体はメモリですので、こうすることによりデータベースサーバーでのディスクI/Oを完全にカットし高速化できるのです。
しかし、メモリ上にデータを展開するのは高速な反面、リスクも伴います。その主たるものはサーバークラッシュ時のデータ損失です。tmpfsはメモリなので、サーバーの電源が切れたところでそこに保存されたデータはすべて失われてしまいます。データベースに保存されるような貴重なデータが不意のハードの故障や停電などで消失してしまっては困ります。
ただし、レプリケーション環境であれば、たとえスレーブのデータがすべて消失してしまったとしても、同期しているマスターにすべて残っているというところがミソです。マスターのデータは通常どおりディスク上で運用しつつ、スレーブはtmpfsによるメモリファイルシステムで運用するのです。万が一スレーブが故障してデータがなくなっても、マスターからまたスレーブを構築すればOK、というわけです。
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著者プロフィール
株式会社はてな 伊藤 直也
取締役最高技術責任者
ブログサービスやソーシャルブックマークなど、はてなの各種サービスの企画、開発を行う。著書に「BlogHacks」(オライリージャパン刊)。「続・初めてのPerl」(オライリージャパン)、「Perl救命病棟」(翔泳社刊)では監訳を務めた。
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