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どのディストリビューションを選ぶか
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本連載で取り上げたRed Hat Enterprise LinuxやSUSE LINUX、MIRACLE LINUX、そしてTurbolinuxは、長年ライバルとの競争に勝ち抜いてきたディストリビューションであり、いずれも非常に高い品質と優れた性能を備えている。
5年ほど前までは、まだLinux自体が未成熟だったこともあり、ディストリビューションによって得意/不得意がはっきりとわかれていた。しかし現在ではLinuxカーネルはもちろんLinux上で動作するアプリケーションも十分に成熟し、従来の商用UNIXに勝るとも劣らない実力を身につけているといえるだろう。
連載のまとめとして、若干筆者の主観を交えたそれぞれのディストリビューションの全体的な印象を紹介する。
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Red Hat Enterprise Linux
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まずRed Hat Enterprise Linuxについては、若干価格は高めだが、高品質であらゆる用途に適した無難なディストリビューションだといえる。インターネットのサーバやオフィスのファイルサーバ、さらにミッションクリティカルな用途まで幅広く利用することができる。Red Hat Enterprise LinuxをサポートするISVやIHVは多く、利用のための情報も多い。
しかしパッケージの構成は全体的にやや保守的だといえる。目新しい機能や斬新的な機能は少なく、そういった面では面白味のないディストリビューションと感じるユーザもいることだろう。
年間サポート料金という形でコストが発生するが、定額のため企業の経理処理には好都合かもしれない。また、Red Hat Networkによるホストの管理は、多数のホストを持つ企業では便利だろう。
これらを考え合わせると、企業内の様々なシステムのベースとして導入するケースに最も適したディストリビューションだといえるのではないだろうか。
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SUSE LINUX
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SUSE LINUXもディストリビューションの性格としてはRed Hat Enterprise Linuxに近い。ただし新しい技術を積極的に取り込んでいる点や、非オープンソースライセンスのパッケージも別途付属しているのは、SUSE LINUXの特徴といえる。
全体的にデスクトップのデザインが美しく、各種のメニューも使いやすいため、Red Hat Enterprise Linuxよりも洗練された感じを受ける。その意味ではデスクトップとして使いたいディストリビューションといえるだろう。
しかしSUSEの使い勝手のよさは、しっかりとした基本性能に支えられていることを忘れてはならない。また現在SUSE LINUXを所有しているNovellはSUSE LINUX以外にもグループウェアや管理ソフトなど、多くのシステムを販売するネットワークOSの老舗である。
サーバ版は企業内のファイルサーバやネットワークサーバとして、そしてデスクトップ版は企業内の端末に適した、まさにビジネス環境を一手に引き受けるディストリビューションだろう。
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MIRACLE LINUX
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MIRACLE LINUXは、様々な顔を持つディストリビューションだ。最も有名な顔は、OracleのためのOSとしての顔だろう。MIRACLE LINUXをインストールするとOracleのインストーラが付いてくることからも、その面が見え隠れする。MIRACLE LINUX以外でOracleが動作しないわけではないのだが、Oracleをメインに使うのであればまず最初に検討したいディストリビューションである。
もう1つの顔は日中韓をカバーするアジア向けのディストリビューションというものだ。最近はどのディストリビューションも国際化が進んでおり、漢字の使用で不都合が生じることはほとんどない。しかしその中でも「MIRACLE LINUXなら安心だ」というイメージを持たせることに成功している。
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Turbolinux
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Turbolinuxは、まず安価で導入しやすいという点が大きなメリットといえる。もちろん安いだけではなく、使いやすく、基本的な性能もしっかりしている。
さらに今回紹介したパッケージ以外にクラスタ製品も販売され、大規模なシステムの構築にも採用されるディストリビューションとなっている。しかしTurbolinuxの用途に向いているのはエントリークラス、特にWindows端末のための中小規模のファイルサーバ、グループウェア用のサーバではないだろうか。
デスクトップのメニューデザインもWindows風で、さらにWindowsのウィルスをチェックするためのソフトウェア(試用版)も付属する。Windowsのサーバを管理できるユーザを意識した作りで、高価でライセンス管理の面倒なWindowsサーバのリプレースに最適なディストリビューションだろう。
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最後に
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以上、あえてディストリビューションごとのカラーを際立たせるため、筆者の主観を交えてそれぞれの製品のおさらいをした。
読者の皆様のディストリビューション選びの一助になれば幸いである。
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著者プロフィール
株式会社市民電子情報網 安田 幸弘
取締役。主にオープンソースソフトウェアを使用した非営利組織向けのネットワークサービスの提供やサーバの運用/管理を行うとともに、フリーの技術ライターとしてインターネット、サーバ管理などに関して書籍や雑誌記事を執筆している。
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